2010年06月21日

知的生産の技術

本日は梅棹忠夫氏の
知的生産の技術
です。


本書は知的生産術の古典として、興味を持ち購入しました。

私が入手した本は、2010年3月刷りの81刷版です。
初版が1969年ですから、
この本がいかに長く読みつがれてきたかがわかります。

今でも、ビジネス書で情報整理術というと、
人気の高いテーマの一つですが、
この本では、昔の日本人が、このテーマに対して、
どんなアプローチをしていたかを知るということで
非常に参考になります。

もちろんIT全盛の現在では、
この本で紹介されている技法のほとんどは
PCにとって変わられています。

それでも、歴史を知ることは、未来を予測する上でも
大変重要なことだろうと思います。

特に、現在の一般的な通説と異なっている部分は必見です。

一例として、読書の方法として、
現在は興味がある部分のみを飛ばし読み、
必ずしも一冊読み通す必要がない、という意見が一般的ですが、
この本では、著者の主張を理解するためには、
何が何でも一冊読み通すこと、と主張しており
論拠の内容に興味がわきました。


また、昔に本気で、日本語をローマ字表記しようと
考えていた人がいたということが、強く印象に残りました。


ビジネス書で情報整理術やノート術の本に
はまっている人には特におすすめです。
必ず、新たな視点を得られるでしょう。



高等学校の学生のころ、紙の節約をあきらめたとたんに、
わたしのノートはたいへんよくなったようにおもう。


一枚のカードに二つの内容が記入されていると、あつかいにこまる。
フィルムで二重うつしをやったようなものだ。
どちらにも利用できない。


何人もの人が、よむこととたべることのあいだに
共通性をみとめているのである。


読書というものは、本をよむにあたっては、
著者が何をいおうとしているのかを理解するようにつとめなければならない。
つまり著者の身になってよむのである。
その第一歩が「はじめからおわりまでよむ」
というよみかたであると、わたしは考える。


すこしずつ、こつこつよんだのでは、構築された一つの世界が、
鮮明な象をむすばないのである。本は、一気によんだほうがいい。


一般論としては、引用のおおいことのほうが、はずかしいことなのだ。
それだけ他人の言説にたよっているわけで、
自分の創造にかかわる部分がすくないということになるからだ。


これらの新字論者は、その発明品を、
どのようにして一般民衆につかわせるかという方法論の点で、
みんな手抜かりがあったようだ。
(中略)
どんないい発明でも、普及の方法がないのである。
たくさんの情熱的な新字論者たちの、かさなりあったしかばねのなかから、
ようやくえられた、かなしい結論である。


原稿用紙はすこし黄色かタマゴ色くらいのほうが目がつかれないでいい。


全部かながぎ、とまではゆかないまでも、大部分がかなで、
それにいくらか漢字がまじるという程度で日本語がかけるならば、
モノタイプどころか、ライノタイプだってつかえるはずである。


紙きれが部屋いっぱいにちらばったのを、
老女中が気をきかせて、かたづけたのはよかったが、
しろい紙はつかえるから、もったいないとおもってのこし、
字のかいてある紙はすべてすててしまった。






engineer_takafumi at 23:42│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ 書き方・話し方・言語

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1. 知的生産の技術  [ 本の宇宙(そら) [風と雲の郷 貴賓館] ]   2010年10月02日 14:49
 日本の文化人類学の草分けとも言える、京都大学名誉教授の梅棹忠夫氏による「知的生産の技術」(岩波書店)。初版が1969年で、現在73刷までいっているようだ。出版されては、すぐに消えていくような本が多い中で、驚くべき、超ロングセラーであり、この分野において、も....

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