2011年09月20日

数学に感動する頭をつくる

本日は栗田 哲也氏の
数学に感動する頭をつくる
です。


本書はタイトルにピンときて購入しました。

数学の力というと、計算力、発想力などと考えますが、
その本質が何かということまでは、
普通は考えないものです。

しかし、この本では、「数学の力」とは何か、
ということをとことん考察して、
重みのある答えが出されています。

ただ、ここまで深く考察するのであれば、
「数学が何の役に立つのか?」という問題にも、
深く切り込んで欲しかったと思います。

数学に感動する頭を作ることは、
決して趣味のレベルに留まる話では
ないような気がしますから…。


個人的に数学は得意な方なのですが、
図形の問題、幾何は昔から苦手でした。

この本で言う「幾何のできない人」の行動に
自分がピッタリ当てはまって、
なるほど、と思いました。


子供に数学を教えるのが生業の
教師、塾講師などに読んでもらいたい一冊です。

逆に子供の成績を上げたい親というレベルでは、
著者の主張を理解するのは難しいと思います。



数学の面白さをうたった本を見ると、(もちろん本格的な本もあるが)
かなり多くの本が、実は数学の面白さではなくて
パズルっぽい問題を解くことの面白さを伝えようとしているらしい。


こんなさまざまの能力を全部一緒くたにして「数学力」などといわれたところで、
そんな力を身につけさせる方法などあるはずがないし、語れるはずもない。


世の中の人は批判ばかりする。パターン学習だとか、暗記の弊害だとか。
しかし、現実には将来数学が伸びて、
東大や京大に受かっているのはそうした子どもたちだよ。


スパルタ教育のために子どもの感受性や社交性が損なわれるって?
馬鹿なこといっちゃいけない。
できる進学塾の生徒は本当に元気で生き生きしている。
不登校とか、引きこもりだとか、いじめだとかが多いのは、
むしろ中学受験をしない学力中間層以下に多いんじゃないかね?


数学の教師や参考書は、成功するやり方については、
マニュアルを駆使して一生懸命に教えるが、
失敗するやり方は教えてくれないからです。


数学が並外れてできる人たちのかなり多くが小さい頃に公文式で鍛えられた
という現実をこの目で見ると、結論を変えざるを得なくなる。
彼らの多くは公文式に親しみ、小学校一年生で因数分解をやっていたりするのだ。


幾何が苦手な人に少し難しい問題を与えて、
解く様子を観察していると、次のようなことがわかる。
彼はまず、わかっている線分の長さや角度などをごちゃごちゃと図に書き込む。


幾何のできる子どもをよく観察すると、紙にアウトプットしないで、
頭の中で問題を解いてしまう子どもが多い。
幾何のできない子どもはこの能力を持っていない子どもばかりだ。


発想力のある生徒は実は発想力というよりも連想力がすぐれていて、
ある問題を解くときに、それと構造のよく似た問題を
記憶の中からすぐに呼び覚ますことができるらしいということである。


もう一つの数感。つまり、自分の世界を作り、
その中に新しく習ったことを位置づけていく能力は、身につけるのに時間がかかる。


私の考えでは数学はコツコツ型の教科ではない。
それなのに、熱中する時期も持たないで、
学校でコツコツ習うだけで数学ができるようになるなんて
夢見る方が不思議である。


面積図の描き方ばかり習っていると、
いつのまにか量の変化という抽象的なものや問題の構造をイメージするという
本来開発すべき能力は身につかずに、
一定のマニュアルにそって図を操作すると問題が解ける、
という数学観が身についてしまう。






engineer_takafumi at 02:39│Comments(0) ★理系本の書評 |  ⇒ 数学

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