2012年06月28日

利己的遺伝子から見た人間

本日は小林朋道氏の
利己的遺伝子から見た人間
です。
利己的遺伝子から見た人間 (PHPサイエンス・ワールド新書)

当面PHPサイエンス・ワールドは全てチェックしようと思い、
本書を購入しました。

本書は遺伝子という観点から、
生物の行動や習性を説明しようという本です。

類似の本で、今となっては古典的な名著となる
リチャード・ドーキンスの利己的な遺伝子がありますが、
本書はその後にわかったことという視点で書かれています。

前半は遺伝子の構造などの基礎的な知識、
後半はその遺伝子により生物がどのようにふるまうか
という例が示されています。

また、その例は人間の行動にもおよび
つわり、浮気、子どもの野菜嫌いなど、
人間の行動を遺伝子レベルで解析した章は
面白く読むことができました。


ただ、利己的な遺伝子の後にわかったことといっても
細かい遺伝子レベルの研究は進んだのかもしれませんが、
個体でなく遺伝子を中心として考える理論という観点では、
なにも変わっていません。

今から30年以上前に、これだけ完成した理論を考案した
リチャード・ドーキンスには感服させられます。


文庫で日本人の著者なので、
利己的な遺伝子の訳本よりは読みやすいです。

ですから、利己的な遺伝子を読んでみたけど挫折した人、
読もうと思いながら機会がなかった人には
ぜひお勧めしたい一冊です。




個体は、遺伝子が一時的につくって利用する乗り物にすぎず、
遺伝子は、他の乗り物の遺伝子とも協力しながら、
やがて死ぬ乗り物(個体)を乗り継ぎながら存続し続ける


生物個体の中にある遺伝子は、自分のコピーがその後の世代で
伝えやすいような形態、生理特性、行動様式、心理特性を備えた
生物個体をつくり上げる(設計する)


もし、○×△という性質をもった遺伝子が、コピーミスなどの結果、
いったんできてしまったら、その遺伝子は地球上で増えてしまうだろうか?
それともやがて複製が続かず、地球上からなくなってしまうだろうか


つまり、生物現象の理解には、「増えやすい性質の個体が増える」
という原理よりも、「増えやすい性質の遺伝子が増える」という原理の方が
より根本的だということになるのである。


人間は、遺伝子の性質を理解し、われわれ自身が
「遺伝子の増殖のための乗り物」であることに気づいた、
地球上で唯一の生物である(おそらく)。


カゴの中の回し車の中を、
ぼろぼろになるまで走り続ける個体を生み出してしまう。
個体の幸せ感ではなく、遺伝子の増幅のために。






engineer_takafumi at 01:01│Comments(0)TrackBack(1) ★理系本の書評 | ⇒ 生物・化学

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1. 利己的遺伝子説の入門から活用まで:利己的遺伝子から見た人間  [ 本読みの記録 ]   2013年04月29日 19:35
利己的遺伝子から見た人間 (PHPサイエンス・ワールド新書)作者: 小林 朋道出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2012/03/17メディア: 新書 ドーキンスの「利己的な遺伝子」とそれに続く研究を、日本語で日本人にわかりやすく解説した一冊。 入門書としての新書にふさわしい

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