2012年08月21日

ウナギ大回遊の謎

本日は塚本勝巳氏の
ウナギ大回遊の謎
です。
ウナギ 大回遊の謎 (PHPサイエンス・ワールド新書)

当面PHPサイエンス・ワールドは全てチェックしようと思い、
本書を購入しました。


ウナギというと、身近な魚と思えるのですが、
実はその生態は意外なほどに知られていません。

特に謎だったのは産卵場所についてで、
なんとウナギの卵の採取に成功したのは
21世紀に入ってからなのです。

本書は著者がそのウナギの卵を手に入れるために
悪戦苦闘した様子が描かれています。

最先端の設備はもちろん、
潜水艦まで繰り出しての大捜索です。

そこまでしてやっと、
ウナギの産卵現場をおさえることができたのです。


また、ご存知かもしれませんが、
ウナギは近年急速に数を減らしています。

現在の数は最盛期の10%程度とも言われており、
ウナギを保護が急務になっています。

その保護を進めるためにも、
著者のような研究者がウナギの生態を
より詳しく解明して欲しいと思います。


ウナギの生態は驚きの連続で
生物には疎い私でも興味を持って読めました。

ウナギに限らず、魚に興味がある人には
必読の一冊と思います。





ウナギは淡水魚でも海水魚でもない。
一生のうちに海を川を行き来する「通し回遊魚」と呼ばれるグループの魚だ。


ウナギの生態は謎に包まれている。
なかでも、とびきりの謎が産卵場の問題だ。


ウナギは海で生まれる。
「卵」から孵化した前期仔魚は「プレレプトセファルス」と呼ばれる。
外界の餌と食べ始めると後期仔魚期に入り、「レプトセファルス」になる。


変態後の稚魚は透明な「シラスウナギ」だ。
シラスウナギは河口域にやってきて着底する。


着底後、摂餌を再開したウナギは、急速に色素が発現し、
シラスウナギから「クロコウナギ」となる。


クロコウナギは川を遡上し、やがて定着生活を始める。
この時期のウナギは「黄ウナギ」と呼ばれ、背はオリーブグリーン、
腹は黄味がかかった白色だ。


雄が数年、雌が10年前後、淡水域で成長した後、
秋口から銀化と呼ばれる変態が始まる。
体は全体に黒ずみ、皮膚にグアニンが沈着して、金属光沢を放つ。
この段階は「銀ウナギ」と呼ばれる。


わずかに成熟が始まった銀ウナギは、
秋から初冬に河川の増水とともに川を下り、海へ出る。
外洋の産卵場に帰りついた銀ウナギは、産卵して一生を終える。


海と連絡のない山上の池が干上がったとき、
自然に湧いてきたとした思えないくらい大量のウナギが出てくることがある。


ウナギが空中でも長時間生きていられるのは、
皮膚呼吸が発達しているためである。


アフリカ大陸東部にできた高地にある滝をよじ登って、
海岸から2000キロメートルも奥地に棲み着いたウナギも知られている。


シラスウナギを養殖すると、ほとんどが雄になる。
したがってわれわれが蒲焼で食べるウナギはほとんどが雄といってよい。


一般的に性は、遺伝的には性染色体の組み合わせによって決まるものが多いが、
環境要因によって性が決まる生物も知られている。


雄はライフサイクルを早く回転させ、雌はじっくりと回している。
同一種でありながら雌雄別々のサイクルでいきているのだ。


銀ウナギを泳がし、酸素消費量から回遊に必要なエネルギーを算出した結果、
驚くべき低コスト(0.5kJ/km・kg)でウナギは回遊していることがわかった。


ニホンウナギの資源は1970年前後の最盛期に比べると
約10%にまで減ってしまった。世界的に見ると、
大西洋のアメリカウナギとヨーロッパウナギの激減ぶりはさらにひどく、
盛時のわずか1%にまで減っている。


人工種苗生産の技術がまだ実用化されておらず、
今後もしばらくは、養鰻業の種苗を天然のシラスウナギに
100%依存しなくてはならない現状を踏まえると、
今の時点でシラス漁業は続けざるを得ない。


養殖ものの品質は高レベルで安定している。
ウナギにおいて、天然信仰はおそらく迷信であろう。


天然ウナギは食べると危険な場合もある。特に下りウナギの場合、
長い年月、河川生態系のトップに君臨して成長した個体なので、
水域に流れ込んだPCBやDDTなど様々な有害汚染物質を
多量に蓄積している場合がある。







engineer_takafumi at 23:01│Comments(0)TrackBack(0)★理系本の書評 | ⇒ 生物・化学

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