2013年05月20日

死の淵を見た男

本日は門田 隆将氏の
死の淵を見た男
です。
死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日

本書は原発事故で被害の拡大を食い止めた
東電の社員や自衛隊などの「現場」の働きを知りたくて購入しました。


福島の原発事故は大変な被害をもたらしました。

ですが、あの事故では、最悪のケースで日本の人口の
半分近くが避難しなくてはならないような
ケースさえ想定されていました。

それを食い止めたのが、東電の社員や自衛隊などの
「現場」の力だったのです。

本書では、当時福島第一原発の所長であった
吉田氏を中心とした現場の動きが詳細に書かれています。

初期段階での適切な処置、命さえ投げ出すほどの責任感、
事故収束に向けた彼らの努力には本当に頭が下がります。

日本の社会を指して、マネジメントは無能だが
現場は極めて優秀などと言われます。

今回の事故もその典型例と言えるかもしれません。

政治家や東電上層部の失態の裏で
英雄とも言えるような現場の努力があったのです。


できれば全ての日本人に読んで欲しい一冊です。
郷土や国を守るため、懸命に尽くした人達の記録は
日本人に勇気と誇りを与えてくれると思います。




ぎりぎりの場面では、人間とは、もともと持ったその人の
"素の姿"が剥き出しになるものである。


生と死をかけたこの闘いに身を投じたのは、
多くが地元・福島に生まれ育った人たちだった


明日の見えない太平洋戦争末期、飛行技術の習得や特攻訓練の
厳しい現場となった跡地に立つ原子力発電所で起こった悲劇


東京電力で誘致に特に熱心だったのが、
福島県伊達郡の梁川町出身の木川田一隆社長(当時)である。
なんとしても出身地・福島県に原発を誘致したかった木川田の思いは、
冬場は出稼ぎに頼らざるを得ない福島県の浜通りの貧困さと
無縁ではなかっただろう。


吉田の頭の中は、この時点ですでに「チェルノブイリ事故」の事態に
発展する可能性まで突き抜けていた。


多くの専門家が驚くのは、この早い段階で吉田が、
消防車の手配までおこなわせたことである。


まだ原子炉建屋に入ることのできる時間帯に、
すでに「水」を入れるラインを確保し、その準備を全て終えていたのである。


それは、極めて技術的で専門的なやりとりだった。
水素が出てきたら爆発するじゃないかというのは、
素人からすぐに出てくる質問ではない。
菅は、そのあたりの知識をもともと持っていたのである。


現場で作業を終えてきて帰ってきて(検査を受けるべく)
待っている作業員の前で、"なんで俺がここに来たと思っているんだ!"
って怒鳴ったんです。
一国の総理が、作業をやっている人たちにねぎらいの言葉ではなく、
そういう言葉を発したわけでね。これは、まずい、と思いました。


やっぱり吉田さんという人は、堂々としていたね。
臆することなく、総理にものを言ったから、
総理も彼の言うことを聞いたんだろうね。
その彼が"決死隊"という言葉まで使ったんで、総理は気押されして、
少し落ち着いたんだと思うんだね


突入する「自分」という人間は同じなのに、
身につける「装備」がまったく異なってきているのだ。


可能性がゼロではないというのと、危険性があると指摘するのでは、
全く違います。


人を大勢死なせちゃったかもしれない、それは私の責任だな、と。
生きて出ることはできない、ここで死のうと思いました。


ここまできたら、水を入れ続けるしかねぇんだから。
最後はもう、(生きることを)諦めてもらうしかねぇのかなと、
そんなことをずっと頭の中で考えていました。


二百五十キロですよ。これは、青森を除いて、
東北と関東全部と新潟の一部まで入っています。そうなったら、どうなるのか。
二百五十キロというのは、人口五千万人ですからね。


ベントが成功しなかった二号機はこの時、なんらかの損傷により、
全号機の中で最も多くの放射性物質を"放出"したのである。


出ていくのは、若い人間だけではなかった。
当然残るだろうと思っていたベテランの中にも
荷物を持って出ていく者もいた。


私は、振り返りませんでした。神聖な雰囲気ですから、
その円卓に座っている五十人ほどは、
もう死に装束で腹を切ろうとしている人たちですから、
振り返るなんて、そんな失礼なことはできませんでした。


およそ六百人が退避して、免震重要棟に残ったのは「六十九人」だった。


福島第一が制御できなくなれば、福島第二だけでなく、
茨城の東海第二発電所もアウトになっていたでしょう。
そうなれば、日本は"三分割"されていたかもしれません。






engineer_takafumi at 00:30│Comments(0)TrackBack(0)★理系本の書評 | ⇒ 理系の人・理系社会

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