2015年07月15日

基準値のからくり

本日は村上道夫氏、永井孝志氏、小野恭子氏、岸本充生氏の
基準値のからくり
です。
基準値のからくり (ブルーバックス)

本書は常々疑問を持っていた「基準値」についての本
ということで興味を持って購入しました。


薄々、感ずいてはいましたが、化学物質などの
「基準値」は人に与える影響だけに着目して
設定されたものではありません。

例えば、原発事故の時に、基準値が急に上がり
「我々の身体が急に放射線に強くなったのか?」
という人がいましたが、それは
「元々の基準値がとても低いものであった」
ということだったのです。


実際のところ、単に科学的なリスクだけで
基準値を決めてしまうと、日常生活で大きな支障が
でることも多いです。

例えば、おコメが食べられなくなったり、
消費期限が短くなって、大きな経済的な損失が出たりします。

また、厳しすぎる基準になっているものについても、
「通常であれば」そのレベルには落ち着くように設定されるので、
それが上昇すると言うことは、身体への影響有無に関わらず
アラームを上げるべきことでもあるのです。

この本を読んで、少なくとも「基準値」は盲目的に信じるには
値しないものということが良くわかりました。


個人的には、窒息事故がおきると
こんにゃくゼリーを規制するのであれば、
まず、モチを規制しなくてはならない、
という話が印象に残りました。


食品添加物など、化学物質に敏感な人にお勧めの一冊です。
まず、「基準値」というものの曖昧さを知ることにより、
効果的に心身を守ることができるようになるでしょう。




基準値はいったん定められると、
あたかもある種の「権威」のようになり、
その根拠を深く考えることなく使ってしまいがちである。


安全係数が「科学」とはまったく縁遠いところで
決まることになってしまったのは、
食品製造業者にとって賞味期限の長短が
まだ食べられる食品の廃棄や回収、値引きなどの必要性を左右し、
営業利益に直結するからである。


こんにゃくゼリーによる窒息が受け入れられないりすくである
と考えるならば、これが規制されるように線引きしなければいけない。
ところが、そうすると真っ先に規制されるべきは餅であり、飴である。
さらにはパンまでが規制されるかもしれない。


「10万人に1人」というリスクレベルの基準値を早急に適用してしまうと、
われわれ日本人は主食であるコメまでも食べられなくなってしまうのだ。


一酸化二水素(Dihydrogen Monoxide:DHMO)という物質には
温室効果があり、酸性雨の主成分である。
地形の侵食を引き起こし、多くの材料の腐食を進行させて
電気事故の原因となり、自動車ブレーキの効果を低下させる。
また、重篤なやけどの原因となりうるだけでなく、
末期がん患者の悪性腫瘍からも検出される。
さらに、大量に吸引すると死亡することもある。
このような危険があるにもかかわらず、この物質は、
工業用の溶媒、冷却材、原子力発電、発泡スチロールの製造など、
多様な用途で用いられている。
さまざまな動物実験にも使われるし、
各種のジャンクフードなど多くの食品に添加され、
水道水中にも大量に含まれている。
はたして、このDHMOの使用を規制するべきだろうか?


基準値を守るには、技術やコストが必要である。
ヒ素を飲料水から除去するのはきわめて難しく、
守ることができない基準値を設けても意味がないのである。


東京都の水道水中のヨウ素131濃度は、
半減期8日というその放射性崩壊よりも速く現象した。
あとで聞いたところでは、この時点で、保健医療科学院の
浅見真理氏や小坂浩司氏らが、浄水場に適度な塩素を注入してから
活性炭を入れることで、ヨウ素131を除去する方法を確立していて、
実際に浄水場に適用していたという。
(中略)
水道水の回復には、こうした専門家たちの努力も
貢献していたのである。


基準値はもはや「健康へのリスクを回避するための目標」ではなく
「風評被害などの経済的リスクを回避するための目標」
となってしまっている。


インターネットでのある調査によれば
「優先席付近では電源を切っている」と答えた人の割合は
2割以下にすぎなかった。
ほとんどの人に無視されているのでは、何のための指針かわからない。








engineer_takafumi at 00:16│Comments(0)TrackBack(0)★理系本の書評 | ⇒ 一般・その他の科学

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