2016年02月15日

二十歳の原点

本日は高野 悦子氏の
二十歳の原点
です。
二十歳の原点 (新潮文庫)

本書はちきりんさんのブログで紹介されていて、
興味を持って購入しました。


著者の高野悦子さんは、戦後の1949年(昭和24年)に生まれ、
立命館大学の文学部史学科に入学、
学生紛争の真っ只中で、自己を確立しようと格闘するも、
1969年(昭和44年)に鉄道で自殺します。

本書はその著者が書き溜めていた日記を、
本人の死後に父親が出版したものになります。


読むとすぐに感じることができますが、
著者はどこまでも純粋で、
でも現実は純粋であることを許してくれず、
その格闘に苦しむことになります。

読み手としては、文章や思想の美しさに心を打たれつつも、
現実の人間が書いた文章としてはあまりに脆いもので、
最後の悲劇的な結末が自然に連想されます。

脆さと美しさは表裏一体ということなのでしょう。


「独りであること」、「未熟であること」、
これが私の二十歳の原点である。


タイトルにもなった、有名な一文です。
やはりこれが著者の原点なのです。



人生に悩む大学生に読んでもらいたい一冊です。
同年代でこんな思考をしていた人がいるということが、
強烈な刺激になってくれることでしょう。
(ただし、命は大切に)




「独りであること」、「未熟であること」、
これが私の二十歳の減点である。


孤独にはなれている。
内職する母に放ったらかしにされた幼時から、いつも自分で考え、
自分で規制し、目標に向かってペースを狂わさずに歩いてきた。


私は「主体性」という言葉をあまり好まない。
主体性などと馬鹿の一つおぼえみたいに叫んでいるのをあざ笑う。
空虚さがプンプンしている。
それと同じように「人民」人民としゃべりまくるのも嫌いだ。


私が眼鏡をかけた姿は滑稽である。私は眼鏡をかけたときは、
自分の存在の滑稽さを認識させようとしている。
滑稽さはあるときは救いであり、またあるときは嫌悪である。
だが、それを演じているのだという意識、
本当の自分はもっと別のところにあるのだ
という意識は私の心を救う。


父と母の面前で煙草を吸って、両親と対決することができるだろうか。
かみそりで指先を切るよりも、自分のほおを思い切り
叩くことよりも、それは幾十倍の勇気がいることだろう。


私の顔は、目はパッチリと口もと愛らしく鼻すじの通った、
いわゆる整った部類に属するが、
その整った顔だちというやつが私には荷が重い。
大体人は整った顔だちに対し、まるで勝手なイメージと敵意を持つ。
眼鏡をかけると私の顔はこっけいでマンガである。
眼鏡によって私は人のおもわくから脱れることができた。
また私は眼鏡によって演技をしているのだという安心感がある。


注意しなくてはならなことは、吐き出しぶっつけるのは
常に己自身に対して行うものであるということである。
他の人間に対してはいくばくかの演技を伴った方が安全である。


知ろうとするものは存在し、知ろうとしないものは存在しない。
おまえはおまえ自身を知らない。


叱られるより叱る方がむつかしい。
ウェイター、ヘッドウェイター、主任となるにつれ叱る人がいなくなる。
自分で叱り叱られねばならぬ。
自分で自分を叱ることは難かしく必ずそこには甘さがつきまとう。


甘えてはいけない。他者を通してのみ自己を知ることができるが、
自己の存在は自分で負わなくてはならない。
生きていくのは自己である。他社の実存を実存として認めよ。


生きることは苦しい。ほんの一瞬でも立ちどまり、
自らの思考を怠惰の中へおしやれば、
たちまちあらゆる混沌がどっと押しよせてくる。
思考を停止させぬこと。
つねに自己の矛盾を論理化しながら進まねばならない。
私のあらゆる感覚、感性、情念が一瞬の停止休憩をのぞめば、
それは退歩になる。


親は子を理解しようとするが、
彼らの立場に立った理解しかできずにいる。
それは親自身が自己変革を行わないかぎり当然のことだ。


現在を生きているものにとって、
過去は現在に関わっているという点で、はじめて意味をもつものである。
燃やしたところで私が無くなるのではない。
記述という過去がなくなるだけだ。
燃やしてしまってなくなるような言葉は
あったも何の意味もなさない。


闘争のない生活は、空気の入っていない風船、
タマの入っていない銃、豆腐の上にのせたコンニャク、
からっぽの膣、空中に向かって出された陰茎…
ではないでしょうか。
「闘争か、血みどろの闘争か、それとも死か」
という言葉があります。






engineer_takafumi at 18:32│Comments(0)TrackBack(0)★一般書の書評 | ⇒ その他の本

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