2015年05月24日

パナソニック人事抗争史

本日は岩瀬 達哉 氏の
パナソニック人事抗争史
です。


本書はタイトルに興味を持って購入しました。

パナソニックは日本を代表する電気メーカではありますが、
往年の輝きと比べて、最近の業績は好調とはいえません。

著者はその松下の業績悪化の歴史を、
創業家と後の社長の人事抗争という観点から
明確にしようとした本です。

本書では、創業家の正治氏と3,4代目社長の抗争の末に
誕生した五代目社長の森下の就任が致命的であった
という書き方がされています。

話は非常に生々しく、強い信憑性を感じる一冊です。
上の人事はこのようにして、決まっているのですね。


書かれてあることが真実であるならば、
松下幸之助は偉大な経営者ではあるのですが、
同時に大変な火種を会社に残したことになります。

どれだけ偉大でも、家族のことになると、
自分の思うままにはできない、ということなのでしょう。


また、この本はパナソニックの歴史を描いていますが、
その人事力学は決して松下特有のものではなく、
世の(特に日本の)会社にとって、
普遍性があるように思えます。

会社が大きくなって、人事制度が確立してくると、
どうしても実力より、上司の好き嫌いの方が重要になり、
このような結末になることは避けられないような気がします。

会社が大きくなって、就職ランキングに載るようになると
終わりだ、というような通説もありますが、
全ては人事の誤りから生じることなのでしょうか。


出世したいサラリーマンにはお勧めの一冊です。
良くも悪くも、会社の謎である人事を一面を
垣間見ることができるでしょう。



相談役の幸之助が、彼ら3副社長に直接指示を出し、
社長である正治に、決して重要事項を判断させなかった。
そうまでしながら、正治を社長から外すことはできなかったのである。


映画は、政府のプロパガンダと直結しているので、
外国企業が買収するにあたってはホワイトハウスの許可がいる。


今日のパナソニック(旧松下電器産業)の衰退は、
この"温情人事"に起因しているといっても過言ではない


ワッサーマンと森下との違いは、浮き沈みの激しいハリウッドで、
生き馬の目を抜くような仕事をこなしてきた海千山千の経営者と、
ドメスティックな世界で営業畑しか歩いてこなかった
サラリーマン社長との、主体性と自信とチャレンジ精神の
違いによるものだった。


森下は、MCAというコンテンツの宝庫を失ったことを悔やむこともできず、
大人然として、こう言い放つのがせいぜいであった。


これからは液晶の時代や、プラズマの時代や言うてた時に、
森下君は、何を血迷ったか、ブラウン管の時代と言い出した。
あれは、ひどかったでえ。
まったく、技術というものがわかってなかったんでしょうな。


森下の経営の軌跡からは、
厳しい競争の時代をどう生き残っていくかよりも、
会長の正治にどう仕えるかを優先した姿勢しか見えてこない


森下君は、営業畑しか歩んだことがなく、
財務はわからんし、技術もわからん。
事業部をあずかった経験もない。
社長としての訓練を受けていないんですから、そら、当然、
経営はおかしくなりますわ


森下君は、わけのわからんところで、上げたり下げたりしてたから、
あの時期、松下は人心の面で淀んだ


取締役会での議論らしい議論といえば、
毎回、ひとり1万円と言われていた豪華弁当が振る舞われるんですが、
そのデザートのメロンについて、今日のは小ぶりだとか、甘いとか
論じ合うくらいでした。


V字で男をあげて以降の中村というのは、人が変わってしまったわね。
異常なほど部下を選り好みして、自分の好きなタイプしか選ばない
というところへいっちゃった。
しかも嫌いとなると、人格を全否定する。


社長時代の中村は「破壊と創造」を経営スローガンに掲げ、
(中略)
ただし、ここでは言っていないが、自身を社長にしてくれた
森下が作った仕組みだけは例外としたのである。






engineer_takafumi at 23:26│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ ビジネスその他

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