2016年04月29日

世界を変えた17の方程式

本日はイアン・スチュアート氏の
世界を変えた17の方程式
です。


本書は「世界を変えた方程式」というタイトルが
気になって購入しました。

著者はポピュラーサイエンスの著者として
世界的に有名なイアン・スチュアートです。


本書はピタゴラスの定理に始まり、波動方程式、
シュレディンガー方程式など、数学や物理の方程式に
ついてのトピックスを集めたものです。

単に数式の話だけでなく、
その方程式が現れた歴史的、学問的な背景を
十分に述べてくれており、
より理解を深められるようにできています。

ただ、訳書であり読みにくいことと、
ボリュームの大きさ、内容のレベルなど
簡単な本ではありません。
通読するにはかなりの前提知識と努力が必要です。


個人的には、
シュレディンガーの猫のパラドックスを
解決してくれていたことが印象的でした。

他の本はパラドックスを紹介するだけで、
解決はしてくれないものがほとんどです。


数学や物理を教えている人にお勧めの一冊です。
トピックスがつまっているので、
学生の関心をひける話題を見つけられるでしょう。



フランス人数学者で天文学者のピエール・シモン・ド・ラプラスは、
対数の発明によって「何ヶ月もかかる作業が数日まで短縮され、
天文学者の寿命が2倍に伸び、間違いや厭わしさがなくなった」
と言っている。


聴覚に障害を与えうる音のレベルは、およそ120デシベルだ。


ニュートンは初の現代的な科学者ではなく、
神秘主義的な面も持っており、
錬金術や宗教的な思索に何年も費やした。


ニュートンとライプニッツは、微積分の基本的考え方を
互いに独立に―少なくとも共通の数学および科学の文化で
認められる程度には自由に―発見したようだ。


計算はとても簡単だが、大多数の学生にとって、
虚数を学ぶ価値があることを理解するには、
あまりにも大きく精神を飛躍させなければならない。


難解なトポロジーの応用法が、
基礎物理学の最前線で生まれている。
ここでトポロジーをおもに使っているのは、
場の量子論の研究者である。


統計的手法を使う人は、その裏にある
前提条件とその意味合いを知っておかなければならない。
コンピュータにやみくもに数を入力し、
そこに使われている手法の限界を理解せずに、
出てきた結果を神の言葉のように受け取れば、
災難を招いてしまう。


頭の中で一連の変数のうち一部だけを変化させ、
残りを固定することから、
これらの変化率は「偏導関数」と呼ばれる。


「線形」とは、u(x,t)とv(x,t)が解であれば、
aとbを定数としてこれらの任意の線形結合
au(x,t)+bv(x,t)も解であるという意味だ。


近年この分野全体で最も重要な発見となったものの1つが、
基本波形を限られた空間領域に限定させた
新たな座標系である。
それらの基本波形はウェーブレットと呼ばれ、
それ自体がパルスであるため、
パルスを極めて効率的に表現できる。


ウェーブレットはパルス状であるため、
画像の圧縮にとくに都合が良い。
それがはじめて大規模に実用的に使われたのは、
指紋の保存のためであり、顧客はFBIだった。


マックスウェルが方程式を導く以前、光と電気のあいだに
このような基本的な関係性があるなどと考える理由は、
何一つなかった。


それまで誰も予想していなかったが、
理論からそうなるはずだと分かるやいなや、
実験家はそれを探しはじめた。


ヘルツは、自分の研究が物理学として重要であることを自覚し、
著書『電磁波―空間内を有限の速度で伝播する電気作用に関する研究』
のなかで発表した。
しかし、それが実用になるなどとはけっして思っていなかった。
それに関して尋ねられると、次のように答えた。
「まったく使い道はなく…巨匠マックスウェルが正しかったことを
証明する実験でしかない。肉眼では見ることのできない
謎めいた電磁波を発見させたにすぎない。
しかしそれは確かに存在する」。
それが将来どんなものを生み出すと考えているかと
問い詰められると、「何もないと思う」と答えた。


1900年頃になっても大部分の物理学者は、
物質が原子でできているとは考えていなかった。
彼らは分子の存在も信じず、
分子に基づく気体の理論は明らかに無意味だった。


反対していた人の大部分を最終的に納得させた成果の1つが、
気体分子運動論を使ってブラウン運動を予測できたことだった。


世界に対するわたしたちの知覚は、今何を観察しているかと、
脳がいまどんな記憶をもっているかによって決まる。
時間が逆転した宇宙では、つまるところ
過去ではなく未来を記憶するというわけだ。
時間の可逆性とエントロピーとのパラドックスは、
現実世界に関する問題ではない。
現実世界をモデル化しようとするときに置く
仮定に関する問題なのだ。


ダークマターは第2の海王星ではなく、
第2のヴァルカンかもしれない。


十分に練られている最も重要な理論が、
1983年にイスラエルの物理学者モルデハイ・ミルグロムが
提唱したMOND(修正ニュートン力学)である。
この理論は実際には、重力の法則でなく
ニュートンの運動の第2法則を修正したもので、
加速度がきわめて小さい場合には、
加速度は力に比例しないと仮定している。
宇宙論学者のあいだでは、
成功しそうな代替理論はダークマターとMONDしかなく、
MONDが観測結果と矛盾すれば
ダークマター理論しか残らないと考えられている。


量子波動関数は特別な種類の「位相」を
持っていると考えることができる。
その位相の物理的解釈は、古典的な波動方程式における
位相の役割とは似て非なるものだ。


猫をスピン測定装置に置き換えれば、
その装置も重ね合わせ状態で存在しているはずだ。
この装置は、量子系として見ればとてつもなく複雑である。
(中略)
そのような装置がどのように動作するかを、
正真正銘の量子系として詳細までモデル化できる可能性は、
現実問題としてゼロだ。


量子波が十分な位相関係を持たなくなると、
デコヒーレンスを起こし、
より古典物理のように振る舞いはじめて、
重ね合わせ状態は意味を持たなくなる。
それを引き起こすのは、周囲の粒子との相互作用である。


IBMの創設者トーマス・J・ワトソンはかつて、
コンピュータ市場は世界中で5台くらいだろうと言った。


「決定論的」と「予測可能」は同じものであるという、
長く信じられてきた前提は、間違っている。


デリバティブは、担保資産が少なくとも現物である
先物とは違い、その担保資産そのものが
デリバティブという場合もある。
もはや銀行は、米のような商品の将来の価格に対する
賭けはしなくなり、賭けの将来の価格に対する
賭けを売買するようになった。


満期前のどんなときでもオプションの価格を
つけることができる、
取り決められた方法がなければならない。
ブラック=ショールズ方程式がまさにそれである。


ブラック=ショールズ方程式は、通常の状況下で
合理的な価格を教えてくれるだけでなく、
取引で大損しても非難から身を守る盾になってくれる。
「ボス、責めないで下さい。業界標準の数式を使ったんですから」。


プーヴィーや似た考えを持つ人たちが繰り返し警告
していたとおり、金融商品の価格を決定して
そのリスクを評価するために使われているモデルには、
単純化のために、実際の市場やそれに内在する
危険性を正確に反映していない仮定が採り入れられていた。


投資家は再び、ますます複雑でリスクの高い行動を
取るようけしかけられ、実際には持っていない金を使って、
欲しくもないし使いもできない商品に賭ける。


破綻しないほど大きいのであれば、その銀行は大きすぎる







engineer_takafumi at 23:35│Comments(0) ★理系本の書評 |  ⇒ 数学

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