2015年12月20日

山口組分裂抗争の全内幕

本日は盛力健児氏、西岡研介氏、鈴木智彦氏、伊藤博敏氏、夏原武氏の
山口組分裂抗争の全内幕
です。
山口組 分裂抗争の全内幕

山口組分裂のニュースを聞き、暴力団の背景や歴史について
知識を得ようと思い、本書を購入しました。


週刊誌やニュースでは、今回の分裂を興味本位で扱いますが、
実際背景は単純ではなく、色々な思惑があるようです。

本書では関係者の証言はもちろん、
歴史や背景を含めた、今回の分裂の全体像を追います。

ヤクザはメンツを何より大事にするので、
独特の考え方や文化があるようです。

また、隠語などには、適切な説明が付けられており、
全くその筋の知識がない私でも理解できました。

そのあたりが書籍というメディアの長所ですね。



この本を読んでわかったことは、次の2点でした。

暴力団はマスコミを使った情報操作にも長けていて
一般に出て来る情報は(警察からのものを含めて)
ほとんど信用できないと考えたほうが良いこと

対暴力団の法律や条令が非常に厳しく、
また世論の後押しもあって運用もきちんと行われており、
暴力団はあらゆる面で非常に厳しい状況に置かれていること



暴力団にとっては、今回の分裂は勢力を弱めるものに
他ならないようです。
今回の分裂は「暴力団の終わりの始まり」に
結びついているのでしょう。


暴力団は反社会勢力ですが、現に存在するものであり、
関わりを持たないためにも、一定の知識は必要です。
そんな意味で、ヤクザの知識を得る一冊としてお勧めです。



ヤクザ社会の原理原則「盃」をめぐる大義の応酬…
加えて水面下では傘下組織に対する切り崩し、
さらには殺人等の未解決事件の情報を警察にリークし、
トップの使用者責任につなげようという動きまで起こっている。


組織を割って出られた山口組は、なんらかのかたちで
"返し"(報復)をしない限り、メンツを失ったままとなり、
ヤクザ社会の食物連鎖の頂点に君臨し続けてきたその地位を、
失いかねないというシビアな現実


ヤクザの争いは、たとえ抗争になっても矢が尽きるまで、
最後の一兵卒までとはならない。そこまでの徹底抗戦は行われない。
組員の9割は強い側に流れる。
心理戦では空気を作るのが肝要で、暴力事件もまた、
優勢のムード作りのために実行される。


暴排条例(暴力団排除条例)の適応は非常に厳しく、
家族が不動産売買をしても、身内に暴力団がいると
分かった時点で、無条件解約が認められるほどだ。


神戸の山口組本部は長い時間をかけて地元に馴染んできた。
歓迎されない隣人だとしても、神戸の大震災をはじめ、
苦難を地域と共有している。
震災後、本部の近所に設置されていた
「暴力団追放」の立て看板は、その多くが撤去された。
聖地云々という概念はともかく、いまさらこの規模の本部を
他の場所に移転し、同様の環境を手に入れるのは不可能で、
デメリットばかりだ。
移転話は神戸側の情報戦略と考えるのが妥当に思える。


組織の分裂は暴力団最大のタブーであり、
袂を分かつ行動それ自体が、組織と親分に対するダメ出しなのだ。
失敗の物証…六代目山口組が100周年のメモリアル・イヤーに
分裂したという事実は、未来永劫消えない。
メンツを重要視する暴力団にとっては、
トップの顔面をナイフで切り裂かれたに等しい。


暴力の発動を躊躇し、抗争を回避すれば、次第にカタギもなめてくる。
事件を起こせば親分まで逮捕されるとか、検挙を待ち構えている
警察の思う壷だとか、もっともな理由をぶって身を躱した時点で、
暴力団は出口のない迷路にはまっている。


対応に失敗すれば、他団体との友好関係を基軸に作り上げた
山口組帝国も砂の城となりかねない。
反面、弘道会主導で騒動を終息させれば、
次の七代目、八代目の座は揺るぎない。
山口組は長期刑の元服役者を優先して登用する。
神戸側の重要な幹部を殺害した人間は、
確実に次世代の重要ポストに就くはずだ。


建て前に過ぎない親分・子分の関係でも、
暴力団にとっては重く、特別な意味がある。
そのため組織の分裂は、当代組長が死亡・引退し、
盃が空白となった真空の時間を狙って挙行されるのがセオリーだ。


暴力団の存在意義を極限まで突き詰めれば、
意に沿わない人間は殺すという一点だ。
ヤクザがアウトロー社会の頂点に君臨していられるのは、
彼らが法の縛りを無視するからではなく、
ためらいなく人を殺すからである。


離脱組が新団体を設立するなら、
山口組はメンツにかけて制裁し、殺戮し、潰さねばならない。
たった数名であっても存在させておくわけにはいかない。


相手の立場に理解を示し、暴力を自制するように訴えた内容は、
裁判での証拠にもなる。
抗争となり、トップの意思決定が争点にされた際、
山口組は「親分や上層部は抗争抑止に努めた」という
反証としてこれを流用するはずだ。


神戸は分裂でメンツを潰し、すでに一太刀浴びせている。
次は山口組のターンだ。


考えれば考えるほど、神戸山口組という名称は巧妙だ。
ヤクザには本拠の土地の名称を、親分・組織の隠語として
使う慣習があり、これまで神戸は山口組を意味していた。
今も「神戸の親分」といえば山口組の司忍六代目であり、
実際、直参たちもそう呼んでいる。
しかし、組織名に聖地を付着させれば、
離脱派がその2文字を横取りできる。
山口組発祥の地である神戸という土地は、
代紋と同様に組員の拠り所だから、マスコミが対立軸を
分かりやすく「名古屋vs神戸」と煽り立てるたび、
神戸側は印象操作に成功する。


当初、「山口組本部を名古屋に移転するという話があった。
我々はそれに反対した」という神戸側の言い分が広まり、
大義のひとつとされた。新聞報道にもなったほどで、
マスコミは完全に釣られた。
これも聖地をわが手にする計略のひとつと考えられる。
神戸は山口組のシンボルなのだ。


警察やマスコミが注目する中、カメラの放列前に加藤総長は現れた。
ばかりか山健組事務所の前で井上邦雄組長と談笑、
各社のカメラマンが、しっかりと撮影を終えるまで立ち去らなかったのだ。
神戸山口組がマスコミを呼んだのは、とどのつまり、
このツーショットを撮らせるためだろう。
山一抗争から30年、暴力団はマスコミを利用することを学習していた。


相手を刺せば自分も長い懲役に行かねばならず、
ヤクザとしての生命が終わる。
山一抗争のように暴力を乱用すれば、
民事上の使用者責任や組織犯罪処罰法により、
トップにまで責任が及ぶ。
暴対法(暴力団による不当な行為の防止等に関する法律)による
特定抗争指定暴力団の指定を受ければ、
3人以上集まっただけで逮捕だし、事務所はすべて閉鎖され、
掃除に入ることすら許されない。


警察の新手法はヤクザからすれば因縁。
これまでセーフだった事例を、新解釈で犯罪にするということ。
どんな手を使っても弘道会の幹部を摘発しろということは、
不正を取り締まるのに不正ギリギリのラインを突けという意味で、
いままで通りにやっていてはアウトになる。
二重、三重に用心しても足りない。


「暴排条例」(暴力団排除条例)ができて、
テキ屋が商売できんようになったらいかん、
テキ屋を守らんといかんというんで、
(六代目山口組は)小車誠会を除籍にした。


「除籍」やら、「破門」やら、「絶縁」やらいうのは、
時の組織が自分らの"都合"で出した処分に過ぎんのです。


井上(神戸山口組組長)らが(8月27日に)挨拶に来た時にも、
ウチのエライさんが『立場は違うけど、応援する』って
言うたらしいからな(笑)。
分裂後、名古屋や東京で、山健が何回か示威行動やっとるやろ。
(兵庫県警)内部では
『あれ、ウチのOBか現役がケツかいて(やらせて)んのと違うか』
と言われてるんや。
まさかとは思うけど、考えられん話でもないわな。
兵庫で"音が鳴って"(発砲事件があって)、万が一、
市民がケガでもしたら、ウチの本部長に傷がつく。
けど、他所で(発砲事件が)起こっても知ったこっちゃないし、
それでいっきに名古屋が潰せるんやったら、
ウチにとっては万々歳やから


国税は『今後、二度と警察が所得税法を使わないという
"念書"を入れて欲しい』とまで要求した。


アメリカでも、イタリアでもそうだが、マフィアを壊滅させるには
脱税で挙げるしかないんですよ。
国税庁が、我が国最大の指定暴力団『山口組』に対して
それができないのなら、日本政府は未来永劫、
国際社会から『ヤクザ』を容認していると見做されても仕方がない。


「使用者責任」の考え方は、暴力団に打撃を与え続けることになる。
民事訴訟では末端組員の犯罪に対して遺族や関係者が訴訟を起こし、
トップに賠償を命じる判決も、その後たびたび下されるようになった。


もはや「あれは組員が勝手にやったこと」
「関係者はもう破門した」では通らない。


稲川会は、脱退した山梨侠友會に対して、
抗争と起こそうとは考えておらず、経済的な締め付けをきつくしていき、
幹部の高齢化をにらみ、自然消滅を待つという姿勢のようだ。
暴対法が定着する以前なら、こうした姿勢はヤクザ社会のなかで
嘗められるかもしれないが、今や誰もこうした「待ち」の姿勢を
責めることはできないだろう。


警察が本気で嫌がらせをすれば、店を追い込むことはいくらでも可能だ。
ホステスの就業状況や、売春疑惑、風営法の軽微な違反など
理由はいくらでも挙げられる。
なにしろ、「酒屋のツケ払いを詐欺で立件できると言われた」
飲食店経営者も複数いるほどだ。


博徒とテキ屋の違いは一般にはわかりにくい。
住吉会、稲川会と極東会の違いと言われても、
一般から見ればいずれも「ヤクザ」である。
しかし、博徒がもともと遊び人であり博打を生業とする
「渡世人」であるのに対して、
テキ屋は商売をする「稼業人」である。


立派な肩書きを持つヤクザが、土木現場や建設現場などで
額に汗する肉体労働をしていることも珍しくない。


暴対法や暴排条例の影響で銀行口座が開設できない、
家も駐車場も借りられない、
子どもが公立保育園や幼稚園に入園もできない


今の芸能界でどこが力を持っているかといえばやっぱり弘道会。


美空ひばりと小林旭が離婚した際には、
それぞれの記者会見に山口組三代目・田岡一雄組長が
堂々と同席していたほどである。


紳助と山口組2次団体・極心連合会の橋本弘文会長の間で
交わされた複数のメールが流出したことにより、
紳助が橋本組長に心酔していたことが露呈。
事態を重く見た所属事務所の吉本興業は、
「法的には問題ないが、タレントとしては許されない」
として紳助に引退を決断させたのだ。


芸能界の重鎮たちにとって、若者の動員や美女を
あつめることもできるうえ、暴対法の適用外でありながら、
ときにヤクザを圧倒するほどの勢いを見せる半グレの存在は
利用価値が高かった。


山口組では覚せい剤を扱うことを禁止している、とされていますが、
傘下の組織の中にはシノギにしている組もあります。


暴力団総体が構成員と準構成員を合わせて5万人を切るのは
時間の問題で、暴力団の「終わりの始まり」は、とうに始まっている。


暴力団構成員は、生活権や生存権も奪われる。
銀行口座を持てず、不動産賃貸契約を結べない。
暴対法施行時にはあった「基本的人権の侵害」という声は、
もはや聞こえない。
暴力団構成員であることが罪で、嫌なら暴力団を抜けるしかない。


従来、暴力団の一番大きなシノギは、会社整理、地上げ、
債権回収、不動産売買などで年に数回、
大きな仕事を「代紋の力」でまとめ、数千万円、数億円といった
"無税"のカネを手にすることだったが、それもできなくなった。


山口組を支配してきた弘道会は、一番槍を引き受ける義務を負っている。
沈黙すれば、神戸側の思う壺になる。


入念な準備が必要なのは、暴力を連続使用できないからだ。
現在の暴力団抗争では、ひとり殺せばほぼ無期懲役になる。
もはや出頭して前科を勲章に変換することはできない。
実行犯は出頭しない前提で迷宮入りを狙ってくる。
実際、道仁会の分裂抗争では、最初の犠牲者をはじめ、
実行犯が逮捕されていない事件が多い。


探偵が抗争準備を代行するのは、いまも昔も変わっていない。


当事者と捕まえることはできなくても、女房、愛人、子供、親などは
一般的な生活を送っており、尾行や拉致も簡単だ。
外国マフィアの抗争では、当然のように家族が人質にされ、殺される。


道仁会の分裂抗争で最も多かった襲撃場所は駐車場だった。
車の乗り降りは気が緩む。それを待ち伏せして襲撃するのだ。


神戸側にとって、これは対山口組の戦争ではない。
敵はあくまでも弘道会とそのシンパのみ。
金玉の揉み方がうまいだけの直参は眼中にないし、
穏健派を刺激することもたぶんない。
抗争になっても最小限の報復にとどめ、
まずは組織を維持することを念頭に動く


山口組側の支配者である弘道会にすれば、譲歩など到底飲めない。
目的とするのは神戸の完全降伏たがひとつで、
要求があるとすれば神戸山口組主要幹部の引退と、
組員すべてを復帰させることしかない。









engineer_takafumi at 02:28│Comments(0)TrackBack(0)★一般書の書評 | ⇒ その他の本

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