2016年01月11日

経営戦略全史

本日は三谷 宏治氏の
経営戦略全史
です。
経営戦略全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)


本書はセミナーの課題図書になっていたので購入しました。


本書はビジネススクールの教授である著者が、
様々な経営戦略の理論を歴史的にまとめた一冊です。

普通、経営戦略の本を読むときには、著者のフレームワークに沿って、
いくつかの事例を読み解いていくわけですが、
本書はさまざまな戦略を歴史として紹介します。

歴史が面白い理由は、なんといっても人のドラマが垣間見えることです
本書でも、経営理論だけでなく、それを生んだ時代的な背景、
発明者の人柄などにも及んで紹介されます。

特に、本書ではポジショニング派とケイパビリティ派の対立を軸として
書かれており、楽しみながら読むことができます。


また、楽しめる一方、即効性もある一冊です。

SWOT分析やポジショニング分析など、
古典的なツールを使われている方は多いと思います。
それらのツールが登場した背景や創作者の意図を知ることにより、
より有効に活かせるようになることでしょう。


経営戦略の初心者も上級者にとってもお勧めな一冊です。
初心者にとっては様々な理論の要点を素早く学べ、
上級者にとっては勉強してきたことを違う角度から見ることにより
新たな発見があることでしょう。





ポジショニング派のほとんどは
「定量的分析や定型的計画プロセスで経営戦略は理解でき解決する」
と信ずる大テイラー主義者でした。


ケイパビリティ派(の半分ほど)は
「企業活動は人間的側面が重く定性的議論しか馴染まない」
と考えます。


テイラーが怠業と不信、恐怖が支配する19世紀の工場に
「科学的管理法」を導入した


フォードのつくった効率的な大量生産システムが
「大衆社会」を生み出した


1930年代、アメリカに生まれた「豊かな大衆」たちは
単調なT型フォードに飽き、多様なモデルを毎年出し続けた
GM(ゼネラルモーターズ)がトップに駆け上がります。


ドラッガーは「マネジメント」の有用性を世に広めた伝道士


ドラッガーは、企業戦略を「機械的な内部管理」だけでなく、
大きく3つの側面から考えるべきだと主張しました。
1、顧客の創造―企業は顧客に価値を創造するためにある
2、人間的期間―企業は人を生産的な存在とするためにある
3、社会的機関―企業は社会やコミュニティの公益をなすためにある


アンゾフは「市場における競争」の概念を持ちこんだ
「経営戦略」の真の父


事業間の相乗効果のことを「シナジー」と呼んだのはアンゾフでした。


この後登場する、ポーター、ルメルト、BCGとマッキンゼー、
ピーターズとウォーターマン、ハメルとプラハラード、バーニーも、
そしてクリステンセンやチャン・キムも、みなすべてアンゾフの子なのです。


世界で初めて事業部制をひいた(つまり発明した)のはデュポンです。
1920年代のことでした。
その多角化は、余剰人員の活用のためでした。


バウアーはマッキンゼーをつくり「組織戦略」を推し進めた


SWOT分析もずいぶん誤解されてしまった。
本当はあれは「分析」じゃない。
あれをやったからすぐ結論が出るようなものじゃなくて、
外部環境と自分の競合上の強み・弱みを冷静に整理するための
枠組みに過ぎない。


でも、SWOTの応用であるTOWS分析は使えます。
(中略)
やることは単純で、SWOTで出した機会・脅威ひとつひとつに、
強み・弱みをかけ合わせていくのです。
全部を組み合わせてみることで、打つべき策の「案」が
いろいろ出てきます。
・機会と強みを組み合わせれば「積極攻勢」策の案
・機会と弱みを組み合わせれば「弱点強化」策の案
・脅威と強みを組み合わせれば「差別化」策の案
・脅威と弱みを組み合わせれば「防衛/撤退」策の案


企業のあらゆる機能の中で、マーケティングは、
唯一アウトソースできない中核機能である


躍進する日本企業たちは、単に市場シェアを不当廉売によって
奪っているのではありませんでした。
低価格で経験量を増やしてコストを下げ、
借入金は増やすが配当は抑えて、理にかなった
「持続可能な高成長」を遂げていたのでした。


1966年BCG史上最大の商品が生まれます。
「成長・シェアマトリックス」です。


マトリクスに従って、問題児事業を選択と集中により
分けてスター事業に育て、負け犬事業を整理した後、
何もあとに残りませんでした。
「次の成長の素」まで売り払ってしまったからです。
せめて「負け犬(Dog)」ではなく、将来への成長の期待を込めて
別の名(たとえば「子いぬ(Puppy)」)を付けていれば、
扱いが変わったかもしれません。
それが、BCGの、密かな反省です。


ポーター ポジショニング派のチャンピオン登場!


ポーターは「ポジショニング」を重視しました。
経営戦略の目的は企業が収益を上げることにあり、
そのためには「儲けられる市場」を選んで、
かつ競合に対して「儲かる位置取り」をしていないと、
どんなに努力してもムダだと。この2つがポジショニングです。


BCGやマッキンゼー、ポーターらが築き上げてきた
「ポジショニング派」の牙城に対する最大の攻撃が、
1982年の『エクセレント・カンパニー』によってなされました。


超優良企業では、戦略や指示ではなく
「価値観の共有によるマネジメント」が行われているのだと
ピーターズたちは主張しました。


コア・コンピタンスとは「機会」付きの「強み」である


コア・コンピタンスは技術でもチャネルでも、人材的なものでも構いません。
もしそのケイパビリティ(企業能力)が、1,競争相手にマネされにくい、
2,顧客価値(顧客が認める価値)を創出できる、3,多事業への展開力がある、
ものでさえあれば。


注意し給え諸君。今この世の中を揺り動かしているのは、
決して学識ゆたかな学者ではないのだ。
かえって、何も知らない連中の方が、革新の旗手たりえているのだ。


起業で成功するには、戦略をじっくり立てるのではなく、
外部から来る機会に素早く対応し続けよ


戦略は簡単だ。問題は実行だ。


「組織は戦略に従う」のは、組織が戦略ほど急には変われないからだ。
だから、必ず戦略は失敗する。
そうならないためには、組織(ケイパビリティ)を先に変えてしまおう、
というわけです。


2000年4月のネットバブル崩壊もあり、アマゾンの株価は下がり続け、
01年4月には8ドルとなりました。最盛期の14分の1です。
しかし、ベゾスは意に介しませんでした。
巨大物流センターが、アマゾンに圧倒的な「持続的な競争力」を
与えてくれるとわかっていたからです。


ヒトや組織は、そもそも自身の発展の理由をちゃんと自覚していません。
成功しているときには全てが成功理由に見えますし、
周りも誉めるばかりで、まじめに反省する気にならないからです。
でも成功には必ず大きな「理由」があります。


情報は常に(古典経済学者が期待するほどには)完全でなく、
まったく未来が予見できない状況において、
人々が頼るものは「期待」だとガルブレイスは考えました。


IT化などによってフラット化したのは
クリエイティブ・クラスが集まる都市の間だけの話。
それ以外の都市との格差は開くばかりで、
世界は(都市単位で見れば)フラットではなく、
むしろどんどんギザギザになっている


機能そのものではなく、機能と機能のつなぎ目にこそ問題がある


失敗するのはリーダー企業が顧客志向でありすぎるためだ


小さな別働隊をつくって、別の指標で管理して(つまり早急な成果を求めずに)、
既存顧客には売り込まず、それを求める新しい顧客を開拓しよう!


測定不能なものを測定可能にすることで、
われわれ自分自身についての理解や交流の仕方に
革命をもたらす力がある。


世の中がたとえ完全に予測不能でも、もし分析・実験可能であるなら、
経営戦略論も変わります。


ヒトは「過去」において偶然をきらい、必然を好みます。
未来に対しては「確率的だ」、つまり将来何が起こるかは
偶然が左右するとわかっているのに、なぜか今起きていることは、
偶然の産物とは思いたくないのです。


過去に学ぶのではなく、今の知慧を集める。
予測・推測するのではなく、実際にやってみる、
が社会学からの答えなのです。


テロ組織の仕掛ける自爆テロやIED(即製爆弾)に対して、
無人偵察機も軍事衛星も、無意味でした。
(中略)
アメリカ軍兵士たちは、戦闘で死んだのではなく、
治安維持活動(物資の輸送警護やパトロール)の最中に、
IEDにやられたのです。


アメリカ軍の勝利はテロリストたちの殲滅によってではなく、
テロリストによる報復から自分たちを守ってくれると
住民たちが確信した瞬間に訪れました。


イラク人に無礼な態度をとることは、敵を助けるということだ


現代戦における戦略は、現場での試行錯誤と
そのフィードバックによってのみ成立するのです。


戦略上の失敗要因は、突き詰めれば2つでしょう。
ひとつはすべてにおける曖昧さ、もうひとつは柔軟性の欠如です。


ZARAは、「流行を先読みする力」には、頼らないことにしました。
(中略)
代わりに新製品をどんどん出して、消費者の「本当の」好みを探って、
それに合わせていきます。


ZARAやH&Mといった最強のファストファッションブランドを支えているのは
予測力ではなく、「今の流行」をハカる力なのです。


・顧客に価値を提供できないものはすべてムダ
・それが検証できないもの、学びにつながらないものはすべてムダ


リーヴスがアダプティブ戦略の「実験する能力」の項で
最後に強調しているのは「失敗への対応」です。
試行錯誤には(文字通り)必ず失敗が伴います。
失敗を受容し、かつ、そこから学ぶ能力がなければ、
試行錯誤型経営でなく、ただの「錯誤」になってしまいます。






engineer_takafumi at 18:01│Comments(0)TrackBack(0)★一般書の書評 | ⇒ 経営

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