2016年01月15日

イノベーションの収益化

本日は榊原 清則氏の
イノベーションの収益化
です。
イノベーションの収益化―技術経営の課題と分析

本書はセミナーの課題図書になっていたので購入しました。


本書は日本企業が技術はありながら儲けられないという
現実にあるといわれている中、
経営学の教授である著者が、技術開発をどのように
収益に結びつけるか分析した本です。

事例としてキヤノンのプリンターやインテルのMPUが
かなり詳細に取り上げられており、詳しく分析しています。

イノベーションの成功事例として有名な2社ですが、
つまりのところ何が成功だったのかということは、
表面的にしか知られていません。

この本はインテルやキヤノンの成功の本質を突いています。

学術的で少し難しい部分もありますが、
具体的事例が多いので、なんとか読み進められました。


個人的には「統合型企業のジレンマ」という考え方が、
面白いと感じました。


将来、技術経営の担い手を目指す人にはお勧めの一冊です。
技術で収益を出すために何が必要なのか、
おぼろげながらにでも、つかむことができるでしょう。




飛行機の一般化にとっては、
いうまでもなく戦争が果たした役割が決定的に大きかった。
ライト兄弟が当初から軍事用途をねらっていたのは象徴的である。


蒸気船の発明が帆船技術のイノベーションを刺激し、
それによって帆船時代が長期化したことを示している。


イノベーションには2つのタイプがあることがわかる。
研究開発の初期にはコストを意識する必要がないイノベーションと、
それとは逆に、当初からコストを意識してこないイノベーションという
2種類のイノベーションである。


テクノロジーを手に入れるというのは人材を獲得することである、
という点を肝に銘じておく。


日本のプロジェクトマネジメントを特徴づける最重要のキーワードは、
アメリカの「多産多死」とは反対に「少産少死」である。


これはまさにキヤノンが製品アーキテクチャを組み替えることで、
交換カートリッジの付加価値あるいはランニングコストを
操作してきた結果であり、またそれに伴って
インクジェットプリンタにおける利益獲得能力を
メーカーとしてコントロールしようとしてきたことを表している。


DRAM事業からの撤退は、世界の半導体産業における
インテルのその後の支配性を基礎づける重要な戦略であり、
高く評価されている。


インテルには、創業者のひとりであるノイスが唱えた
「最小情報原理」(principle of minimum information)とよぶものがあり、
社内の研究開発はこの原則で進められている。
(中略)
この進め方においては、問題を真に理解するための研究開発の
体系的積み上げや、学会で発表できるほどの技術的な
解決法の模索は基本的には行われない。
解決に必要な情報は少ないほど良いとする考え方が、
その基礎にある。


シリコンバレーのベンチャー企業の間では異例なほど、
インテルからスピンアウトされる企業は少なかった。
それは上述の最小情報原理と関係しているといわれている。
最小情報原理のおかげで、皮肉なことに、
商品化できない不要なアイデアはインテル社内には
ほとんどなかったからである。


ものを作るということと、
作ったものを理解するということは、同じではない


事例分析におけるわれわれの中心的な作業課題は、
第1に新しい技術がどのようなものとして、
いつ、いかにして作られたか、
第2にその新技術の意味がどのようなものとして、
いつ、いかにして同定されたか、
の2点を事例に基づいて明らかにすることである。



重要ではあっても多数のアプリケーションのなかの1つにすぎず、
PC革命や「PC中心主義」と結びつけたMPUの意味の同定は1980年代の
前半だったように思われるのだ。
もしもこの推測が正しいとすれば、今日みられるようなMPUの意味の同定は、
テッド・ホッフによるMPUの発明時点(1971年)からカウントして、
十年以上後のことだったということになる。


既存の技術に対し新技術が生まれイノベーションが起きたときに、
それを誰もがすぐに歓迎するかというと、事実は必ずしもそうではないのである。
むしろ、新技術は、それが登場したとき劣悪な技術と
受け止められることが多い。


使い捨てコンタクトレンズの事例は、
最終的にどういうビジネスをめざすかによって
技術開発の初期の取り組み志向が変わる場合があることを
示す事例でもある。
長寿命化が、重要な技術開発課題に上がってこないこともあり得るのだ。


プリンタヘッドは必ずしも万年筆のペンである必要はない


もともとは自社完成品の付加価値増大のため部品(材料)への
取り組みが重視され、その後1つひとつは合理的と思われる
意思決定を経て、最終的には自社完成品のコモディティ化を招き、
さらにはブランド価値の毀損という事態に立ち至るのである。


「統合型企業のジレンマ」は、完成品の競争力強化をねらった
キーデバイス(重要部品)への取り組みが、
かえって完成品の競争力を弱体化させコモディティ化させる
道筋を明らかにしている。







engineer_takafumi at 21:05│Comments(0)TrackBack(0)★一般書の書評 | ⇒ 経営

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