2016年10月02日

確率思考の戦略論

本日は森岡 毅氏、今西 聖貴氏の
確率思考の戦略論
です。


本書は著者の前著のUSJを劇的に変えた、たった1つの考え方
がとても良かったので購入しました。

USJのV字回復を実現させた著者のマーケティング手法として、
数学的な一面をまとめた本が本著になります。

テーマが「数学」であるのと、重々しいハードカバーの装丁から
かなり難しい本なのかと思いました。
しかし、数式は登場するものの、透明性の担保のために
載せられているだけで、基本的に読み飛ばしても
内容は取れるようになっています。

本書は森岡氏と数学を使った需要予測の専門家である
今西氏の共著となっています。
特に今西氏のパートでは、需要予測の数学モデルについて
相当突っ込んだところまで議論されています。

ただ、実際のところ、数学を使ったマーケティングで
一番難しいのは数学ではありません。

一番難しいのは、マーケットからどのようにして
データを取るか、それをどう解釈するか、という部分です。

本書でも「毒入り消費者データ」という表現で
その解釈の難しさが表現されていました。

科学や工学の分野と比べて、社会科学に数学を適用する
ことは難しいですが、その中で成果を挙げられる方が
どのような考え方をしているか、
その一端を理解することができました。


理系の学生やエンジニアにお勧めの一冊です。
数学が社会科学にどのように応用することができるかを
学ぶことができるでしょう。




数式は透明性の担保のために載せているだけで
本書の理解には関係ありません。


人は仕事を選ぶけど、仕事も人を選んでいる


市場構造を決定づけているDNAは、消費者のプレファレンス


全てのカテゴリーにおいて市場構造お本質は同じであり、
それはプレファレンスに収束される
消費者の購買行動によって決まる


経営資源の配分先は、結局のところPreference(好感度)、
Awareness(認知)、Distribution(配荷)の3つに集約されるのです。


ハリー・ポッターで達成しなくてはいけない追加集客は、
需要予測モデルによって導き出された「200万人」でした。
そしてその需要予測が示す必要な認知レベルは、
全国で90%以上という凄まじい高さでした


私の奇策は「USJのV字回復を本に書いてベストセラーにし、
USJは注目すべき成長企業であるというメディア内認知を形成する」
というものでした。


配荷率(Distribution)とは、市場にいる何%の消費者が
その商品を買おうと思えば物理的に買える状態にあるかという指標


ブランドのプレリファレンスを伸ばそうとするときに、
実践経験の浅いマーケターがよくやってしまう過ちは、
既存の特定の消費者ターゲットの中でのプレファレンスを
伸ばすことで頭が一杯になってしまうことです。


TDRでさえ、よく見れば、インディ・ジョーンズ、スター・ウォーズ、
そしてこれからはアバターと、およそミッキーマウスの世界観とは
相容れないバラエティーをパークにいくつも含んでいます。


私の中での戦略づくりは「つくる」というよりはむしろ
「さがす」という感覚です。


消費者のターゲティングもそうですが、差別化も
狭めるためにやっている訳ではないのです。
エクイティーを尖らせるのは、あくまでも市場全体から
自社ブランドへの投票数「M」を増やすために行っている
手段であることを肝に銘じておきましょう。


消費者と企業は、プレミアム・プライシングや値上げによる
果実を共有している。


サイコパス性とは、感情的葛藤や人間関係の
しがらみなどに迷うことなく、
目的に対して純粋に正しい行動を取れる性質のこと


西洋のスポーツマンシップというのは、そもそもそういう考え方が
本音ではないからこそ、声高に叫ばれているに過ぎない。
我々は基本的に勝つためには手段を選ばないのが常識だ。
油断させるためのプロパガンダなのに、キレイな戦いを信じて
引っ掛かるのはお人よしの世間しらずだ


我々の行動はほとんど感覚に対する反射であり、
もっともらしい理由はあとづけである


より多くの多角的、独立的な試算をすれば、
大抵の場合より精度が上がります。


毒入り消費者データは無味無臭なのです!
気がつかないで飲み込む確率が非常に高いのです。


今までの経験から次のような場合、
コンセプト・テストのデータに毒が入っている
(テストと市場の結果が大きく乖離する)
可能性が非常に高いので注意してください。
A:カテゴリーを始めて作る商品の場合
B:商品の大きさの印象がコンセプトと店頭で大きく異なる場合
C:25%〜30%以上のプレミアム価格の場合


我々が現実を知るために消費者データを使う時は、
できるだけ多様性と独立性を加味した上で
できるだけ多くの視点で診るべきだ


会社の重要な意思決定を消費者の代理人である
マーケターに委ねる覚悟もないのに、
消費者プレファレンスにおいて勝ちにいく会社を
夢想するのはやめた方が良い


大事なのは、マーケティングの最終責任者と市場調査部の
部門長が利益を共有している点です。
マーケティングの最終責任者の成功は、
事情調査部の部門長の成功なのです。


人を使うこと、人に使われることは、まるで人体組織のように
美しい共依存関係で繋がることだと私は信じています。







engineer_takafumi at 13:12│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ マーケティング・営業

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