2017年01月05日

ミステリー小説を書くコツと裏ワザ

本日は若桜木 虔氏の
ミステリー小説を書くコツと裏ワザ
です。
ミステリー小説を書くコツと裏ワザ

本書はミステリー小説の世界を覗いてみたいと思い
購入しました。

本書の著者は作家として活躍するだけでなく、
小説家養成講座の講師として、
40名以上の生徒をプロデビューさせた実績を持ちます。

そんな著者が本書でミステリー小説の書き方に
ついて語ります。

まず、圧倒されるのは、著者の圧倒的な知識です。
作品や応募した賞、作家の固有名詞がこれでもか
というほど登場し、ミステリーと名のつくものは
全て読みこんでいるのではないかとさえ思えます。

さらに、ミステリーの選考過程を熟知していて
どのようなものを書けば予選が通過できるか
明確に示してくれます。

また、「致死量以下の青酸カリを舐めてみた」など、
ミステリーの周辺知識までも半端ではありません。

なんと解説で、
この本を読んでいるか否かによって、
受賞への道程には数年の開きが出る場合すら
ありえるのではないか。

とまで言われているのです。


もし、ミステリーを書こうと思っている人ならば、
何を差し置いてでも、読むべき一冊でしょう。

一方、私のようにミステリーに関わらない人でも、
ある程度の普遍性があり、
参考にできることは多い一冊でした。



本書で示す「魅力的なミステリー小説」とは、
1,これまでにない「新鮮さ」が感じられる小説
2,全体の完成度・質が高く、読み手にとって読みやすい小説のこと。
1のこれまでにない「新鮮さ」を更に細分化すると、
A…これまでの小説にない魅力的な登場人物や物語の設定
B…これまでのミステリーで見たことのない、奇抜なトリック
C…これまでのエンターテイメント小説で見たことのない意外なエンディング
D…これまで味わったことのない、ハラハラドキドキ感


新人賞では、既視感のある作品は絶対にNGで、
ABCDの全部に「これまで…ない」が共通しているように、
作品には必ずワンポイントで良いから斬新さが求められる。


アイディアに著作権はないので、仮にそのまま自分の作品として
発表しても、法的に問題となることはない。
そこで推奨するのが、アガサ・クリスティーの作品群である。


アガサ・クリスティーの作品群の時代設定は、
第一次世界大戦から第二次世界大戦までなので、
当然のことながら、舞台設定は使えない。
この部分には目もくれず、ひたすら人間関係に着目して、
現代を舞台にした物語の登場人物に当て嵌める。


どんな大家のミステリー作家でも、最初は"無名の新人"だから、
できるだけ早く、死体を出す(殺人事件ミステリーでなければ、
できるだけ早く事件を起こす)。


ミステリーに限らず、エンターテイメントでは
回想やカットバックを可能な限り避け、
エピソードを出来事の順番通りに並べる
"時系列厳守"が鉄則なのだ。
(中略)
ミステリーを含むエンターテイメント系の作品は
「楽しみのために読む」のであって、
知恵を絞って悪戦苦闘しながら読む、という性質のものでない。


警察が出てくるミステリーを書こうと思ったら、
濱嘉之作品を手元に揃えるのは、必須である。


ミステリーにおいて、犯人逮捕は必須条件ではない。
必須なのは、「全ての謎が読者に矛盾なく開示されること」である。


初心者は、複数主人公を設定すると、
この「視点の切り替え」が上手にできなくて
ついつい主人公の認識できないことを書いたり、
A、B、C誰の視点で書いているのかが
判然としなくなるミスを犯す。


目新しいトリックを入れ込んでいても、
そのトリックの基礎となる知識
(薬物などの科学考証・警察の動きなどの警察考証)
が間違っていたりしたら、
それに気づいた読者は一気に萎え、
読む気を失ってしまうことは疑う余地がない。


先人の本格ミステリー作家が山ほど大量に考えたので、
今では「新奇の機械的密室は、もはや不可能」
とまで言われているほど難しい。


トリックが最後まで分からない―は、
賞の選考対象になっていると否とにかかわらず、
魅力的なミステリーを書く際にも重要である。


映像化され、テレビ放映された作品群を
片端から見ることを、推奨する。


盗作ではなく、せっかく苦心惨憺、自分の頭で考えたのに
アイディアが被る事例は多い。
だからこそ山ほど既存作を読み、
山ほどテレビ・ミステリーを見なければならないのである。


複雑なアリバイ・トリックだと、
このスケジュール作成を綿密にやっておかないと
「登場人物が同時に二箇所に存在する」
ようなミスを犯す失態をやりかねない。


ミステリー執筆の初心者の中には、
あまり入り組んだ複雑な本格トリックが作れず、
まずまずの平凡なトリックを、
作中の刑事や探偵の能力を凡庸に設定することで
難解なトリックのように偽装しようとする人がいる。
これは、絶対に、やってはいけない。


開示できる情報は片っ端から出していって、
それでもなお、事件の真相が見抜けないように
物語を構成しなければ、面白いミステリーとは、ならない。


犯人が間抜けな行動をとって犯行がバレる、
刑事が間抜けな行動をとって事件解決が長引く
(あるいはピンチに陥る)という設定は、下の下である。


間違ってもインターネット上の知人などに見せてはいけない。
それでアイディアを盗まれて先に発表されてしまった、
という実例が、いくつもある。


"平凡だが魅力的"という人物を書くのは、
初心者には不可能に近い至難の業である。


アマチュアは成長物語には、手を出さないほうが良い。
新人賞であれば、成長過程を描くために余分な枚数を費やし、
応募規定オーバーの危険性がある上に、
成長に伴う変化を「キャラクターが不統一」と
選考委員が見なす可能性が高い。


無口でキャラが立っている主人公といったら
劇画『ゴルゴ13』の主人公のデューク東郷ぐらいしか
思い浮かばない。


「主人公を個性的にしたい」と考えるあまり、
ついつい"主人公は魅力的でなければならない"
という必須要件が消し飛んでしまう人が、意外に多い。


刑事を主人公にする場合、その上司を無能(馬鹿、間抜け)
に設定すれば、主人公が比較の問題で、極めて有能に見える。
これはテレビのミステリーで、
いくらでも実例を見た記憶があるはずである。
こういう安直な脚本を書くから、視聴率が取れなくなる。


主人公は常にノーミスで行動しなければならない。
できるなら、主人公が追跡する敵(犯人など)もまた、
ノーミスで行動するのが理想的。


ミステリーでは「映像化されそうなキャスティングを工夫する」
のは非常に重要なポイントである。


文体に凝って、理解しにくくなればなるほど
選考時の減点対象となっていくことを心得ていなければならない。


地の文を全く読まないで台詞だけを読んでも、
誰が、どういう心情で喋っているのか、
が明確に分かるように書くことである。


特に駄目なのが「そう言った」で、
「そう」ではニュアンスは読者(選考委員)に伝わらない。
ここは、どんな口調と表情(主人公なら心情)で言ったのかを
描写するべきなのだ。


本格トリックの謎解き以外の部分で読者(選考委員)に
考え込む行為を要求するようでは、エンターテイメント失格である。


一行空けの乱発もNG。
ライトノベルでは多用する作家が多いのだが、
大人物では多用すると選考委員は
「余韻を文章で表現する能力がない」と見なして
選考時の減点対象にする。


専門的職業に絡んでいて門外漢には絶対に書けそうにない
物語を書くと物語の面白さが増すし、新人賞狙いをする際には、
極めて有利である。


学校の教職員でプロ作家になりたい人は極めて多くて、
学校を舞台にした作品を送ってくる。
そういう作品は、お互いに、驚くほど似通っている。
これでは、予選突破は覚束ない。


いくら面白くても、物語の基本設定に既視感があれば
一次選考落ちするのが、新人賞選考の世界なのだ。


出身地は、ド田舎であれば、そこを舞台にして物語を書けば
新鮮味がでるからで、新人賞を狙う場合は有利になる


よくテレビ・ミステリーで、新米刑事が凄惨な殺人現場に
遭遇して嘔吐するシーンがあるが、あれは、
死体が血塗れだからショックで嘔吐するのではない。
強烈な腐臭で嘔吐中枢が刺激されるのが原因なのだ。


パトカーの乗り逃げ盗難事件は、実は全国で頻発していて、
警察官は、ものすごく神経質になっている。


青酸カリは強アルカリ性ですから、強烈な刺激があって、
舐めた瞬間に分かります


青酸化合物による集団毒殺人事件では、
横溝正史『悪魔が来りて笛を吹く』のモデルになった
帝銀事件が有名だが、これは犯人が、
厚生省技官だと身分を偽って
「この近くで集団赤痢が発生したので、予防薬を飲んでください」
と言葉巧みに一気飲みさせることに成功している。


ハンカチで押さえ、外してクロロホルムを染み込ませ直し…
の繰り返しで、まず気絶するまでに八時間ぐらい必要とする。
それに、被害者の体質にも左右されるので、
それでも気絶しない人もいる。
短時間で気絶するためには、被害者が犯人に協力することが必要で、
クロロホルムを染み込ませたハンカチを押し当てられたら、
深呼吸して、思い切り吸い込まないといけない。
それでも簡単に気絶とはいかない。
まあ、短くても五分から十分は必要で、えらく気分が悪くなる上に、
かなり毒性が強いので、気絶はしないが死んでしまう可能性もある。


"傾向と対策"の基本は
「過去の受賞作を読み、そのどれにも似ないように書く」
ことに尽きる。


"面白い"のと"新奇のアイディアがある"のは新人賞受賞の
必須の二大両輪であり、どちらか片方を外すことは許されない。
しかも、その面白さは、可能な限り前のほうに、
できれば一ページ目に持って行くことが要求される。


選考委員は「新人賞を授賞するために読む」のではなくて
「予選落ちさせるために読む」のだという
歴然たる事実を踏まえて、応募作を書かなければならない。


選考委員の気を惹けるアイディアを思いつけない場合は、
とにかく「主人公を走らせる」手を使う。


歌舞伎町が舞台で新人賞は取れません。舞台は福岡に変更。


疑似体験できないのは、北国ならば豪雪、
南国ならば台風である。


複数の死体が出る場合、選考委員は必ず
「これほど大勢の人間を殺害する必然性、
納得がいく動機があるのか?」を見る。


時事ネタは特に応募作に多くて、
ろくに読まずに一次選考で撥ねられる。
(中略)
未成年者の非行・離婚などの家庭内トラブル・
様々なハラスメントなどなど。
いずれも、あまりに大量に新人賞応募作で送られてくるので、
下読み選者が真面目に読まない。


なぜか介護に関わっている人には、小説を書きたい、
自分の職場体験を小説に、という人が多いのだが、
極めて難しい分野である。


なぜか「応募規定枚数の上限に近いほど有利」
という"都市伝説"がインターネット上に蔓延っているのだが、
まったくそんなことはない。


プロ作家を目指すのならば、
全て応募規定枚数の下限ぎりぎりで出すのが、賢い。


書くのが遅い人は、ほぼ例外なく
"パソコンを立ち上げてから、じっくり考える"タイプである。


応募者は大多数が前回の受賞作を参考にするために、
前回受賞作が傑作だと「これは勝てない」と考えて回避し、
前回受賞作が駄作だと「この程度なら自分でも書ける」
と考えて殺到する。


出版社としては、受賞作でなければ売れない時代になったので
「受賞作なし」とはしたくないからだ。


どうしてもSFを書きたい人は
『このミステリーがすごい!』大賞を狙うのは一つの手である。


ミステリーで新人賞を目指す方が、
この本を読んでいるか否かによって、
受賞への道程には数年の開きが出る場合すら
ありえるのではないか。






engineer_takafumi at 20:24│Comments(0)TrackBack(0)★一般書の書評 | ⇒ 書き方・話し方・言語

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