2017年02月04日

トヨタの強さの秘密

本日は酒井 崇男氏の
トヨタの強さの秘密
です。
トヨタの強さの秘密 日本人の知らない日本最大のグローバル企業 (講談社現代新書)

本書は著者の講演を聞き、興味を持って購入しました。

本書の著者は「タレント」の時代
人事・組織コンサルタントの酒井さんです。


本書では、日本の最強企業であるトヨタの強さの秘密に迫ります。

著者は、トヨタの強さは現場のカイゼン力ではなく、
その設計力にあると主張します。

そして、その設計力の秘密はトヨタの主査システムにあるのです。

本書では、その主査の仕組みについて語られます。
主査というスーパーマン中心に開発をまわす、
この仕組みこそ優れたプロダクトを作る原点で、
その主査をどう育てるかが(本書では十分には語られていませんが)
他社がマネのできない競争優位性、ということなのでしょう。

私は競争に完敗してしまった日本の半導体メーカに勤めていますが、
自分の会社とトヨタの何が違うかがおぼろげながらに
分かった気がしました。

個人的には、「組織文化」とは誰を偉いとするかで、
その価値観が製品に強く影響する、
という箇所が心に残りました。


前著と同じで、組織の上に立つ人、大企業で
人事の仕事をする方に、お薦めの一冊です。
優れたプロダクトを生み出すための仕組みが
見えてくることでしょう。





主査制度を定着させるためには、組織の形だけではなくて、
(同じ労働でも)創造労働や創造的知的労働をする人間の
「人間系」をうまく説明する必要が出てくる。


個々人レベルでは大変優れた人がいても、
組織としての実力がまったくない。


TPDで価値と利益を含んだ設計情報を作り、
完成した設計情報をTPSに基づいて
最小の費用と運転資金で実際の製品へと変換する。
TPD: Toyota Product Development
TPS: Toyota Production System


製造業は、ざっくり言ってしまえば、
「コンテンツ産業化」「情報産業化」「知識産業化」
しているのである。


私達はモノ(実体)を買っているように見えて、
実際は設計情報を買っているのである。


TPSに基づく現在のものづくりでは、
財務会計上は「資産」である、材料、仕掛品、製品在庫は、
実務上「負債」とみなすのが常識である。


いまの企業が持つ本質的な資産は、
「設計情報・プロセスノウハウ・人間の頭脳」
の三つの情報資産なのである。


トヨタはGMと合弁で自動車生産会社NUMMI
(New United Motor Manufacturing Inc.)を設立することになった。
NUMMIは、小型自動車の開発で技術的に立ち遅れたGMへ
技術供与を行うための会社だったと言われている。


現在NUMMIの工場を使い
電気自動車の製造を行っているのがテスラモーターズである。


主査は、社長をはじめ、各役員から系列会社や販売会社の
すべての責任者まで、誰にでも、
必要とあればアポを取って会いに行く権限を持っている。


トヨタの場合、ボデーに他の全てのサブシステムが
ぶら下がるようなクルマの設計をしているので、
主査のうちだいたい半分がボデー設計部出身だという。


プロジェクト全体の成功・失敗の責任は主査にある。
つまり、主査制度は、主査が各機能別専門分野の
人材を使いながら、製品を企画、設計、生産、
販売するための制度になっている。


主査は、製品開発業務を円滑に進めるために、
関係する各分野の専門家とコミュニケーション
できることが必須である。


主査制度は、専門性が商品性に結晶されるような仕組みである。
専門性を深めると同時に商品性を高めると言ってもよい。
知識のフローとストックを両立するための
仕組みであると言ってもよい。


「すりあわせ能力が日本人は高いから、日本の自動車産業は強い」
というような仮説が一時期、ほぼ定説のように言われていたのだが、
これは多くのトヨタOB達が指摘しているように
的が外れた解釈であり、間違いである。


パソコンやスマホの設計情報は、
すでにインテルやクアルコムのような会社を中心に
設計済・企画済であり、
日本の家電メーカーはその転写のみ担当している。


Aクラス人材のネットワークを切らさずに、
目的に合わせた主査型のタレントを抜擢し続けるような
人的仕組みを持つことが、
成功する主査制度運営の肝である。


主査制度を導入する時に最も障害となるのが、
組織文化である。
組織文化とは、一口に言ってしまえば、
「誰が偉いか」(どういう考え方で何をする人が偉いか)
ということである。


「誰を偉いとしているか」
「どういうタレントを組織内で最も尊敬するのか」
という組織の価値観、組織の文化次第で
プロダクトの性格はだいたい決まってくる。


NTTがうまくいかないのは、彼らは、
システムや設計情報ではなく、細かい要素技術中心で
ボトムアップから研究開発をしているからである。


「ものつくりは人づくり」と言っていることは、
プロダクトでもプロセスでも管理・改善・改革ができる
頭脳を持った人材を育てるということである。


教授は「一人の設計担当者に直属上司と主査の双方から
指示が来るような主査制度は論理的に機能するはずがない。
あなたは嘘をついているのではないか」
と主張し、理解ができなかったそうである。


結果を出せず失敗したとしても、
「何を考えてどうアクションしたらどう失敗したか」
という情報を残す。
組織のほかの人間が同じ失敗を繰り返さないために
プロセス知識を蓄積するわけである。


系列の仕事も、元をたどると、
各製品の社長である主査が中心となっている。


同じ価値の製品なら、定期的に安くならないと
エンジニアのアタマのハタラキがない(カイゼン努力が足りない)
という仕組みになっている。


人の立場や顔中心、
あるいはハタラキのない人間の立場が中心ではなくて、
付加価値を生み出す仕事(ビジネスプロセス)に対して
人間が能力に応じて求められるハタラキを生み出しているか


トヨタは「TPD+TPS」というトータルの仕組みで
富を生み出しているのである。
背後にあるのはトヨタ流TQMである。
いまこれを海外の人は、「リーン」と呼んで
すごい勢いで学んでいる。







engineer_takafumi at 19:05│Comments(0)TrackBack(0)★一般書の書評 | ⇒ 経営

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