2017年06月22日

ベストセラーコード

本日はジョディ・アーチャー氏、マシュー・ジョッカーズ氏の
ベストセラーコード
です。
ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム

本書は5000冊ほどの小説の全文を統計解析し、
ベストセラーとそうでない本の違いはどこにあるのか、
ということを調査してわかったことが書かれています。

訳書なので、当然米国の本が対象ではありますが、
言語を超えて普遍なことも多いと思われます。

導き出された結論は、
著者が得意な3〜4個のテーマに集中する、
なるべく口語的でリアルな言葉を使う、
読み手の感情の起伏を激しくする、など、
昔から小説作法の類の本でも、
言われていたことになります。

ただ、この結果はコンピュータが
無機質に解析した結果、同じ結論が導かれる、
ということに意味があるのです。


なお、こんなことが可能になるのであれば、
AIが小説を書き始める時代が来るのではないか
と考える人も多いでしょう。

この本でも最後にその話に触れていますが、
著者は基本的には否定的な立場です。

例えば、ここでどのような表現をすれば良いか、
(ここで言う"良い"は"売れるか"という意味です)
候補を示すことはできますが、
選ぶのは人間であるべきなのです。

テキストマイニングの第一人者の言葉だけに
このあたりは非常に重みがあります。


統計解析や人工知能に興味を持っている人に
おすすめの一冊です。
現在、人間の感情にコンピュータが切り込めるか、
という問いの答えを示してくれます。



ベストセラーの80パーセントは大手出版社5社
で占められているとう事実がそれを物語っている。
大手はマーケティングに多額な予算を
割くことができるのだから。
(注 これはアメリカの話です)


苦労してコンピューターに場所の
特定方法を教えたのに、
結局、例外はあるものの、
地理的な舞台設定は本の売り上げに
あまり関係がないこともわかった。


先立つのは主題への興味である。
そこから当然の疑問が生まれる。
人の心をつかむトピックとはどういうものか?


読者は職業に強い関心を示す。
なぜかわからないが、そうなのだ
(中略)
職業に関しては意外に思うかもしれないが、
この点についてはコンピューター・モデルも
おおむね同意している。


世界中のあらゆるトピックからベストセラーに
もっとも登場するものを選べと言われれば、
おそらくセックス、ドラッグ、ロックンロールが
浮かぶのではないだろうか。
しかし、実際には違った。まるで違った。


平均すると、
ベストセラーにくらべて非ベストセラーでは、
セックスが2倍出てくることがわかった。


ふたりが「知っていることを書け」
という鉄則を守っていることがわかる。


作家にはそれぞれ特有のトピックがあり、
読者はそれを求めている


売れる作家はもっとも大切な30パーセントに
ひとつかふたつのトピックしか入れていないのに対して、
売れない作家はたくさんの項目を
詰めこむ傾向があるということだ。


新人作家は意気込みすぎるということだった。
彼らには、複雑な状況をあらゆる角度から語り、
たくさんのトピックを織りこむ傾向がある。
(中略)
だが、市場は受けつけない。
350ページの読書体験には多すぎるのだ。


キャラクター同士の日常のやりとりは、
物語のペースに変化をつけ、
メロドラマになるのを防ぐ役割がある。
これを目当てに読む人はいないが、
息継ぎになるこうしたシーンがない小説には
ほとんどの人が不満を感じるだろう。


家で過ごす家族と緊急治療室を
ひとつの小説のなかで扱うことには大きな意味があり、
法律の世界のあとに、子どものことや恋愛を語る
グリシャムとは逆の流れだが、効果は同じだ。
こうした異質なものを並べることで衝突を示唆し、
ストーリーを動かす燃料となる。


ふたりのベストセラー作家が
わたしたちに教えてくれるのは、
読者をひきつける大きなトピックがあるということ、
それから、2番目以降のトピックは
現状を脅かすような衝突を示すものが
いいということだ。


うまくいかないトピックのなかで特に目立つのは、
現実離れした空想の世界に属するものだ。
造語、不思議な生き物、実際には存在しない舞台設定、
宇宙での戦い、宇宙船 ― 
こうしたトピックはデータ上では、
リアリズムを感じさせるものにくらべて
成功への道ははるかに険しくなる。


山や谷がたくさんあればあるほど、
登場人物も読者も感情のジェットコースターを
味わうことになる。
傾斜がきついところは感情が大きく振れる。
こうした動きがあれば、レビューには
「ページターナー」「はらはらする」
「心をわしづかみにされた」「癖になる」
といった言葉が並ぶことになる。


笑みを浮かべながら読む程度の控えめな場面から、
心をわしづかみにされる場面へ移行する最初の境目は、
グラフのなかで険しい山か深い谷となってあらわれる。
それがあなたの小説の「つかみ」だ。
それがなければ、あなたの書いた小説は
最初の数章で放り投げられるだろう。


ひとつの答えは、これから見ていくように文体にある。


わたしたちが文体のアルゴリズムで探しているのは、
みんなが好む皮肉を含んだ表現や、
古いものを新しく表現しているのを見て感じる衝撃ではなく、
どの作家が書いた文章にもかならず含まれる、
一見つまらないものだ。
しかし、皮肉にもそれは、
すばらしい比喩の有無よりもずっと正確に、
売れる作家と売れない作家を区別する。


長さ、句読点、簡素さに注目してほしい。
誰かがわたしたちに話しかけていて、
それがリアルに感じられる。
そこにはある種の力がある。


文脈を考えれば、こういう小さな差異は重要な情報となる。
読者にこの小説をどう読んでもらいたいかという
著者の思いがこういうところに見え隠れするからだ。
「ミセス」と表現することで、ウルフはほかの作家と同様に、
女性と男性の関係に疑問を呈している。


最高のオープニングとは、
純文学だろうが娯楽小説だろうが関係なく、
300ページの物語がはらむ対立のすべてを
20ワード以下の一文に盛り込んだものだ。


売れる本の何たるかを熟知しているキングは、
読者をいきなり人間同士の対立に放りこむ。
冒頭のたった6語で、
いがみ合うふたりの登場が予想されるのだ。


もっともよく使われる単語や句読点を
491個チェックしただけで、
コンピューターは70パーセントの確率で
売れる本と売れない本を正確に区別したのである。


not を短くしたn'tのようにインフォーマルな縮約形は、
一般にベストセラーのほうに多く見られる。
高校の授業だったら先生が眉をひそめるような
文字の省略も、信頼できる本物の声に近づける効果がある。


そのとおり。普通の人々の日常の言葉を使うべきだ


売れる小説は、よけいな言葉を含まずに、
より短く簡潔な文で成りたっているということだ。


強いキャラクターには行為主体性がある。
パワーがあり、動機があり、推進力がある。


優れた作家はキャラクターをつくりあげるとき、
道具や技術を巧みに使う。
描写を重視するのはその一例だ。


そのキャラクターがどういう人物なのか、
読者が判断するための手がかりは
外見、性別、人種などたくさんある。
しかし、その人物の行動を見るまでは
その人を本当にわかったことにはならない。


ベストセラーの主人公は男女問わず、
かならず何かを必要(need)としていて、
それを表明している。
かならず何かをほしがって(want)いて、
読者は主人公が求めているものを知る。


ベストセラーの世界では、
登場人物は自らの行為主体性を自覚し、
コントロールし、表現する。
使われる動詞は迷いがなく、自身が伴っている。


彼らは自分をよくわかっている。
自分自身を好きであるとは限らないが、
自分をしっかり持っている。


ヒットしない小説のキャラクターの感情は
受動的に表現される傾向がある。


キャラクターが話すときは文脈で読めるように
するべきであって、
派手な動詞でむやみに飾りたてる必要はない。


あらゆるベストセラーの登場人物は
何らかの浄化に向けて突きすすむが、
新しいヒロインも同じである。


コンピュータが示したのは、3つか4つの中心的なテーマが
全体の30パーセントを占める本が売れるということだった。


三幕構成で均整のとれたプロットラインが
読者をひきつけること、
感情の起伏を綿密に計算して書くことが
世界的なヒットにつながるということがわかった。


ベストセラーに限っていえば、日常で使われる言葉を
理解することが必要不可欠だということがわかった。


まずいキャラクターはまずいプロットラインを生む。
まずいテーマはキャラクターの動きを制限する。


むしろ、世の中にはごく少数の物語しかなくて、
それがときに大胆な演出を加えられながら
何度も繰り返し語られている、
という昔から言われていることのほうが
真実なのではないかと思うようになった。


これまでもそうだったように、
これからも読者は「新しいもの」に
驚かされるのだろうが、モデルはだまされない。




engineer_takafumi at 23:57│Comments(0)★一般書の書評 | ⇒ ビジネスその他

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