2017年06月24日

ソーシャル物理学

本日はアレックス・ペントランド氏の
ソーシャル物理学
です。
ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学

本書は大量の実社会データ
いわゆる「ビッグデータ」を利用し、
人間や社会の行動を解析して、制御する方法を見つける
「社会物理学」について述べられたものです。

著者はビッグデータ研究の世界的第一人者で
10以上のビッグデータ関連の会社を作った
起業家でもあります。

起業家であるからか、
主に組織の生産性をいかにして上げるか
という問題に大きなページが割かれています。

これは、会社員にとっては非常に興味のあるテーマで、
休憩時間を変えただけで劇的に生産性が上がった事例、
席替えだけで職場の問題を解決した事例、等を通して、
人のつながりをコントロールすることの
重要性を深く認識しました。


個人的には、
会話などの積極的な交流はもちろん、
話が聞こえてくるだけ、近くにいるだけといった、
受動的な交流でも、人は大きな影響を受ける
という部分が印象的でした。


ビッグデータがどんな風に活用されているのか
興味がある人におすすめの一冊です。
データで解析できることと、
その限界が見えてくることでしょう。




想像力とは、物事を結びつける力にすぎません。
(中略)
クリエイティブな人々は、自らの経験をつなげ合わせ、
新しいものを合成するのです。


「群衆の英知」は完全な孤立状態と、
ソーシャルメディアがエコーチェンバーとなって
生まれる集団行動という両極端の間に発生するようだ。


スターはネットワーク内の人物とより強い関係を結んでおり、
彼らから迅速かつ有益な反応を得ることができるのだ。


平均的な人物は、世界を自分の仕事の観点からしか
見ようとせず、ずっと同じ観点で考えてしまう。
一方スターはと言うと、広範囲な立場の人々を
ネットワークに含めており、
自分以外にも顧客やライバル、マネージャーの視点から
物事を考えることができる。


社会的学習が意思決定を改善するのは、そこに参加する個人が
それぞれ異なる意見を持つ場合のみだからである。
したがって、外部の情報源(雑誌やテレビ、ラジオなど)が
伝える情報が過度に画一的になると、
集団思考の危険性が現実のものとなる。


他人の行動がたまたま目に入ったり、
あるいは他人の行動に関する話が耳に入ってきたりするだけで、
アイデアの流れが発生し得るのだ。


単に直接的な交流の回数だけが影響するのではない
という点に注意が必要だ。
会話などの直接的交流だけでなく、
たまたま居合わせた人物の行動を目にするといった
間接的交流を含めて、他人の意見や姿勢に
どれだけ接したかが結果を左右したのである。


誰かが努力して優れた行動を見出したのであれば、
その行動をコピーしてしまう方が、
自分で最初から考え直すよりもずっと簡単である。


人々が自分の接触する行動を変えるために、
環境そのものを変えるという発見も重要である。


経済学者たちは、限定合理性という概念を
採用するようになった。
これは人間には偏見や認知上の限界があり、
完璧な合理性を実現することを妨げているという考え方だ。
しかし人間が社会的交流に依存しているという状況は、
偏見や認知上の限界とはまた別物である。


人類が生きのび、繁栄してこられたのは
個人が持つ合理性のおかげかもしれないが、
少なくともそれと同じだけの貢献を、
社会的学習と社会的影響も果たしてきたのである。


私たちは、個人としての人間に注目し、
その行動を変えようとするのではなく、
人々のつながりのあり方を変えることを
重視するのである。


管理職の人々が一般的に利用するソーシャルな
インセンティブ(「今月の優秀社員」など)は、
たいてい現実の人間関係と無関係に設定されるので、
嘘っぽく感じられるものになってしまう。


集団的知性は、個々の構成員が持つ知性とはほとんど関係ない。
個人の能力よりも優れた、集団で問題を解決するという能力は、
個人の間のつながりから生まれる。


生産性を左右する最も重要な要素は、
従業員が交流に費やした時間の合計と、
エンゲージメントのレベル(職場の輪に皆が参加しているか)
であることが判明した。


休憩時間に従業員同士が話をするようになることで、
個々のチーム内で行われる交流の量が増え、
従業員のエンゲージメントも高まる。
その結果AHTは急激に低下した
(従業員の生産性が急上昇したわけだ)。
つまり交流のパターンと、生産性の間に
強い関係があることが確認されたのである。


アイデアの流れにおける
「ブラックホール」も発見することができた。
(中略)
座席の配置を変更したところ、
それまで孤立状態だった顧客サービスチームを、
職場での輪に参加させることができた。
その結果、たったこれだけの対応で、
この部門が悩んできたチーム間調整の問題
(新たな広告キャンペーンが顧客サービスチームに
大きな負荷をかけてしまうなど)
が大幅に改善されたのである。


グループの壁を越えてアイデアを拡散させ、
組織内の全員が輪に加わるようにするのである。
つまりこうした社会的知性を持つカリスマ的仲介者は、
組織の成功に欠かせない人々というわけだ。


直接的な交流の頻度が、その交流を行った
2人の間の信頼度を正確に示す指標となっていた。
そして信頼度が上がると、アイデアの流れも増え、
したがって生産性の上昇にもつながる。


人々は自動的に、無意識のうちにお互いの行動を真似する。
無意識で行われるものの、この模倣行為は真似した人・
真似された人の双方に大きな影響を及ぼす。
お互いを重視し、信頼する度合いが上昇するのだ。


都市では、確かにイノベーションが起きているのだ。
また都市部では地方部よりも資源がより効率的に使われ、
より多くの特許や発明が生み出され、
しかも住民1人あたりの道路やサービスの量は少ない。
より多くの人々が一緒に暮らすことで、
より効率的にアイデアが生まれ、
生産性が上がるのはなぜなのだろうか?


家庭に入ってくるお金が多くなると、
人々は顔見知りの人々との接触(エンゲージメント)と
見知らぬ人々との接触(探求)のバランスを、
交流する人々の多様性を広げる方向へと変えるようになる。
つまり余裕のあるお金を、
探求行為を増やすために使うのだ。


アイデアの流れを求める公式を反対にすれば、
GDPを使って通勤距離の平均を求めることができる。
米国の都市で計算してみると、
平均距離は30マイル(約50キロメートル)で、
欧州の大都市では約18マイル(約30キロメートル)となる。
これらの数値はいずれも、政府が発表している
公式の統計値に極めて近い。


非常に大量のデータがあると、見せかけの相関関係が生じて
簡単に間違った方向に導かれてしまう


見えざる手を生み出すのは市場が持つ
魔法のようなメカニズムというよりも、
むしろ人々の間の交換ネットワークが持つ信頼や協力、
堅牢性といった性質であるという点だ。


人間を定量的に理解しようとするとき多くの人は、
その人がどんなことをいったか、
どんなことを書き込んだか、どんな仕事をしたか、などの
意味のある行動記録が重要だと考える。
ところが、ペントランド教授の発想は逆だった。
一見意味のない微妙な身体運動の大きさやタイミング、
たまたま誰の近くにいたか、たまたま何を目にしたか、
などに関連する「パンくず」のようなデータこそ
社会を理解する宝があると考えたのだ。







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