2017年07月29日

アートディレクションの「型」。

本日は
アートディレクションの「型」。
です。
アートディレクションの「型」。: デザインを伝わるものにする30のルール

本書はアートディレクターによって語られた、
デザインによって伝える方法です。

コピーライターの本はたくさんありますが、
アートディレクターの本は多くありません。

それは、基本的に言葉でかたるコピーライターに対し、
デザインやアートで語るアートディレクターの思考は
言語化しにくいということがあるでしょう。

しかし、本書はそれを乗り越え、
(恐らく、ほんのさわりだけだとは思いますが)
普通の人にもわかるように言語化されています。

例えば「視点を設計する」「ノイズを入れる」という
考え方はとても納得できるものでした。

もちろん、素人が簡単に
デザインやアートの本質を理解する、
というわけにはいきませんが、
その道筋のようなものが見えた一冊でした。

個人的には、
ほんの少しだけ見る人に考えさせ(「?」が浮かぶ)
そのあとで小さな発見が訪れる(「!」が浮かぶ)
という部分が特に印象に残りました。


Webなどでデザインやアートに
軽く携わる人にお勧めの一冊です。
アートディレクションの方向性が
おぼろげながら見えてくることでしょう。




モノ自体が変わったわけじゃない。
見る位置を変えただけだ。
しかし、それだけで、印象は一変するし、場合によっては、
まったくちがった意味を感じさせることもある。


このときは「神さまの視点」だったけれど、
アリの視点でも、犬の視点でも、宇宙からの視点でも
なんでもいい。
ふだんとはちがったアングルに立って、
まずは視点を変えて見つめなおしてみる。


よく「脳に汗をかかせる」というが、ほんの少しだけ、
見る人に考えさせ(「?」が浮かぶ)、
そのあとで小さな発見が訪れる(「!」が浮かぶ)ような、
"落差"のある表現は印象に残りやすい。
アートディレクターたちが、
ひと目でそれとわかる単純な商品の写真を使うのではなく、
工夫を凝らして一見関係のなさそうな表現をつくる
ねらいのひとつはここにある。


デザインの役割は、メッセージを説明することじゃない。
あくまで、伝えて、印象に残すことが大切だ。
それには、まずメッセージの本質をつかむ必要がある。


じつはシンプルなデザインをつくるのは簡単じゃない。
一見すると手数がかからないぶんだけ、
楽な仕事のように思えるが、
余計な部分を「捨てる」ということは、
肝心なものだけを「残す」ということでもある。
「残すもの」をまちがえれば、伝えたいことが伝わらない。


無造作にちぎったようなテープのデザインは、
トーンも決めてくれる。
広告だけでなく、パッケージやグッズなどの
トーンも管理しやすくなった。


かわいいものは、たしかに見た人をよろこばせるかもしれない。
でも、かわいいだけだと「引っかかり」がなく、
印象に残らないのだ。
そのために、あえてクセという「ノイズ」を入れるのである。


違和感をつくる、といってもいいかもしれないが、
だからこそ、第一線で活躍している
アートディレクターたちはみんな、
「ノイズ」をうまくつくろうと考える。
ポスターにキャッチコピーを入れるにしても、
わざと文字組みを不調和なものにしてみたり、
輪郭をあいまいにしたり、
手書きにしてラフ感を出したりと工夫する。


美しいデザインを見ると、多くの人は「美しい」と感じる。
でも、その美しさを説明できる人はそう多くはいない。
ましてや、再現できる人はまれだ。
なぜそうなのかというと、
デザインの知識がないことも、もちろん理由のひとつだろうが、
それ以前に、「細部を見きわめられていない」ことが大きい。


もし、素晴らしいと感じるデザインに出くわしたときには、
模写してみたり、自分なりに分析してみたり
することをおすすめする。


ただ見栄えのよさそうなものをつくるのではなく、
人の気持ちが動いたり、人と人のつながりが
生まれたりするものをつくる。
本当にデザインしなくてはいけないのは、
プロダクトや表現物ではなく、
それを使う人たちの行動であり、「つながり」なのだと思う。


すでにある情報を「絵に落とし込もう」
「うまくレイアウトしよう」とだけ考えはじめると、
その表現は急に説得力を失う。
情報以前のところにある「訴えるべきこと」、
つまりメッセージが置き去りになってしまうからだ。


タレントは決まっている。商品はこれ。
コンセプトはこう……と、
表現すべき要素が見えていると、
どうしてもつい「それをどう絵にしようか」
という発想になってしまう。
そうやって生まれた表現は、どこかぼんやりしているし、
見る人の心に強く訴えかけてくるようなものにはなりづらい。


記憶を手がかりに、置き場所やコンテクストを工夫したり、
ときには組み合わせたりしながら、
「いまなら新しい」と思えるものを見つける。


人間と同じく企業も、ついつい自分達のいいところを
前面に押し出したくなるものだし、
実績や功績をひけらかしたくもなる。
でも、それをそのまま伝えれば
受け入れてもらえるというわけじゃない。


本当に、相手に好印象をもってもらいたいなら、
受け手の気持ちを良く考えて、
相手が耳を傾けたくなるような語り方で語る必要があるのだ。


表現物に接するとき、人はだれしも自分たちのなかにある
日々の小さな物語にそれを重ね合わせようとするからだ。
人びとは感情や情緒の部分に共感するのである。


コミュニケーションをつくるときは、
とにかく相手になりきって、
相手の生活のなかに身を置いたつもりになって考えてみる。
そうやってその人の気持ちを代弁でいるくらいになれば、
きっと伝わる表現がつくれるはずだ。


「なんとなく感じていたけれど、言葉になっていなかった思い」
といってもいいのかもしれない。
あるいは、ふだんは意識していないが、
指摘されると「そうそう、そうなんだよと」と
思わずうなずいてしまうような思いや気持ち、
ともいえるかもしれない。
そんなものを見つけて、それを埋めるメッセージを投げかける。
そうすれば、人びとはより深いところで共感してくれる。



添える言葉ひとつで、ビジュアルの意味が決まることもある。


「さびない女」。
小泉さんの映像や写真の脇にこの言葉があれば、
見る人は、ずっと変わらず魅力的でありつづける
彼女の側面に注目してくれる。
あるいは、商品のすぐそばに、この言葉が表示されていれば、
抗酸化作用がある、アンチエイジングをテーマとしている
ということが、理屈ではなく、
とても情緒的に伝わるようにもなる。


紙の上だけで完結させることなく、
見る人たちの意識に起こる反応を計算しつくして
つくられた表現だった。


「裏切る」ためには、
過去のものを十分に学んでいなくてはいけない。


この広告の課題はこれだ。だから、こう伝える必要がある……。
そういう整理が頭のなかできちんとできていれば、
おのずと優先順位がはっきりする。
単なる感覚ではなく、
ロジックでデザインを見ることができるからだ。


悩むのは、手を動かすときじゃない。
頭のなかでいろんなことを整理している段階で
十分に悩んでおく。
そして、いざかたちにするときには、
迷ったりせずにサッと定着させる。
それができたとき、
デザインに鮮度という強さが加わるのだ。






engineer_takafumi at 23:18│Comments(0)★一般書の書評 | ⇒ クリエイティブ

コメントする

名前
URL
 
  絵文字