2017年08月20日

模倣の経営学 実践プログラム版

本日は井上達彦氏の
模倣の経営学 実践プログラム版
です。
模倣の経営学 実践プログラム版 NEW COMBINATIONS 模倣を創造に変えるイノベーションの王道


本書は競争戦略とビジネスモデルを専門とする
早稲田大学の教授である井上氏が
「模倣」をキーワードとして、
経営学についてまとめたものです。

ビジネスで「模倣」というと、
あまりポジティブなイメージは持たない人が多いでしょう。

しかし、この世の中、純粋な新しいものなど
ほとんど(いや、全く)ありません。

例えば、当時画期的といわれた
AppleのマッキントッシュやiPod、iPhone、
ソニーのウォークマンなどにも
お手本というものが存在しているのです。

ただ、それはいわゆるコピー製品の
ようなものではありません。
同業他社に限らない、複数のアイデアを抽象化させて、
「模倣」しているのです。

本書では、そのような高度な「模倣」のメカニズムと
実践方法について述べます。

本書では多くのページが事例紹介に裂かれており、
身近な製品も多く、納得しながら読み進められます。

また、経営学の教授ということで、
フレームがしっかりしており、
頭に入りやすい内容だと思います。


個人的には、
あの業界大手であるウォルマートやVISAが、
迅速な二番手としてスタートした
という部分が印象的でした。



経営者や企業の戦略室など、
経営に携わる方にお勧めの一冊です。
どのようにして模倣を創造につなげていくか
学ぶことができるでしょう。





独自な作家とは、誰をも模倣しない者ではなく、
誰にも模倣できない者である


『ピカソが来ると自分の作品を盗まれるからかなわない』
と言って、ピカソが来ると回りの画家が
作品を隠してしまった


世の中には、少なくとも2つのタイプの
創造的な模倣があると思っている。
その1つは、自らを高めるために、
遠い世界から意外な学びをするという模倣である。
(中略)
もう一つの創造的な模倣は、顧客の便益のために、
悪いお手本から良い学びをするという模倣である。


学術論文では評価の高い論文ほど、引用数が多い。
同じように、リンクが多いほど、
そのサイトは人気があるとみなせる。


業種を超えた共通の構造こそが、
模倣すべき「何か」なのである。


歌舞伎座を支えているのは、松竹である。
松竹のミッションは、
「日本文化の継承・発展」にある。
歌舞伎は、集客力は十分なのだが、
この伝統芸能を維持するコストや、
妥協のない舞台装置を整える投資が大きい。
それ単体としての採算を短期的な視点で考えているとは思えない。


松竹のミッションを正確にいうと
「日本文化を継承・発展させ、世界文化に貢献する。時代のニーズをとらえ、あらゆる世代に豊かで多様なコンテンツをお届けする」
となる。


各社の参入には驚くよりあきれてしまった。
宅配というのは、ネットワーク事業である。
しっかりしたネットワークなど持ってもいないのに参入するとは、
無知というか向こう見ずというか、
各社の度胸のよさにはびっくりしたものだ


良い模倣が垂直的な動きであるのに対して、
悪い模倣は水平的な横滑り


遠い世界からの模倣には3つのレベルがある。
それは、1,単純にそのまま持ち込む「再生産」、
2,状況に合わせて作り替える「変形」、
そして、3,新しい発想を得る「インスピレーション」、
である。
後になればなるほど、抽象化のレベルは高くなり、
抽象と具体の往復運動の振幅の度合いが大きくなる。


"あたりまえ"を疑う方法は2つのステップから成り立つ。
まず、最初のステップで、自分がどのような
色メガネを持っているかを意識しなければならない。
(中略)
無意識のうちの支配から逃れるために、まず、
自分が色メガネで見ていることを意識してほしい。


自分の色メガネの具体的な内容を書き出し、
外に追いやって欲しい。
色メガネをかけている自分、
先入観をもっている自分を意識しつつそれを外すわけだ。


フィールド調査では、異なる文化世界で、
自らの価値観では理解できないような物事と遭遇したとき、
拙速に判断をするのではなく、ひとまず括弧でくくって
判断を保留しようという態度が奨励されている。
意識的に"あたりまえ"を明確にし、
それを括弧でくくって横に置いておくことで、
先入観でものごとを判断したり評価したりしないようにできる。


観察のテキストによれば意識すべきこと、
すなわり観察するときのマインドセットは、
5つのポイントに集約できるという。
1 ありのままを受け止める。
2 判断しない。
3 すべてに疑問をもつ。
4 好奇心旺盛でいる。
5 パターンを見つける。


企業というのは成熟してくると、
「知の探索」を怠るようになる。
日々の利益を生み出すためには、
手元にある知を使い回したほうが手っ取り早いからだ。
このような活動は「知の探索」と対置され、
「知の深化」(exploitation)とよばれる。


誤解を恐れずに言えば、
明確な意図や目的は持つべきではない。
意図や目的が明確すぎるとそれに縛られてしまう。


「これを調べるためにここに行く」というのではなく、
遊び心を抱き、好奇心のおもむくままに、
何でも試してみるくらいの気持ちがあってもよい。


問題意識はしっかりと持っておくべきである。
問題意識なしには、
何を見ても引っかからないし気づきも得られない。


ネットワークのアクターは4つの種類に分けることができる。
1,カタリスト=触媒してくれる人
2,コネクター=つないでくれる人
3,イネーブラー=実現してくれる人
4,プロモーター=周知してくれる人


単純模倣でビジネスを立ち上げようとする場合は、
脈絡の共通性が決定的に重要である。


ユヌス氏は、グラミン銀行のアイデアを
どのようにして思いついたか尋ねられたとき、
「一般の銀行のやり方をよく見て、あらゆることを逆にしてみたんですよ」
と答えるという。
「実際、それは本当なのである」
と彼は強調する。


異業種の他社を反転させたとしても、
自社とまったく関係のないモデルができる可能性が高い。
それゆえ、原則として反転は、
同じ業種の他社について行わなければ意味がない。


社内のビジネスを模倣することには、
さまざまなメリットがある。
1つは、脈絡が似ているということである。
(中略)
もう1つのメリットは、情報の手に入れやすさである。


社内のモデリングには固有の難しさがあるからだ。
その1つは、人の感情というものである。
事業部の間で互いに競い合っていたり、責任者同士が、
過剰なライバル意識を持っている場合も少なくない。


たとえ、社内のモデルであったとしても、
トヨタから抽出したモデルだと言っています


内部の中心に近い人物が、自ら気づき、
自ら行動することができれば
自己否定のモデリングの成功の確率は上がる。


遠い過去の同業他社の中に、優れた教師がいるかもしれない。
反面教師もいるかもしれない。
とくに何十年に1度というような大きな危機に直面したときは、
そのビジネスの礎を築いた先代たちが
行ってきたことを参照するのは、
非常に価値があることに違いない。


3つの実験の順序と使い分けを意識する
基本的な順序は、1,思考実験
2,自然実験(事例研究)、3,社会実験(小規模実験)
という流れである。


我流はだめだ。生きている時間が少ないから。
先例から教訓を学ぶ。


KUMONの内部事情を知る元社員が立ち上げた事業でさえ、
なかなかうまくいかなかったそうだ。


業界を代表する企業が、模倣者であることは珍しくない。
ウォルマートやVISAも、今は業界大手であるが、
当初は迅速な二番手であった。
彼らは先駆者たち(総合量販店はコーベック、クレジットカード事業はダイナース)
が優位を確立する前に、
より洗練された形でビジネスの仕組みを作り上げたのである。


アートの世界では、平凡なアーティストは、
外から眺めるようにして他の作品を真似るが、
優れたアーティストは、
中に入っていく感覚で他の作品を盗むと言われる。


少数の悪人に対しては、最も重い犯罪を除き、
捕まえることもせず、閉じ込めることもせず、
除名することもせず、元の単位(組織)に留め、
その者の一切の政治資本をはく奪し、
その者を孤立させ、反面教師として利用する。


ネガティブな予測が「何をしてはいけないか」
という間接的な教訓しかもたらさないのに対して、
ポジティブな予測が「次に何をすればよいか」
という直接的な教訓をもたらすという点に注目している。
また、疑似体験の中心人物が自分であれば、
関心が高まりやすくなると考えられるので、
他人の疑似体験を学ぶときは、
当事者意識を持つことが重要であるということが
示唆されている。






engineer_takafumi at 20:41│Comments(0)★一般書の書評 | ⇒ 経営

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