2017年09月10日

アメリカを動かす『ホワイト・ワーキング・クラス』という人々

本日はジョーン・C・ウィリアムズ氏の
アメリカを動かす『ホワイト・ワーキング・クラス』という人々
です。
アメリカを動かす『ホワイト・ワーキング・クラス』という人々 世界に吹き荒れるポピュリズムを支える

本書は出版関係者の方よりご献本頂きました。
オトバンクの上田様、ありがとうございました。


本書は大統領選でトランプ氏を支持したという
ホワイト・ワーキング・クラスについての本です。

トランプ氏が当選した時に、
自分の周りの米国人はみんなヒラリー支持なのに
感覚と違う、と感じた日本人も多かったでしょう。

しかし、それも当たり前、日本人と交流している時点で
彼らはこの本でいう「エリート層」なのです。

トランプ氏に投票したのは、
アメリカ内陸部に住み、地元を深く愛する
ホワイト・ワーキング・クラスだったのです。

本書では彼らの生活や思考について解説して、
エリート層との対立軸を明らかにします。

この本から感じたことは、
ホワイト・ワーキング・クラスの人々も
それなりの収入で良識もあるのですが、
マイノリティの保護が過ぎることに
怒りを感じている、ということでした。

また、エリートとホワイト・ワーキング・クラスを
分けるのは、収入というより、
価値観であるということが良くわかりました。

日本では人種問題が少ないため
目立っていませんが、
都市と地方など、これからこのような対立軸が
生まれてくるかもしれないと感じました。


アメリカを相手に仕事をしている人にお勧めの一冊です。
アメリカ人についての理解が深まるでしょう。




アメリカの裕福な白人は、貧困層、有色人種、
性的少数者の生活に同情を示すようになる一方で、
ホワイト・ワーキング・クラスをばかにし、
無視するようになった。


最近のブルームバーグの記事によれば、
年収二万二〇〇〇ドルの遊園地従業員も
年収二〇万ドルの弁護士も、
自分を中流階級と呼ぶという。


予備選でトランプに投票した有権者の
所得の中央値は7万5000ドルで、
全国民の所得の中央値である
5万6000ドルよりはるかに多い、と。
しかし、「ワーキング・クラス」を富裕層でも
貧困層でもない中間層を指す言葉として使えば、
この所得は、ワーキング・クラスの
所得の中央値とほとんど変わらない。


階級というのはお金の問題だけではないからだ。
(中略)
毎日の行動を方向づけ、人生の意味を見出していく過程で
人々が作り上げる文化的伝統のようなものだ。


医療保険制度改革(オバマケア)を断行した。
だが大半のワーキング・クラスから見ればそれは、
貧困層を助けるために中間層に負担を強いる制度が
また一つ増えただけだった。


彼らには、ストレスだらけの
自分たちの生活しか目に入らない。
だからこそ、貧困層にばかり向けられる
助成や同情に憤りを覚える。
この憤りの背景には、ワーキング・クラスの生活の現実がある。


ワーキング・クラスにとって勤勉さとは、
自分を厳しく律し、「反抗的な態度」を取らない
(権威に従う)よう自分の気持ちを抑え、
好きでもない単調な仕事を40年間続けることだ。
一方、エリートにとって勤勉さとは、
自己実現のための手段である。


失業など、家計の問題について
全国のワーキング・クラスの人々から話を聞きましたが、
彼らは貧困層に比べ、政府からの給付を受けようとしません。


エリートは、ワーキング・クラスの人々は
エリートの一員になりたがっていると重いがちだが、
実際には必ずしもそうとは限らない。


なぜエリートは目新しいものを求め、
ワーキング・クラスは安定を求めるのか?
一つには、エリートにはそれだけの金銭的余裕があるからだ。


エリートの家庭は非エリートの家庭に比べ、
子供との会話量がはるかに多い。


ワーキング・クラスも、自分を見つめ直したり
自分の心の状態に関心を抱いたりしないわけではないが、
一般的には自分の『心』にあまり目を向けない


エリートは一般的に、親密なつき合いをする範囲は狭いが、
知人のネットワークとなるときわめて広い。


ワーキング・クラスには、この私生活と仕事上の戦略とが
入り混じった特有の生活形態が偽善的に見える。


ワーキング・クラスのネットワークが狭く深いのに対し、
専門職のネットワークは広く浅い。


引っ越せば、コミュニティよりも仕事を優先することになる。
ワーキング・クラスが仕事のある場所に引っ越さないのは、
コミュニティと深いつながりがあるからでもある。


コミュニティを大切にするこの傾向は、
コミュニティへの寄付額にはっきり表れている。
年収が10万ドル以上の世帯の寄付額が、
可処分所得の4.2パーセントなのに対し、
年収が5万〜7万5000ドルの世帯の寄付額は
それよりかなり多く、可処分所得の7.6パーセントに及ぶ。


アメリカ人のなかで大学の学位を取得しているのは
33パーセントだけだ。
アメリカ人の三分の二は大学の学位を持っていない。


入学者選抜制の大学のじつに57パーセントが
アメリカ中東部かカリフォルニア州にある。


自分の才能や知性を認めることは大きな罪、
『自分にばかりこだわっている』ことの証なんです


大学では、「下層白人」や「貧乏人」をテーマに
語り合うパーティが開かれることも珍しくない。
一部の集団を誹謗中傷するようなテーマは
禁じられているにもかかわらずである。


トランプはこの点をよく知っていた。
ホワイト・ワーキング・クラスは黒人やヒスパニックの
労働者と共通点が多いのに、
あえて人種攻撃をして両者を対立させた


まず、基本的には良識的ではあるものの
「政治的公正」にうんざりしている人々と
悪質な白人至上主義者とを分離させることを目標にすべきだ。


ニューヨーク・タイムズの記者だった
アン・クリッテンデンは、育児のために仕事を辞めたあと、
こう尋ねられたという。
「以前アン・クリッテンデンだった方ですよね?」


専門職階級の女性はワーキング・クラスの女性に
共感できないだろう。
だが女性は、セクシャル・ハラスメントといった
階級に関係のない共通の経験を持っている。


平均的に見ると、ワーキング・クラスの男性が
男女平等主義の女性と結婚する割合は
エリートの男性より低い。
だが、ワーキング・クラスの男性が
育児に参加する時間は、エリートの男性より多い。


じつはアメリカ国内から製造業の雇用が消えた本当の理由は、
製造工程の自動化や生産性の向上といった
技術の進歩なのである。


民主党、共和党を問わず、政府が『本物』の職業訓練や
雇用促進プログラムを作ったのを見たことがない。
役割を担うはずの政府機関がやっているのは、
履歴書の書き方やネットでの仕事の検索方法の指導など、
極めて表面的な対策だけだ


アメリカ人の大半が、自分たちが政府から享受している
利益や補助についてあまりにも無知である


ホワイト・ワーキング・クラスが、
政府は貧困層ばかり優遇すると思い込んでいる原因の一つは、
中間層への補助が見えづらいことにある。
(中略)
具体的に言えば、住宅ローン金利控除、学生ローン、
退職金への減税、医療費補助などである。


自分達の医療を支えている「医療費負担適正化法(ACA)」と
「オバマケア」が同じものであることに、
彼らは気づいていないのである。


今のワーキング・クラスはアメリカの歴史上初めて、
生涯・経済的に下降し続けている世代であり、
その経済状態は一回り上の世代と比べても
確実に悪化している。


中絶擁護派の女性の大半は大卒で、
その収入は女性の上位10パーセントに入ることが
多いと指摘されている。
一方、中絶反対派の女性は、
失業中あるいは低収入である割合が高く、
配偶者はブルーカラーや自営業が多かった。


ほとんどのワーキング・クラスはいまだに、
中絶賛成論は自己啓発や自己実現という概念に
取りつかれたエリートたちの仕事至上主義の産物であり、
自分達が大切にする家族的価値観に対する
冒涜だと考えている。


民主党はホワイト・ワーキング・クラスを
無視すればいいという意見もあるかもしれない。
支持層である専門職エリートの白人と
マイノリティを合わせればそれだけで
選挙に勝てるのではないか、と。
しかしこの戦略は2016年の選挙で見事に失敗した。


トランプはしばしば彼らのことを
「忘れられた人びと(forgotten people)」と呼ぶが、
ワシントン(=既成政治)に失望していた有権者を
再び政治回路の中に引き戻した点は、ある意味、
米国の民主主義が健全に機能していることの証左とも言える。


マイノリティがトランプ大統領の人形を
叩いても何も言われないが、
白人がバラク・オバマ大統領の人形を叩くと
「差別主義者」と批判される。






engineer_takafumi at 23:51│Comments(0)★一般書の書評 | ⇒ ビジネスその他

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