2017年11月05日

宇宙エレベーター

本日は佐藤実 氏の
宇宙エレベーター
です。
宇宙エレベーター その実現性を探る(祥伝社新書)

エレベーターで宇宙に行く。
小説やマンガの話としか思えないかもしれません。

しかし、これはSFでも、夢物語でもありません。
検証してみると、科学的に可能性があることが示されたのです。

本書はこの宇宙エレベーターを技術的な側面、
法律や国際協力などの問題、などからまとめた一冊です。

特にテクノロジーの部分は良くできていて、
ある程度は網羅性もあり、
これだけ検証できているのであれば、
本当に実現可能なのかも、と思わされました。

また、宇宙エレベーターに限らず、
宇宙開発の歴史や意義も学ぶことができました。

宇宙開発関係者のインタビューも面白かったです。


個人的には、
ケーブル長を10万キロに設定した背景が印象的でした。


新規テクノロジーのビジネスに関わる人には
一読をお勧めしたい一冊です。
宇宙ビジネスの発想を広げるきっかけになるでしょう。




宇宙に行くにはロケットに頼るしかないことが、
ガガーリンから50年以上の経つというのに
宇宙の経験者が未だに600人に満たない最大の理由です。


地表から宇宙に延びるケーブルは、
宇宙エレベータの要です。
ケーブルは地表から静止軌道を超え、
さらにその2倍近い長さまで延びています。
地球の半径の15倍以上、
月までの距離の4分の1に達します。


宇宙エレベーターが未だにつくられていない最大の理由は、
ケーブルに使える材料がないことです。


ケーブルには大きな張力が働くので、
引っ張りに対して強くなければなりませんし、
ケーブルは自分自身の重さを支える必要があるので、
軽くしなければなりません。


たとえば、吊り橋のワイヤーに使われているピアノ線を、
高度3万6000キロメートルの静止軌道から
地球に向かって垂らしていくと、
だいたい7000キロメートル垂らしたところで、
自重に耐えられず、切れてしまいます。


カーボンナノチューブを静止軌道から垂らしても、
地表に届くまでは切れません。


クライマーにもケーブル上を動くための
運動エネルギーは必要ですが、
ロケットに比べると桁違いに少なくてすみます。
ケーブル上を動く速さが
時速200キロメートルとすると秒速60メートル。
秒速数キロメートルのロケットに比べて100分の1以下ですから、
エネルギーでは1万分の1以下です。


クライマーにエネルギーを送るために、電磁波を使います。
電磁波などを使って非接触で電力を送る技術を
「無線電力伝送」と言います。


地表にある物体を宇宙空間に上げるには、
物体の位置エネルギーを増やさなければなりませんでした。
逆に、宇宙空間になる物体を地表に下ろすには、
その膨大な位置エネルギーを、
他のエネルギーに変えなければなりません。
隕石の落下や宇宙船の大気圏再突入でも、
位置エネルギーを熱に変えています。


宇宙空間で熱を捨てるのは、地上ほど簡単ではありません。
真空である宇宙空間には空気がないので、
対流によって熱を捨てることができないからです。


宇宙エレベーターに必要な技術は、
宇宙エレベーターに使われるものだけではありません。
例えば、カーボンナノチューブは軽く、通電性が高いため、
送電線も銅線からカーボンナノチューブに
すべて置き換わることも考えられます。
そうなれば、社会的なインパクトは相当強いでしょう。


試算では、ロケットに比べて宇宙エレベーターの輸送コストは
100分の1になると言われています。


宇宙太陽光発電衛星を宇宙エレベータでつくる。
宇宙エレベーターで安く運べば、
宇宙太陽光発電のネックと言われる輸送費が解決できます。


放射性廃棄物の処理が可能なら、
その費用は約3兆円と言われてます。
宇宙エレベーターの建設費も放射性廃棄物の処理費用で賄えます。


3兆円はものすごい金額のように思えますが、
今JR東海が進めているリニアモーターカーの建設費は
約9兆円と言われています。


宇宙エレベーターが一基できたら、
ロケットは「もはや必要ない」となると、
現在ロケットビジネスにかかわっている人たちの
協力は得られにくいでしょう。
宇宙エレベーターを建設するには、
最初にロケットで打ち上げる必要があるわけですから、
その兼ね合いをうまくつけないと、
最初の段階からつまずきます。


スペースシャトルは、国際宇宙ステーションの
組み立てが終わった2011年に役割を終えました。
合計135回の打ち上げで、5機中2機を失い、
14人の宇宙飛行士が亡くなる、という結果でした。


実は、人工衛星打ち上げ能力を持つ国のなかで、
日本だけが明確に核兵器を持たず、技術開発もしていません。


アメリカにとって、地表に近い宇宙空間は
すでに税金を注ぎ込む場ではないようです。
そこは利益を得る場として民間企業に任せ、
税金はさらに遠くの月や火星、小惑星などに
使おうとしているように見えます。







engineer_takafumi at 07:02│Comments(0)★理系本の書評 | ⇒ 地学・環境・宇宙

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