2017年12月22日

ゲノム解析は「私」の世界をどう変えるのか?

本日は高橋 祥子 氏の
ゲノム解析は「私」の世界をどう変えるのか?
です。
ゲノム解析は「私」の世界をどう変えるのか? 生命科学のテクノロジーによって生まれうる未来


本書は第一線の研究者(東大博士)であり、
注目の若手起業家でもある高橋祥子氏が
「生命科学で今何が起きているか?」を語る一冊です。


生命科学は猛烈に進化しています。
13年前にはヒト一人のゲノムを解析するのに
3500億円と13年かかっていたののが、
今では10万円と1年で終わるらしいです。

この変化が、研究の方法そのものを変え、
さらに発展を続けています。

今は夢物語と思っていることが、
意外に早く実現できてしまうのではないか、
という期待を感じさせられました。


ただ、問題もあります。
特に生命科学には、いくらテクノロジーが発展しても、
解決できない問題もあるのです。

最後の50ページほどは、テクノロジーの発展と、
心理的、法規的な社会の受け入れ体制について
語っています。

テクノロジーはどんどん発展しますが、
人間はそんなに早く前に進めないものなのですね。

著者も色々たたかれているのでしょう。
しかし、研究者でありながら事業を立ち上げた才能を
ぜひ、この国のために役立ててもらいたいものです。

そのために自分が何ができるか、考えてみます。


個人的には、「遺伝子」と「ゲノム」の違いが
わかったことが収穫でした。
似ているようで、微妙に意味が違うのです。


生命科学を志す高校生に読んでもらいたい一冊です。
急激に発展するテクノロジーの中で、
自分の夢をふくらませることができるでしょう。




ヒトノゲム計画とは、
ヒトのゲノムの全塩基配列(全ゲノム)を
明らかにする世界規模のプロジェクトです。
当時のヒトノゲムは、まるで暗号かのように
わからないものだったため、
ゲノムを「解読する」と表現されていました。
このプロジェクトは1990年から始まり、2003年に終了しました。


ゲノムだけわかっても何もわからない


ヒトノゲム計画でわかったヒトの遺伝子の総数は
約2万2000種類。
マウスとたいして変わらないのです。
また、遺伝子の総数がわかっても、
その遺伝子が何をしているのかは、
個別に研究しないとわかりません。


取りあえず丸ごと調べて、
その中から健康な人と病気の人との間で共通する成分、
異なる成分を探す研究手法が主流となりつつあります。


遺伝子を変えるテクノロジーとして
「遺伝子組み換え」が以前からありました。
しかし、遺伝子組み換えでは、
ゲノムのどこに遺伝子が組み込まれるのか指示できず、
効率の悪さも課題となっていました。


統合失調症に関わる遺伝子の候補として、
属人的な仮説ベースで挙げられたものが、
データドリブンで出てきたものよりも
確かだということは全くない、ということです。


これまでは、データを取得すること自体に
時間と費用がかかるため、どんなデータを取得するべきか、
仮説を構築して厳選する必要がありました。
ところが、データの取得が容易になれば、これまで以上に、
いつどのようなデータをどこから取得して、
どう価値化していくかという研究デザインが
重要視されるようになります。


研究費が得られないということは、
誰も研究していないことの裏返しでもあります。


イルミナ社のフラッグシップ機器は、
1人分のゲノムを1000ドル(約10万円)以下で解読します。
さらに、1年間で1万8000人のゲノムを解読できます。


最近はシェアを前提としたデータ収集が
行われることが増えてきました。


遺伝子は、英語でgeneといいます。
geneに、「すべての、全体の」という意味の接尾語 -omeを
付けたものがgenome(ゲノム)です。


1990年代のヒトノゲム計画では、
1人のゲノムを取得するのに3500億円と13年かかっていたのに対して、
現在では1年間で1万8000人分を取得できます。


大学で研究しているときは、大学の倫理規定や、
いわゆる研究倫理を守っていれば、
いくらでも真理を追求できていました。
現在の常識にとらわれないことは、
ある意味では研究の本質だからです。
ところが、テクノロジーで実現可能な、
理知的で確かなことを社会で使おうとするときには、
使う人の「常識」はどうか、
ということを考えることが必要であると感じました。
人々や社会がどういう気持ちをもつかという曖昧な評価が
ボトルネックになる、ということを体感したのです。






engineer_takafumi at 22:44│Comments(0) ★理系本の書評 | ⇒ 生物・化学

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