2018年03月01日

欲望する「ことば」

本日は嶋浩一郎氏、松井剛氏の
欲望する「ことば」
です。
欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング (集英社新書)

例えば「女子力」という言葉があります。

この女子力という言葉が生まれる前に、
女子力を気にする女性は存在したでしょうか?

女子力だけではありません。
加齢臭、イクメン、草食男子、おひとりさま、など
言葉が生まれて、人は始めてその存在に気づくのです。

このような言葉を著者らは「社会記号」と呼びます。

本書はこんな社会記号について述べたものです。

例えば、社会記号をコントロールできれば、
マーケティングに極めて有効でしょう。

しかし、社会記号は仕掛けられるものではありません。
もともと世の中に存在することを
表現するだけのものなのです。

そんな社会記号の本質を教えてくれる一冊です。


個人的には、
人の本音は「文句」に現れる、
という部分が特に印象に残りました。


コピーや宣伝文を書く人にお勧めの一冊です。
強力な社会記号をどのように使っていくか
そのヒントを得られるでしょう。




加齢臭や女子力ということばがなかった時代には、
体臭を気にする男性も、
自分磨きを意識する女性も決して多くはありませんでした。
しかし、社会記号として概念がつくられた途端、
男性用の体臭ケア用品が売れ、女性の魅力を磨く講座に
人が集まるようになりました。


モノを売るにはことばもまた売らなくてはならない。
もっともそれ以上でなければならない。
われわれは人生を売らなくてはならないのだ


「女子力」を「アップ」されるというのは、
「男性にモテる」ということなど気にせず、
むしろ自分がなりた「女子」を目指すという
意味合いが強そうです。


雑誌はターゲットが絞られているので、
その読者層に響くことばであれば、
普通の人が分からないような表現でも積極的に使っていきます。
そういう雑誌のメディアとしての独特なポジションが、
多くの社会記号を輩出する場として機能してきた理由ではないか


あなたが何か商品やサービス、
あるいはコンテンツの企画をするときに、
単にユーザーからヒアリングするだけでは、
インサイトを発見することは難しいでしょう。
なにしろ人間は自分の欲望を言語化できていないわけですから。


人の本音は「文句」に現れる


同じような文句を言う人が10人いたら、
そこにはビジネスチャンスがあると考えていいでしょう。


本来は深刻でない問題にもかかわらず、
儲けるために対象を脅威として描き出しているのではないか?
そういう疑念を消費者に抱かせると、
それを解決しようと思わないどころか、
その企業に対する不信感も醸成してしまいます。


メディアは報道の構成要素として、
客観的で分かりやすい事例が欲しいのです。


社会記号が世の中に広まれば広まるほど、
生活者の頭の中にも、社会記号を代表する
「定番商品」のイメージが共有されていきます。


ことばには個別具体的なことを抽象化して
普遍的なものに変えてしまう力があります。
感覚そのもの(例えば疲労)は
自分の経験を個人的なものに限定するものの、
ことば(例えば「癒されたい」という表現)は
現実を概念的に処理し、
それゆえ自らの感覚を迂回することを可能にしているのです。


「彼は草食男子だから」「彼女、肉食だから」
「君はリア充だね」「あの人、美魔女だよね」と、
人はとにかく他人をラベリングしたがります。
これは人の情報処理能力には限界があるので、
とりあえずラベリングをすることでアタマを使わずに
済ませようとしているのです。
これを「思考の節約」といいます。


「婚活」という社会記号ができたことで、
本人も引け目を感じずに済むようになり、
「婚活しています」と言われたほうも、
特に違和感を持たず納得できるようになりました。
動機のボキャブラリーのポジティブな側面です。


呼称という社会記号は、他人をラベリングして
思考の節約をしたいという私たちの気持ちに応えるものである。


行為という社会記号は、なぜそれをするのかという
説明をする際にみんなが納得しやすい理由、
すなわち動機のボキャブラリーが欲しいという
私たちの気持ちに応えるものである。


脅威という社会記号は、何がスティグマなのか、
またスティグマ管理のための手段が何なのかを
ハッキリさせたいという
私たちの気持ちに応えるものである。


メディアは、本当にそういう現象が存在するのかは
企業に教えてもらうものではなく、
メディア自身で発見したいという
メンタリティを持っているのです。


社会記号は誰かが仕掛けてコントロールできるものではない


「HOT PEPPER」側の仕掛け人の方がおっしゃっていたのは、
「冠を付けるにはファクトがなければダメだ」と。
「居酒屋で女子会プラン」だって、
もともと「女性同士の居酒屋利用が増えているな」
という実感があったからブームになったわけです。
つまり、消費者ニーズがあるところにことばをつくると、
社会記号が生まれるのではないかと思ったのです。


同じ現象を三、四回続けて目撃したら、それは例外ではなく、
何かの予兆なのだと考えるようにしています。


二分法は単純化するだけでなく、
「あなたは賛成、反対のどっちですか?」と
二者択一を迫るところがあります。


大抵の広報パーソンがメディアの露出を
獲得しようとしてくじけるのは、
「今こういう新しいことをやろうとしているんですよ」と言うと、
メディアから「それは分かったけど、他にも横並び事例はないの?」
と聞かれることです。


クラフトビールの代表選手であるヤッホーブルーイングが
売上を伸ばしていますが、
それはクラフトビール業界全体の盛り上がりと
セットでなければ実現できなかったはずなのです。


社会記号というのは特定のブランドや商品を超えた
一般名称なのですよね。
しかも、人は一般名称でないと流行っているという保証がないから、
なかなか動かない。
確かにそれは、すごくサラリーマン的な感覚です。


タイトルをイチからつくった新書は売れなかった


『非属の才能』という
「精神的に何かに群れるということをしない」
ことの重要さを訴える新書で、この「非属」という造語が、
読者に伝わりづらかったかもしれないと
振り返っていらっしゃったのです。
一方で、『下流社会』のように、すでにあることば
(上流、中流)に乗っかったタイトルは、
新しい造語であっても広まりやすいともおっしゃっていた。


優れた社会記号は最終的には風俗店の名前になる





engineer_takafumi at 22:29│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ 書き方・話し方・言語

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