2018年02月16日

ストーリーとしての競争戦略

本日は楠木 建 氏の
ストーリーとしての競争戦略
です。
ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)

ストーリーとしての競争戦略、
わかったようなわからないようなタイトルですが、
戦略にストーリーがあるかどうかは
簡単に見抜くことができます。

それは、その話が面白いか、ということです。
話している本人がワクワクしていないような話は
そもそも戦略としても三流だというわけです。


そして著者はこの本自体がストーリーだ、といいます。
500ページある大書ですが、ストーリーを語るためには
どうしても、この程度の分量は必要だそうです。

しかし、さすが「ストーリー」一度読み始めると、
これほどのボリュームでも最後まで読みきってしまいます。

小説のような面白さ。
それもストーリーとしての競争戦略の要件なのです。


個人的には、
「一見して非合理」の考え方が印象的でした。
この言葉だけで本一冊の価値があると感じました。


経営戦略に関わる人には必読の一冊でしょう。
先の見えない時代の戦略の立て方の基礎が
ここに書かれています。



当事者がそもそも面白がっていない。
これがストーリーになっていない「戦略」に
共通の特徴です。


野生の嗅覚が成功の八割にしても、
二割の理屈を突き詰めている人は、
本当のところ何が「理屈じゃない」のか、
野生の嗅覚の意味合いを深いレベルで理解しています。


「違いをつくって、つなげる」、
一言でいうとこれが戦略の本質です。


戦略ストーリーの筋の良さは、
他の要素のつながりの文脈でしか決まりません。


情報(information)の豊かさは注意(attention)の貧困をもたらす


将来はしょせん不確実だけれども、
われわれはこの道筋で進んでいこうという明確な意思、
これが戦略ストーリーです。


普通の業界とは違って、意思決定者と使用者と支払者、
この三者が分かれているということが買い手の交渉力を小さくし、
製薬業界を儲かりやすくしているわけです。


実際の仕事の局面では、目標をきちんと立てていると、
あたかも戦略を立てているかのような
気になってくるということがよくあります。


気合と根性に寄りかかったリーダーからは、
戦略は出てきません。


マブチはある種類の小型モーターに特化し、
それ以外のタイプのモーターには手を出していません。
標準化にこだわるということは、
カスタマイズした製品は手がけないということです。


厳密にいえば、「低価格戦略」という言葉はありえません。
それは「高コスト戦略」という言葉が
非常に奇妙に聞こえるのと同じ理由です。


売れそうになっても、我慢して売らない。
積極的に注文を断る。絶対に成長をめざさない。
これができて初めてニッチシュートが成り立ちます。


初めから完成されたストーリーがあったわけではないけれども、
個別の構成要素をバラバラに扱わずに、
ストーリーとして仕立てていこうという意識と意図が
戦略構築のプロセスに一貫して流れています。


ストーリーの一貫性の正体は、
「何を」「いつ」「どのように」やるのかということよりも、
「なぜ」打ち手が縦横につながるのかという論理にあります。


ある打ち手がうまくいくかどうか、良いか悪いかは、
ストーリー全体の文脈でしか評価できません。


本質的な顧客価値を定義するとは、
「本当のところ、誰に何を売っているのか」
という問いに答えることです。


コンセプトを「言葉遊び」と軽く見てはいけません。
コンセプトは広告の惹句ではないのです。
「画像」と「文書」、わずか二文字の違いですが、
ゼロックスはデジタル化でリコーの後塵を拝することになりました。


ストーリーを動かす原動力は因果論理にあります。
「誰に」だけ、「何を」だけでは静止画になってしまい、
肝心の「なぜ」についての思考が甘くなりがちです。


コンセプトから「誰に」と「何を」が抜け落ちて、
「どのように」ばかりが前面に出てくると、
コンセプト不全に陥るのが常です。


本質的な顧客価値を突き詰めるとは、
「誰が、なぜ喜ぶのか」をリアルにイメージするということです。


ノースウエスト航空やユナイテッド航空と競争するのではなく、
バスや車との選択で、サウスウエストを選んでもらおう
というのがケレハーさんの競争に対する基本的な構えでした。


アマゾンもまた、やることなすことが
いちいちコンセプトに忠実な企業です。
アマゾンのコンセプトは、モノを売るのではなく、
「人々の購買決断を助ける」ことにありました。
このコンセプトに基づいて、アマゾンは
その顧客が過去に同じものを買ったかどうかを
知らせるサービスを始めました。


誰に嫌われるかを意図する。
これが筋の良いコンセプトを描くための
最も効果的な入口であるというのが私の考えです。


「カーブスからは三つのMを排除した」と言っています。
一つは鏡(mirror)、一つは化粧(make-up)、
もう一つは男性(men)です。


「第三の場所」を維持するために、
スターバックスは忙しい人々に
あえて嫌われようとしているわけです。


任天堂の数々のゲームソフトのヒット作の
開発をリードした宮本茂さんは、
ゲームのコンセプトをつくるときに
ユーザーやユーザーに近いところにいる営業部門からの
フィードバックを聞いてはいけないと言っています。


ストーリーから切り離してそれだけを見ると、
競合他社には「非合理」で
「やるべきではないこと」のように見える。
しかし、ストーリー全体の中に位置づければ、
強力な合理性の源泉になる。


スターバックスの戦略ストーリーには、
それほどの負担を覚悟しても直営方式でなければならない
という「切実な理由」があるはずなのです。


「わざと待たせる」というパスは第三の場所の維持にとって
大切な意味を持っているのですが、
こんなことをフランチャイズ店のオーナーに期待しても、
それは無理というものです。


シュルツさんは直営方式がそれ自体では
「一見して非合理」であるということを十分に知りながら、
ストーリーの中核に置いていたわけです。


「一見して非合理」というクリティカル・コアは
全く違った論理を意図しています。
それは「動機の不在」です。


「まねできなかった」のではなく、
そもそも「まねしようと思わなかった」
というのがポイントです。


デルは一見して非合理な「自社工場での組立て」
にこだわりました。
なぜならば、デルの意図する戦略ストーリーを
十全に動かすためには、組立工程を
自前で持つことが不可欠だという認識があったからです。


サウスウエストのキラーパスがあからさまに非合理なので、
「合理的」に考える大手航空会社は、
正面からまねする動機を持ちきれなかったのだと思います。


皮肉なことに、構成要素が過剰になると、
ますます全体として収まりが悪くなるという
悪循環が始まります。


戦略ストーリーを模倣しつつも、
一見して非合理なキラーパスについては
意図的に模倣を避けるという競合他社の行動が
予期せざる交互効果の不全をもたらし、
結果的に優れた戦略ストーリーの競争優位を
持続させた例だといえるでしょう。


クリティカル・コアの論理からすれば、
その業界をよく知っている人々が「それはイイね!」
と思うような要素だけで出来上がっているストーリーは、
実はたいして面白くないということになります。


合理的な戦略では先行できない


コンセプトは判断に迷ったり、行き詰ったときに、
常に立ち戻ることができる何かでなくてはなりません。


今ではベストプラクティスとして
世界中で受け入れられているトヨタ生産方式も、
外部にいる「賢者」にとっては、
当初は非合理極まりないように見えたという話です。


情報のインプットが多くなるほど、常識が強化されます。
情報量が多過ぎると、かえってキラーパスの発想は
貧困になるのかもしれません。


ストーリーとしての戦略に自信が持ちきれないと、
どうしても防御的な構えになります。
オープンで自然体で競争相手に向かい合えるとしたら、
戦略ストーリーも本物です。


どんな情報に接するときでも、
その背後にどういう論理があるのか、
whyを考える癖をつけることが大切です。


現実に起きた具体的な事例を使えば、
ビジネスですぐに役立つ「実践的」な知識が身につく、
というのです。
そういう人に限って、自分のビジネスに「近い」業界や
会社の「最新」のケースを読みたがります。


ストーリーという戦略の本質を考えると、
「話の面白さ」はリーダーシップの最重要な条件の一つです。


少なくとも自分では「世のため人のため」と
信じられることでなくては、
10年、20年続く仕事としてもたないのではないでしょうか。







engineer_takafumi at 00:11│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ 経営

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