2018年04月08日

エンタテインメントの作り方

本日は貴志祐介 氏の
エンタテインメントの作り方
です。
エンタテインメントの作り方 売れる小説はこう書く (角川新書)

本書は「黒い家」や「悪の教典」など
ホラーやミステリー小説で数々のヒットを飛ばす、
貴志さんによる小説の書き方です。

アイデアの出し方、プロットの書き方、
キャラクターの作り方、文章の書き方、
推敲の方法、描写技法など、
小説の要点がカバーされています。

また、それを論理的に言語で説明されているのが、
素晴らしいところです。

例えば「読者が感情移入できない」ということでも、
実例を挙げて、何がまずいのかということを
具体的に教えてくれます。

私は小説を書くことはできませんが、
小説の裏にある作者の思想を学べて
とても興味深かったです。


個人的には、
読者がページをめくる推進力の作り方
の部分が大変参考になりました。


小説を書いてみたいと思う人は
まず読むべき一冊だと思います。
少なくとも、明らかな失敗を犯す可能性を
大幅に下げることができるでしょう。





読者からの生温かい共感を
無条件で期待している作者の淫猥な笑みや、
きれいに落としたでしょうと言わんばかりの、
したり顔(今で言うドヤ顔)は、
あらゆる分野のクリエイターにとって
敵であると承知して欲しいのだ。


アイデアらしきものが脳裏をよぎったら、
すかさずメモしてストックしておく。


この"アイデアメモ"が、着想をわが掌中に
引き込むための第一の役割を果たす。


もしも、インフルエンザ・ウイルスがもたらすものが、
"苦しみ"ではなく、"快楽"だったら――


アイデアにはどうも熟成期間というものが必要なようだ。


長編作品だからといって何百枚もかけて
長話をしているのではなく、
いくつもの短編の集合体であるという
スタンスが身についたからだ。


フィクションであっても、
一般的にあまり知られていない世界を
リアルに描写するということは、
それだけでひとつのエンタテイメントになり得る


職場は最高の情報源であるということを
ぜひ意識していただきたい。


大学卒業後、すぐに専業作家を目指す人もいるが、
就職するかどうか迷ったら、
私は一度社会に出ておくことをおすすめする。


私の場合、プロットの初期段階で重視しているのは、
結末だ。
最終的に物語をどう着地させるのか、
明確なゴールを初めに設定しておく。


長い時間、手に汗を握って読み進めてきたのに、
待っていたのがあまりに救いようのない
絶望的なラストシーンであると、
作品としての出来はともかく、
読後感は最悪ということにもなりかねない。


ハリウッド映画の世界では、
「五分に一度は山場を設定する」
というセオリーがあるとよく言われる。


大事なのは山場の頻度ではなく、
山場までの過程だ。


エンタテイメントには"推進力"を持つ
エンジンが必要である。
それは本格ミステリであれば
「なぜだろう?」と思わせる仕掛けであり、
ホラーであれば「どうなってしまうのか?」
と思わせる演出だ。
それが読者にページをめくさらせる原動力となる。


長編小説は中だるみが生じてしまいがちなので、
適宜、小さな謎を仕掛けることで
読者の関心を引き寄せる工夫が必要になる。


長々と物語の背景を説明するような
つまらない幕開けでは、
即座に投げ出されてしまうかもしれない。


打開策で有効なのが、
早い段階で"対立軸"を提示することだ。


前半に設定された伏線を、
ラストで次々に回収するようなミステリは読んでいて楽しく、
ミステリ作家を目指す人にとっては、
一度はチャレンジしたい手法のひとつである。


「伏線」というものを、あまり難しく考える必要はない。
なぜなら、物語の結末とそこにいたるまでの展開が
明確にイメージできていれば、
伏線は自然に張りたくなってくるものだからである。


物語の設定があまりにぶっ飛んだものであったため、
舞台くらいは実在の土地を使って、
リアリティのバランスを取りたいという狙いがあった。


"書きたいこと"さえ明確であれば、
そこから逆算して作られる部分は多いということだ。
必然性に従ってディテールを定めることで、
物語の舞台は安定感を持つのである。


「自分はこういう社会状況を告発したいんだ」
という問題意識をもって書かれた作品が見られるが、
そういう作品ほど、
キャラクターに"演説"させてしまっている。
それが正論であるほど読み手としては興醒めで、
エンタテイメントとしては失格である
と言わざるを得ない。


理想は、物語が内包している主題が、
読み進めるうちにごく自然に
頭のなかで形を取るような小説だろう。


私の場合、プロットを組み立て始めた段階で、
とにかく仮タイトルをつける。
これは意外と重要な作業で、
たとえ仮置きであっても早い段階から
納得のいくタイトルがついていると、気分良く筆が進む。


"この先どうなっていくのか"を
考えていくのが普通の小説で、
逆に"なぜこうなったのか"を考えていくのが
本格ミステリーなのだ。


ひとつのトリックを単体で見た場合にはありきたりでも、
いくつものトリックを組み合わせ技で用いることで、
インパクトのある展開を作り出すことは可能である。


「007」シリーズはひとことで表すと、
主人公のジェームズ・ボンドがひたすら
"モテまくる"話といっても過言ではないが、
それでも大人の鑑賞に堪える作品に仕上がっているのは、
内在する冷徹な論理の賜物だろう。


ミステリの重鎮としてしられた土屋隆夫が生前、
完璧な身代金の受け渡し方法を思いついたが、
悪用されることを恐れて
作品には使わず封印したという逸話がある。


"知っていることを書く"のではなく、
"知っているから書くことができる"こともある。
知り得たことをすべて文章として表現しなくても、
知識や情報は行間からにじみ出るものなのだ。


自分が気に入らない名前であったり、
違和感を覚える名前の主人公では、
筆も乗らないものだ。


主人公やそれに準ずる主要キャラクターは、
ときに作者の意図に反した行動を
とるくらいが理想的なのだ。


むしろ弱点があることで、
読者にとっては受け入れやすくなる。
あのシャーロック・ホームズですら、
コカイン中毒であるという
大きな欠点を抱えているのだ。


変人キャラが生きるのは、
あくまで多くの常識人に囲まれているからである。


口調そのものは普通の話し言葉だが、
言葉のチョイスで時代を感じさせる工夫をしたほうが、
自然な印象をあたえられるのだ。


書きだしが決まらずスタートが切れない状態であるなら、
それはまだまだその世界のイメージを
ものにしきれていないということである。
その場合は、ひたすら設定や展開、
キャラクターについて再考し、もう一度、
世界観をじっくり練り上げる必要がある。


執筆において一番無駄な時間は、
あれこれ悩むだけで一文字も書けない状態である。
それなら、"助走"と割りきって
書き始めてしまうべきなのだ。


文章も自転車と同じで、
スピードにのっているときほど安定感がある。


クライマックスが近づいてきたら、
読者を一気にスピードにのせなくてはならない。
そこで、あえて「た」で終わる短い文章を連打することで、
ドラムのような小気味よさを演出する手もある。
登場人物の行動を簡潔に切り取り、
読者に提示するのだ。


小説の本体はあくまで地の文である
ということを忘れてはいけない。


それぞれの章が、
独立した短編小説としても通用する構成を意識し、
そのつど読者に十分な満足感をあたえられるような
作品づくりを目指せば、
自ずと質の高い長編が書けるようになるはずだ。


肉付けされたシーンというのは、
読んでいる側は敏感に察するものである。
そもそも作者が楽しんで書いていなければ、
読者ものってくれない。
間を埋めるために余計な文章をかくぐらいなら、
勇気をもってスリム化するべきなのである。


アイデアに問題がないのだとすれば、
なぜ高評価が得られなかったのか?
たいていの場合、その原因は
「読者が感情移入できない」ことにある。
つまり、物語の世界に引き込まれないのだ。


どちらの人物にも感情移入できないから、
どちらかがピンチに陥って殺されそうになっても
ハラハラすることはないし、
優勢になってもワクワクしないのである。


会話やセリフ部分に致命的にリアリティが欠けていれば、
それだけでその作品は魅力を失ってしまうものだ。


ミステリであっても人間を描くことは非常に大切で、
これを疎かにすると、
「犯人が、とても人を殺すようなタイプに見えない」とか、
「なぜ犯行に及んだのか、動機がいまいち腑に落ちない」
といった違和感を残すことになる。


小説は必要最小限のことだけ
描写すればいいと思われがちだが、
実際には"書いていない部分"を
どれだけ具体的にイメージできているかが、
表現の質を大きく左右する。


最優先すべきは自分が"本当に書きたいもの"を書くこと。
書いていて楽しい題材を見つけること。
まず自分自身が楽しんでいなければ、
読み手を楽しませるような面白い小説が
生まれることはないのだ。


とりわけ独りよがりの印象をあたえやすいのは、
男性が描く女性キャラクターの言動や思考の描写である。
あるいは殺人事件の動機が妙に利他的で、
きれいごとに終始し、呼んでいて腑に落ちないまま
物語が展開していく作品も多い。






engineer_takafumi at 00:29│Comments(1) ★一般書の書評 | ⇒ クリエイティブ

この記事へのコメント

1. Posted by omachi   2018年05月14日 22:51
歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。重複、 既読ならご免なさい。お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。)

ネットも面白いですよ。

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