2018年09月03日

構想力の方法論

本日は紺野登 氏、野中郁次郎 氏の
構想力の方法論
です。
構想力の方法論

本書は博報堂のマーケティングディレクターを経て、
知識イノベーション研究所の代表である紺野氏と
名著「失敗の本質」で知られる一橋大学の野中教授の
共著による、ビッグピクチャーの描き方です。


現在、残念ながら日本の経済は相対的には
落ちこんでいる状況です。

その原因はいくつか挙げられていますが、
その中でも良く言われるのが、
大局的な戦略がないとか、俯瞰的な視点がない
など、大きな視点でものを見られない
ということです。

その課題に立ち向かうのがこの一冊です。

構想力がないことによってふきだす問題。
構想力の定義に始まって、
構想力の例や生み出されるプロセスなどを
ときほどいて詳細に解説します。

日本人は構想力がないと言われますが、
ポテンシャルは低くないのです。
社会の仕組みと日本人の特性を生かせば
欧米や中国とも戦える力を持っています。

現代文の入試問題のように難解には感じましたが、
時代に求められる一冊だと感じました。


個人的には、
論理分析的な思考では新しい観点は生まれない、
主観を軸にすることで新しい観点が生まれる。
という部分が特に印象的でした。


企業の経営者にお勧めの一冊です。
大局観とはどういうことか学び、
目の前のことにとらわれすぎない経営を行う
ヒントを得ることができるでしょう。





社会学者は人々の間で共感が失われると、
対人的信頼の程度が低下すると報告しています。
それは孤立や疎外を意味し、テクノロジーが
その事態を悪化させる可能性も指摘されています。


注意深く振り返ってみると、
モノづくりが日本の強みだといい始めたのは、
日本の製造業の衰退が始まったその時からなのです。


ビッグピクチャーを描くには、評論家的ではダメで、
社会課題解決のビジネスモデルや、
その前提となる「何のために?」という
大きな目標意識が含まれていなければなりません。


ゼロから1を生むのではなく
ゼロがあるから1が生まれる


主観的、主体的に独自の視点に立って
目的や価値を見出してく意思としての「主観力」、
そこから現実にはない望むべき世界を思い浮かべ
そのイメージを広げる精神作用としての「想像力」、
そうして形成されたイメージを現実と目的の間と
往還しながら現実化するために
手段を綜合していく行為としての「実践力」。
これらを駆使して、私たちは構想の創造と実践を
行っていくといえます。


私たちの想像力は、自由な連想ではなく、
自分が何をやりたいのか、あるいは私たちが
どのような場や状況にいて何をなすべきなのかが
意識された時に大きな力を得ます。


論理分析的な思考では新しい観点は生まれない、
主観を軸にして行動・行為を実践することで
初めて新しい観点が生まれる。


何を目的としてイノベーションを生み出したいのか、
が問われるのです。
そして、この「何のために?」が、
どれだけ多くの人や組織で共感され共有されるかが、
構想力においては最も重要です。


構想知は私たちの想像力や主観力から
生み出されることを挙げてきましたが、
その意味で構想知は私たちの身体知に
根付いていることを忘れてはなりません。


妄想にすぎない構想が人々を洗脳し、
人々を惑わせる危険性ほど恐ろしいものはありません。


ザハ・ハディドは1970年代の英国で建築教育を受けたのですが、
当時から「アンビルドの女王」と呼ばれていました。


構想力の実践において目的がいかに大切かは、
後ほど述べますが、
変革の目的はトップダウンで与えられるものではなく、
ボトムアップで相互に生成していくものであることを
ここでは強調しておきたいと思います。


いま社会を変えるための構想は、
既存の業界や制度の境界を越えた共創・協業によって
実現されるものになっているという点も重要です。


目的は人間中心のものでなければなりません。
人間中心の目的とは、企業であれば、
提供する製品やサービスのタイプが目的となるのではなく、
最終的にその製品やサービスを受け取る人、
あるいはそれらを使用する人々の便益や幸福などの
価値によって目的が定義されているということです。


目的は、トップダウンで与えられるものではなく、
人々の主観的な動機からボトムアップで
練り上げられていくものです。


20世紀末、不正や粉飾で信用が大きく揺らいだ
欧米の大手会計事務所が、
みずから襟を正し信用を回復すべく
現在最も熱心に取り組んでいるのが、
企業経営に目的意識を蘇生させることです。


目的意識の強い組織がそうでない組織より、
イノベーションに積極的だという現実があります。
目的が自信を生み、イノベーションに向かわせる
投資への積極性を生むのです。


アマゾン、アップル、フェデックス、
スターバックスなどの企業は、
顧客や社会から目的志向を持った企業ブランド
(purpose-led brands)とみなされています。


目的なく働いている従業員は
今日の企業の脆弱性の主要な要因であるという研究もあります。


日本企業について研究を進める過程で、
日本人は新しいコンセプトを与えられると
非常な強みと創造力を発揮してモノをつくるが、
どうも新しいものを自分たちの手でつくり出す
構想能力はないようだと考えるようになり、
徐々に日本脅威論は影をひそめていった


日本人は「カタチから入る」とよくいわれますが、
それは日本人の構想力が像を思い浮かべるだけではなく
実際に手を動かして形あるものや技術をつくるという
制作となって「実践につながる」という意味で、
欧米的な認識論における構想力以上の
要素を持っていることの証です。






engineer_takafumi at 01:44│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ ビジネスその他

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