2018年07月31日

日本再興戦略

本日は落合陽一 氏の
日本再興戦略
です。
日本再興戦略 (NewsPicks Book)

本書は今、注目を集めている
大学の学長補佐として仕事をしながら
メディアアーティストとして活躍する
落合氏による一冊です。


平成に入り、失われた○○年と呼ばれ
日本は自虐的な批評に満ち溢れています。

その反面か、逆に実態以上に「日本はすごい」と
自画自賛するコンテンツが広がっています。

そんな目的を見失っている時代に、
若くして活躍する著者が処方を示します。
テクノロジーにとどまらず、政治や教育、仕事、政治、
国防、教育、メディア、リーダーの切り口から
日本再興のグランドデザインを描きます。

著者は基本的に学者なので、
多少難解で読みにくい部分もありますが、
分析は的を射ており、読者に未来への
ビジョンを与えてくれることでしょう。

少子高齢化が暗い未来を招くわけではありません。
これを利用して、日本はよみがえるのです。


個人的には、自分がエンジニアなので、
もっと職人をリスペクトしないといけない
という部分に共感しました。

カネを動かしてカネを作ることばかり賞賛されるのは
やはり不自然な状態なのでしょう。


未来に現実的な希望を持ちたい
という方にお勧めの一冊です。
一つの日本再興戦略がここにあります。




日本人は、外来的に入ってきたものを
すべて「欧米」と呼んで、
いろんな分野で各国の方法を組み合わせてきました。
そして、良いとこ取りをしたつもりが、
時代の変化によって悪いとこ取りに
なっているケースが目立ってきています。


日本人はゲームがフェアであることは意識するけれども、
権利が平等でることはあまり意識しないのです。


男女が合コンに行ったり、飲み会に行ったりすると、
当たり前のように男性側が女性より多く支払いますが、
あれは性意識の平等感に反します。
米国であれば、女性が怒ってもおかしくありません。


集団の中では個人はそんなに正しく判断できないのです。
ポリティカルコレクトネスのひずみや
ポピュリズムの台頭や西洋個人主義の
限界点を示しているようです。


個人のためではなく、自らの属する複数のコミュニティの
利益を考えて意思決定すればいいのです。


東洋的には、ずっと仕事の中にいながら生きている、
そしてそれがストレスなく生活と一致しているのが美しい。


日本人は個人として異端にはなりにくいですが、
集団として異端になるのは得意です。


我々は東洋人なのにもかかわらず、
あまりに東洋のことを軽視しすぎです。
バックグラウンドにある東洋思想を学ぶべきなのです。


ふるさと納税は、ある意味で正しく、
たとえば今はモノで釣っていますが、そうではなく、
自然と税金を払いたいなと思うような
地方自治が求められています。


2000年代の日本は、IT鎖国をした中国をバカにしていて
グレートファイアウォールと揶揄していましたが、
結果として中国のほうが正しかったのです。


平成は先人の遺産を食いつぶしただけで終わろうとしています。
ポスト平成の時代に同じ過ちを繰り返してはいけません。
そろそろ我々はコアアイデアを持って
クリエーションしないといけないのです。


八百万の神様の中に、
天皇の系譜はひとつの存在として入っているだけで、
統一権限を持っていませんでした。
天皇は、天照大神と近縁なのにもかかわらずです。
日本は神様の世界も、手法としては民主的なのです。


我々の国では、イスラム教を信仰している人も、
キリスト教を信仰している人もどちらも許容しますし、
「そういうものでしょう」という感じですが、
それを理解する素養が少ない国も多いように感じます。


僕はインド人によく
「カーストってあなたにとって何なの?」
と質問するのですが、多くの人が
「カーストは幸福のひとつの形」
と答えてくれたことがありました。
なぜカーストが幸福につながるのかというと、
カーストがあると職業選択の自由はない反面、
ある意味の安定は得られるからです。


これから重要になるのが、「百姓的な」生き方です。
百の生業を成すことを目指したほうがいいのです。
そうすれば、いろんな仕事を
ポートフォリオマネジメントしているので、
コモディティになる余地がありません。


クリエイションを中心に考えるカースト、
とりわけ士農工商は相性がとてもいい。
それなのに、今の日本にはそういった、
社会への貢献という考え方の伝統がなくなってしまいました。
それは、大学生の間で、メガバンクや商社や広告代理店などの
「商」ばかりが人気という点にあらわれています。


給料の3ヵ月分もかけて、
指輪を買わないといけない理由はないのに、
それが幸福であると勘違いする人を
生み出してしまいました。


多くの人は、普通こそが天地神明の理だと思っていて、
全てのことを「普通」で片づけます。
しかし実際には、普通が一番だと思っているのが、
一番の間違いなのです。
普通は多くの場合、最適解ではなく、
変化の多い時には、足かせになるのですから。


僕もお金の話をよくするのですが、
それは「お金はたかがツール」だと思っているからです。
家に帰ってきて電気をつける、という「電気」くらいに、
ビジネスや研究にとってのお金を考えています。
しかし、世間にはお金が神様だと思っている人が多すぎます。
それはマスメディアのせいです。


今、「週刊文春」が不倫を報じて、
不倫した人を世の中の人たちがたたいていますが、
それはそれだけみんな不倫したいということの
裏返しなのです。


ゼロサムでトレードを生業とする金融の人が
社会にもたらす貢献は、適性な金融商品が
適性な価格になるお手伝いとしていることだけで、
それ以外は何もありません。
そうしたアービトラージ(裁定取引)も
コンピュータがやってくれるようになったら、
ますます価値がなくなってしまいます。


今の日本では職人に対してリスペクトがあまりに少ない。


職人に限らず、たとえば、イチローのような
野球選手が「野球道」というのは、
ライフスタイルと美的感覚と技が
セットになっているからだと思います。
これは東洋人の精神性の特徴です。


現代においても、職人になったり、
大学の博士課程に入ったりして、
自分の信じる道を究めるのは、
自分の中に価値が醸成されるのでいい選択肢です。
それなのに、年収だけを見て
「何で職人になるのか、博士になって意味があるのか」
と言う人があまりに多い。


年収レンジだけでモノを考えていたら、
社会の富や価値は多様性を持ちえないし、
これから先あまり増えないことを
思い知らせる必要があるのです。


機械翻訳をバカにする人がいますが、
それは機械翻訳がバカなのではなく、
話しているほうが対応できていないのです。


スタバでMacを広げて耳にAirPodsをつけて、
腕にApple Watchをつけて、
ポケットにiphone を入れているというのは、
生き方ではないでしょうか。
アップルは単なる製品ではなく、
ライフスタイル自体をデザインしているわけです。


僕たちは西洋がクールだと思い込んで、
東洋がクールでないとする時点で、
ブランディングされているのです。


人口減少と少子高齢化はこれからの日本にとって
大チャンスなのです。


相対的に大人の数が多くなり、
子どもの数が少なくなるためです。
「子どもは少なくて貴重なのだから大切にしよう」
という機運が高まると、
社会全体として子どもに投資しても
不平がでにくくなるでしょう。


僕の印象として、西洋人は人型ロボットに限らず、
ロボットがあまり好きではありません。
西洋人にとって労働は神聖なものなので、
それをロボットに任せることに抵抗があるのです。


自動運転を過疎の地方でうまく活用することができれば、
人間の運搬と輸送の問題を解決して、地方は生き返ります。
動けなくなった高齢者が動くことができるようになるだけで、
高齢化社会における問題の半分は片付きます。


各研究者や研究室がトークンを発行して、
それを売り買いする仕組みができるとよい。
例えばその前段階としてクラウドファンディングによる
研究助成に僕は力を入れています。


これからの世界では、銀行に頼らなくても、
我々は高速に信用創造をすることができます。


iPhoneを使ってアップルストアで買い物をしたり、
グーグルマップで地図を検索したり、
アマゾンのサイトで買い物をしたり、
フェイスブックでメッセージを送り合ったりしていますが、
その結果、多くの情報やお金が
シリコンバレーに吸い取られているのです。


もし我々が、受益者負担のオープンな
ブロックチェーンベースのサービスを提供できれば、
アップルやグーグルやアマゾンに
お金を抜かれなくても済みます。


「オールドエコノミーとの戦いに勝てるか」です。
オールドエコノミーとは一言で言うと、
ウォール街の投資銀行です。
彼らは今までの法定通貨の世界を守るために、
仮想通貨の世界を潰そうとしています。


今、オールドエコノミー勢の攻めに、
新しい勢力は押され気味です。
仮想通貨の世界に、仮想通貨法という
面倒くさい規制が導入されましたし、
投資銀行はビットコインの市場に投機マネーを流入させて
相場を混乱させています。


機械と相性のいい日本は、
あらゆる国のモデルケースとして、
あらゆるものを自動化した国に
なれる可能性が十分にあります。


文化的にもインドと日本は深い関係があります。
サンスクリット語を母国語の3割くらい
使っているのは日本人くらいです。


東京都の都知事でありながら、中央政府の権力も握れれば、
国の規制もフレキシブルに変えられるので、
かなりダイナミックに政策を
変えられる可能性がありました。


リーダー2.0時代のリーダーの一つ目の条件は「弱さ」です。
共感性の高さが求められるのです。


近代が「タイムマネジメント」の時代だったとしたら、
現代は「ストレスマネジメント」の時代になるはずです。


高度経済成長期の日本では、年功序列という
システムがうまくかみ合いましたが、
もう年功序列とは「さよなら」しないといけません。


我々が持っている人間性のうちで、
デジタルヒューマンに必要なものは、
「今、即時的に必要なものをちゃんとリスクを取ってやれるかどうか」


「リスクを取る」ということが機械はすごく苦手ですから、
人間はそこを強くしないといけません。


手を動かせ。モノを作れ。批評家になるな。
ポジションを取った後に批評しろ。


明治期や現在のような時代の変革点において
本質的に必要なのは、
投資価値のある人間を育てることなのです。






engineer_takafumi at 23:57│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ ビジネスその他

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