2019年04月14日

日本人の勝算

本日はデービッド アトキンソン 氏の
日本人の勝算
です。


本書はイギリス生まれで、日本に魅せられ
オックスフォードで日本学を専攻。
ゴールドマンサックスを経て、
日本の国宝や重要文化財の補修を手掛ける
小西美術工藝社に入社して、
現在は社長を務める著者による一冊です。

著者は日本在住30年で、
日本人より日本を愛しているとさえ思えます。
そんな著者が多数の外国人エコノミストの
分析データを使って、日本の生存戦略を説きます。

結論は、日本の課題は日本人の能力に比べて
低すぎる賃金が生産性向上を妨げている、
ということになります。

だから、単純に最低賃金を上げてやれば良いのです。
ただ、言うのは簡単ですが、失業者が増えるとか
中小企業に大きなダメージが及ぶなど、
問題が想定されるのも確かです。

本書では、それらの問題を検証して、
賃金を上げたときに何が起こるか分析して、
日本が生き残れる戦略を描いたものです。

このまま民間に任せていてはダメで、
必要な施策を国レベルで行わなければいけない、
ということを強く認識できました。


個人的には、
「日本人の変わらない力は異常」
という部分が特に心に残りました。

このままではダメだとわかっているのに、
精神論を持ち出して、変わらないという悪習は
なんとかここで終わりにしないといけません。


若い経営者に読んでもらいたい一冊です。
今までの日本の本質的な問題点と、
これから日本がどうやって勝ち残っていくか、
そのシナリオが見えることでしょう。




実は、労働分配率の低下も大きなデフレ要因で、
英国銀行がまとめた分析にその影響が
紹介されています。


途上国からの労働力が増えれば増えるほど、
日本という国は「途上国」になっていきます。


日本では今後、最強のデフレ圧力となる人口減少に加え、
さまざまなデフレ圧力が複合的に強まっていきます。


量的緩和で物価が上がると主張している人は、
需要者が一定であると想定しているのです。


「いいものをより安く」という戦略は、
厳しい言葉で言うと、優秀な労働者さえいれば
どんなバカな経営者にも可能な戦略です。
その分、労働者に大きな負荷がかかります。


生産性が低いということは、当然所得水準も低くなります。
実際、ここまで人材評価と所得水準が乖離している
先進国は日本以外にはありません。


市場原理に任せてしまうと、
日本経済の行く末は真っ暗です。
国民にもとんでもなく大きな負担がかかってきます。


輸出をすることによって生産性が高まるという仮説は
否定されているのです。
海外に輸出すること自体は、生産性の高さの
重要な要因ではないのです。
輸出をしたいという意思のほうが重要で、
それが生産性の高さの秘訣だそうです。


特定の生産性の低い産業に中小企業が集中していることは、
中小企業の生産性が低い要因ではないのです。
産業の分野を問わず、大企業の生産性が高く、
中小企業の生産性が低いのです。


日本は人口が多くてGDPも大きいので、
輸出総額も大きいのですが、
人口1人当たり輸出額や対GDP比の輸出額で見ると、
まだまだ輸出小国です。


「日本経済の底力は中小企業であり、これこそが日本の資本主義の特徴である」
という考え方は、どうやら1964年以降にできた
神話の1つだと考えられます。


統合によって減るのは、社長のイスというポストだけです。
小さな企業を守るということは、実は労働者ではなく
社長を守っていることになります。


マッキンゼーが発表した
「Why management matters for productivity」
というタイトルのレポートでは、
生産性向上の最大の足かせは経営者だと分析しています。


最低賃金を引き上げることによって、
もっとも生産性の低い企業をターゲットに、
生産性の向上を促したり、
経営を変える動機を与えることができる


教科書に書かれている新古典派の
「最低賃金引き上げは雇用に悪影響を及ぼす」という説は、
次第に否定されてきています。


市場はそこまで効率的ではないというのが最近の定説です。
学者によっては、労働市場には「効率性がない」
とすら論じられています。


世界的に見ても、40代はもっとも生産性が高い世代で、
その世代の人口が増えると生産性が上がりやすくなる
と言われています。


日本は国土も狭い上に、交通網が整備されています。
人口のアメリカの3分の1強程度です。
このような国で、最低賃金を都道府県ごとに
バラバラに設定したら、労働者は最低賃金の低いところから、
もっとも高い東京に集中するのが道理で、
実際にそうなっています。


県別の最低賃金との相関が最も高いデータを探したところ、
実は県民の総数であることがわかりました。
最低賃金が低い水準で長年放置された結果、
その県から徐々に人が減っていってしまった経緯が、
データからも窺えます。


日本人の変わらない力は異常


日本企業は、自由にさせておくと、
生産性を向上させる方向に向かわないことは、
これまでの歴史を振り返れば明らかです。
だとしたら、強制的にやらせるしかありません。
それには最低賃金の引き上げが最適です。


日本は不動産も高いし、電気も高い。
材料もタイより安いはずがありません。
利益を削ってそこまで安くすることは不可能なので、
理由は最低賃金が安いことに尽きます。


日本型資本主義を信仰している人の中には、
日本の所得水準が低いことや、最低賃金が低いことを
「美徳」だと考えている人もいるということです。


ただでさえ日本人の所得水準は低いのです。
さらに賃金が低い労働力を増やせば、
価格競争を今以上に激化させて、
日本労働者をさらに苦しめる政策になります。
社会保障のコストは負担できず、国が破綻します。
最悪以外の言葉が見つかりません。


日本の企業間競争の熾烈さは世界第1位です。
熾烈すぎる企業間の競争環境は、
生産性を向上させるのにはマイナスに働きます。


高度成長時代に日本が輝いていた大きな理由の1つは、
若い人がたくさんいたことだというのが私の持論です。
怖いもの知らずで、古い組織体のこだわりのない
若い人の比率がきわめて高く、
社員の平均年齢が驚くほど低かったことが、
奇跡と呼ばれる成長を導いたのではないでしょうか。






engineer_takafumi at 04:08│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ ビジネスその他

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