2019年04月11日

世界の仕組みを物理学で知る

本日は松原 隆彦 氏の
世界の仕組みを物理学で知る
です。


本書は宇宙論や素粒子論を専門とする研究者が
一般向けに書いた、物理の入門書になります。

経済(株価)と物理学の関係から始まり、
「なぜ夕焼けは赤いの?」といった定番の話題から、
携帯電話や液晶、3D映画など身の回りの技術の話、
そして本書の核心である宇宙論や素粒子、
量子論の話に移ります。

最近は「量子力学」や「相対論」という言葉が、
一般にも認知されるようになり、
見かける機会も多くなりました。

しかし、ほとんどスピリチャルの話になっていて
「それではないのだ」と、感じることが多いです。

とはいえ、現在の先端物理学である
量子論や宇宙物理学は哲学的な要素を含んでいることも
また事実なのです。

本書は専門家による著書ということで、
このあたりの切り分けに十分に配慮して書かれており、
安心して読み進めることができました。

「文系でもよくわかる」とタイトルにありますが、
たしかに数式が使われておらず、言葉で説明されているので、
文系の方でも概略をつかみやすい一冊だと思います。


文系の方で量子力学や宇宙論について学びたい
と考えている方に、特におすすめの一冊です。
数式抜きで、現代の先端物理学の全体像を
つかむことができるでしょう。





高性能なコンピューターと高度な数理モデルをもとに
投資戦略を考える手法、
あるいはその専門家のことを「クオンツ」と呼ぶ。


「物理学で株価を予測する」と聞いて、
私がまずイメージするのは、「熱力学」だ。


ベースとなっているのが、
「周波数ごとに分解できる」という波の性質だ。


この世の中は非常に複雑だ。
複雑なものを複雑なまま理解しようとすると、
途方に暮れてしまう。
物理学は、複雑なものをなるべく単純化して
理解しようとする学問なのだ。


「カミオカンデ=ニュートリノの観測装置」
と思われがちだが、もとはと言えば、
電磁気力と弱い力と強い力の3つを統一した理論を
確かめるために造られたものだ。


今でも、アマチュアの理論家が
世紀の発見をする可能性は十分にあり得る。
理論であれば、大がかりな実験装置はいらない。
パソコンさえあれば、どこにいても
いくらでも考えられるのだから、
現代のアインシュタインが登場する可能性は
ゼロではないのだ。


朝焼けも夕焼けも、空全体は暗い群青色をしていて、
太陽のまわりだけが赤いのは、赤い光というのは
まっすぐに進んであちこちに散らばることがないからだ。


幸いにも地軸は安定している。
それは、月が地球のまわりを回ってくれているおかげだ


地球の大気のなかで雷か何かが落ち、
電気の刺激で有機物ができて、
それが生命になったのではないかといわれていた。
しかし、そうやって生命をつくりだすのは極めて難しく、
どうやらその確率は限りなく低いらしい。
地球ができて6億年後くらいには
生命がいたと考えられていることから、
そんな短い(宇宙の歴史を考えると短い)間に
生命ができるとは考えにくい。


宇宙ができたのは今から138億年ほど前のことである。
宇宙ができてから地球上に生命が登場するまでには
100億年近くの時間がある。
宇宙のどこかで生命が誕生し、地球に降り注ぎ、
地球で進化したと考えたほうが、
時間的にもつじつまが合うだとうという説も有力だ。


天体観測と言えば、地上の望遠鏡を一生懸命に
覗き込むイメージがあるかもしれないが、
今では人工衛星やAIが活用されることもある。
天体観測やAIが活用されることもある。
天体観測はデータ解析の勝負だ。


金属以外の物に反射した光は、
反射面と水平方向に振動する偏向になる
という性質がある。


クォーク自体は不滅であり、宇宙ができた直後から、
その数は変わらない。
アップクォークとダウンクォークが入れ替わることはあっても、
クォークができたり消えたりすることはなく、
宇宙全体のクォークの数は一定に保たれている。


今ある宇宙を構成しちえるクォークのすべてが、
最初の点のような宇宙のなかに
すでにあったということだ。


世の中にあるクォークや電子といった素粒子は、
すべて同じ性質をもっている。無個性だ。
見分けることはできないのだから、
その変遷をたどることもできない。


多くの物理学者は、あくまでエーテルは存在していると考え、
エーテルの風を測定できない理由のほうを考えた。
ところが、若いアインシュタインは、
「時間と空間が固定されたものだ」という
従来の常識のほうを捨てた。


猛スピードで動いたからといって、
自分の時間が遅くなっている自覚があるわけではない。
時間が遅くなっていると言っても、
よそ様から見た時間がそうなって見えるだけで、
自分の感じる時間に変化は何もないのだ。


彼が一般相対性理論を発表した当時、
この理論を理解する科学者は世界に数人しかいなかった
という伝説もあるほどだ。
その真偽のほどはさておき、どうしても常識にとらわれ、
ついていけなかった人は多くいたはずだ。


●物理学は、既存の理論と現実とのズレを手掛かりに発展していく
●アインシュタインは一般相対性理論を頭の中で組み立ててから、ズレを見つけた。閃きの天才だ


634メートルの東京スカイツリーのてっぺんと地上では
1日に100億分の1秒ほど時間の進み方が異なるという程度だ。
つまりは100億日でようやく1秒ほど。


ワームホールが本当に作られたとして、
入り口と出口を同じ時間にすれば、
ドラえもんのどこでもドアと同じような瞬間移動になるが、
別の時間に出てくるように出口を作れば、
それはタイムマシンになる。


アインシュタインと言えば相対性理論が有名だが、
彼が1921年にノーベル物理学賞を受賞した理由は、
この光電効果の研究のほうだ。


量子の世界は、天才的な物理学者が理解できないほど、
常識が通用しない世界


原子の中に電子が存在しているといっても、
その軌道を観測して確かめることはできない。
だから「電子は今どこにあるのですか?」
という質問はまったく意味がなく、してはいけない。
一方で、原子に光をぶつけたら
電子が飛び出してきたりするが、そのときに
「どういう光を当てるとどういう電子がどういうエネルギーが出てくるか」
ということは観測できるので質問してもいい――。
そうした考えに基づいて作られたのが、
ハイゼンベルグの方程式だ。


ファインマンは、
「量子論が本当にわかっている人は誰もいない。もし量子論がわかっていると思っている人がいたら、量子論をわかっていない証拠だ」
と言ったという。


物理学というのは、あらゆることの根底にある
基本的な原理を見つけ出し、世の中で起こっている
あらゆる現象を説明しようとする学問である。
そうやって根本へ根本へと突き詰めていった先には、
「実験の結果、そうなっているから」としか言いようがない、
理由のないルールに行き当たる。






engineer_takafumi at 23:19│Comments(0) ★理系本の書評 | ⇒ 物理・科学哲学

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