2019年04月30日

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

本日はローレンス・レビー 氏の
PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話
です。


本書はピクサーにて、バックオフィス担当役員として
事業戦略の作成やIPOを担当した著者による
ピクサーの裏側について語った一冊です。


ピクサーについての本と言えば、CEOのエドによる
ピクサー流 創造するちからが有名ですが、
本書はクリエイティブの側面でなく、
お金の話をした一冊になります。

普段関わることの少ないエンターティメント業界を
ビジネスとして見られる、興味深い一冊でした。

意外に保守的なハリウッドや「持越費用」という概念など、
この業界の優位点や問題点などを知ることができます。

本書のメインであるIPOまでの道筋も、
初学者にも配慮されて基本的な事柄を説明しながら
話が進むので、ひっかかることなく
楽しむことができました。

また、一般に天才ではあるが変人・怖いとされている
スティーブ・ジョブズの人物像が微妙に違っていて
その相違も興味深かったです。


個人的にはディズニーとの契約交渉で、
ピクサーのクレジットが入れることができた部分が
感情移入できて、特に印象的でした。

これからピクサーの映画を見る機会があれば、
エンドロールをじっくり見ると思います。


エンタメ業界に興味のある人にお勧めの一冊です。
一見華やかな業界のリアルなお金と運営の話を
学ぶことができるでしょう。




ここでも、将来性のない事業に人材を投入しているわけだ。
おかげで才能のある人々は忙しく働くことはできているが、
会社の成長戦略としては、コマーシャルアニメーションも
袋小路である。


ピクサーは謎な会社だよ。
あれほどの才能が集まっているのは見たことがない。
しかも、みな、すさまじく努力している。
なのに、やることなすこと、失敗か、
将来の展望が得られないものばかりで、努力に見合うものがない。
必死で走っているのに前に進めていないんだ


映画3本分の製作費用を出すかわりに
ここまで完璧に縛るとは驚きだ。
これでは買収せずに子会社化したようなものである。
実績がなければ、これがハリウッドでは普通だとは。
エンターテイメント業界では、
音楽などほかの分野も似たようなものらしい。


ピクサーを買った1986年に彼が夢見ていたのは、
ずばぬけたコンピューターグラフィックスで
世界をあっと言わせるテクノロジー会社を作ることだった。
物語の構築は、技術を示す方法として後から追加したものだ。
だが、その夢の元となっていた
ピクサーイメージコンピューターは失敗に終わり、
1991年の時点で当該部門は完全になくなっていた。


この2ヶ月、スティーブといろいろな話をしたけど、
彼が反発したり言い訳に走ったりしたこと、ないんだよね。
あれもだめ、これもだめと僕はピクサーの事業を
こき下ろしたわけで、その一つひとつに
彼から反論があってしかるべきなんだ。
でも、彼はそうしなかった。一度も、だ。
まるで、僕と一緒に学び、
ふたりで前に進んでいるように感じるよ。


映画の製作というのは、事業として
それほどいいものではありません。
新作で成功するのは大変です。
価値があるのは、むしろライブラリーのほうですよ。


投資家好みの安定した利益を出すのはまず不可能。
それどころか、興行成績が少し変わっただけで
利益が出なくなるなど、リスクがすさまじい。
アニメーションには「持越費用」という
やっかいな問題もあった。
持越費用とは、制作の作業をしていない社員にかかる費用だ。


ディズニーがピクサーになっていないのはなぜなのか。
ピクサーに成功のチャンスがあるのなら、
何十年も王としてアニメーション世界に君臨してきた
ディズニーがコンピューターアニメーションに
乗り出しているはずではないのか?
答えは、当然、そうしていてよかったはず、だ。
では、なぜ、そうしなかったのだろうか。
理由は一つしかない。文化だ。私はそう思う。


文化は目に見えないが、
それなしにイノベーションは生まれない。
新しいものを生み出す元は、普通、
状況や環境ではなく個人だと考える。
そして、その人をヒーローとしてあがめ、
そのストーリーを語る。
だが、その実、イノベーションは集団の成果である。
天才がいなければ生まれないかもしれないが、
同様に、環境が整っていなければ生まれない。
活気も大事だ。
だから、なんとしても、ピクサーの文化と活気を
守らなければならない。


会社は、成功すると保守的になる。
創立当初はたしかにあった想像性の炎が、
成果を求める圧力で消えてしまう。
成功すると守るものが増え、
同時になにかを失ってしまう。
勇気が恐れに圧倒されるのだ。


ハリウッドといえば創造性というくらいなのに、
現実はまったく違う。これには驚いた。
映画会社が大きなリスクをとったイノベーションを
起こしたりするのは難しい。
リスクを取るより、二匹目のドジョウで
安全確実な道を選ぶのだ。
つまり、エンターテイメント会社として
ピクサーが身を立てるには、
イノベーションを抑えるハリウッド流に
染まらないようにしなければならないということだ。


ポイントリッチモンドなんてへき地に
会社を置いてどうするんだと不満に思っていたが、
それは大まちがいだったのかもしれない。
逆にいい選択で、独自の道を歩きやすいのかもしれない。


ピクサーに来たころ、だれと話をしても、すぐ、
「で? ストックオプションは?」と言われたほどだ


映画の興行成績は予測不可能だし、
映画の公開スケジュールは、
控えめに言っても当てにならない。
『トイ・ストーリー』の次は、早くて3年後なのだ。
業績予想など、まっとうにできるはずがない。


我々は、いわゆるハリウッドの会社じゃありません。
我々の生まれはシリコンバレーです。
シリコンバレーとハリウッドが融合した会社を
作ろうとしているんです。
ストーリーとテクノロジーを組み合わせ、
いままでだれもやらなかったことを
やろうとしているんです。


映画を製作する者の心を大事にするんだ。
なにが悲しくて、そこに横やりを入れさせるんだ?
考えるべきはクリエイティブなビジョンであって、
締め切りや予算じゃないだろう


ピクサーのやり方を支えているのは、
忌憚のない意見の応酬であり、自尊心を棚上げして
その意見に耳を傾ける強い意志である。


「一番大事なのはストーリー」をお題目にするのと、
それを信条に行動するのとは、天と地ほども違うことなのだ。


スティーブの場合、要求をいったん決めたらそれが絶対になる。
望むものが得られないなら、代わりになるものなどない、
よって、交渉は打ち切る―


ラベルの裏側に印刷された小さなロゴを見て
大喜びする客など、我々しかいないのはまちがいないのだが。


スティーブ本人は私的な時間を大事にする人物だと思うが、
表に出る際に、彼は、他人にもスポットライトが当たることを嫌う。
また、大きなストーリーを編み上げる力がすさまじく、
自分自身に対しても同じようにその力を適用する。
スティーブのところで仕事をするなら
縁の下の力持ちに徹するつもりでなければならない。


クリエイティブな判断をずっと前に任された
クリエイティブチームがスティーブの意見を
尊重したいというのだ。
ピクサーという世界でこれ以上の称賛はないと言える。
最高の敬意である。
そう言えば、このころ、スティーブに対する
恨みつらみを耳にすることが完全になくなっていた。
会社を支えきったスティーブは、怖いオーナーではなく、
信頼できる保護者だと見られるようになっていたのだ。


スティーブは、人生のさまざまな側面を
きっちりと仕切っていた。
すべての区間に入れるのは彼だけ。
友人は自分がいる意外の区間にはまず立ち入れない。






engineer_takafumi at 13:36│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ 経営

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