2019年06月10日

amazon「帝国」との共存

本日はナタリー・バーグ 氏、ミヤ・ナイツ 氏の
amazon「帝国」との共存
です。


本書は米国の小売業のアナリスト達が
アマゾンについて徹底的に記した一冊を、
元マイクロソフトの成毛氏が監訳したという
アマゾンを徹底的に分析する一冊です。


小売の世界では、アマゾンはあまりに力強いので、
脅威としてしか見えないかもしれません。
どんどん、リアル店舗のビジネスを破壊している
イメージが強いことでしょう。

本書はそんな小売業界の関係者に向けて、
アマゾンの戦略とアマゾンとどう共存していくのか
という視点で書かれています。

400ページ強というボリュームで、
アメリカの小売の固有名詞がどんどん出てきて、
素人の僕には正直、読みにくい部分はありました。

しかし、アマゾンの動きがこれでもか、
と書かれていて、アマゾンの目指す世界が
少し見えてきたような気がしました。


個人的には、日本では情報が手に入りにくい、
アマゾンの実店舗運営についての記載が参考になりました。

利益というより、むしろ実験のために
スーパーマーケットのチェーンを買収するなど、
戦略性が既存企業と桁外れだと、改めて認識できました。


小売の業界に携わる方は、一読をお勧めする一冊です。
たくさんの客観的な事実を元にして、
多面的にアマゾンの戦略を知ることができるでしょう。





アマゾンはホールフーズの買収により、
「小売の未来はオフラインとオンラインの融合にある」
との明確なメッセージを発信した。


生鮮食品は、アマゾンのパズルを完成へと近づける巨大なピースだ。
そのピースが担う役割とは、「購買頻度」である。


2018年にアマゾンは21周年を迎えたが、
過去に年間利益を計上したのはわずかに13回。
利幅は現在も不安定な上に芳しくもなく、
金融市場が期待する右肩上がりからほど遠い。
普通に考えれば、そんな小売のCEOなど
即刻クビを切られていてもおかしくない。


eコマース専業はやがて古風なビジネスに成り下がり、
『ニューリテール』(新しい小売)のコンセプトが主流となる。
つまり、オンライン、オフライン、ロジスティクス、データ管理が、
シングル・バリュー・チェーン(一元的な価値連鎖)
として統合される。


音声ショッピングが定着するにつれ、
サプライヤーの状況もより厳しくなっている。
アレクサの検索結果はたった2つに限られているのだ。


顧客は自分たちも気づかないうちに、
より高い要求を抱いているものだ。
そして、彼らを喜ばせたいという欲求が、
私たちを新しい創造へと導いてくれる。


アップルのiPhoneが人気を博し、
AndroidのOSをベースとしたデバイスでは、
サムスンなどほんの一握りが辛うじて競合できるといった状況下、
スマートフォンに手を出すというアマゾンの試みは、
当然失敗する運命にあった。


アレクサはその設計上、常に作動して人間の声に
耳を傾けている状態にある。
その他のデバイスでは、聞き取りの前に
物理的なやりとりが別途必要となる。


アマゾン・ブックスの目的は必ずしも
利益を上げることではなく、オンラインでの経験を
どのようにオフラインに転換できるかを試験し、
フライホイールに実店舗という物理的なスポークを
構築することだったことは容易に理解できる。


eコマースが強いのは、人々がどこに行けば
欲しいものが見つかるかわからないからだ。
それが、地域の商店がアマゾンに対して
非常に不利な点である。


スタートレックに出てくるようなレプリケーター
が実際に発明されるまでは、
eコマースはレストラン産業にとって脅威にはならない。


トイザらスは、創業間もないアマゾンにeコマース業務を委託した。
つまり、トイザらスは最大のライバルに、
顧客のおもちゃ購入傾向の重大なインサイトを与えてしまったのだ。
コーペティションが必ずしも事業にプラスになるとは限らない。


2018年におけるアマゾンの資産額は、
実店舗企業として世界最大であるウォルマートの2倍以上だった。
消費者をだますような戦略では、
このような成果は果たせなかっただろう。
ウォールマートの2017年の年間収益および純利益は
アマゾンのおよそ3倍だったが、市場評価で差がついた。








engineer_takafumi at 00:39│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ 経営

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