2020年02月08日

世界史を変えた詐欺師たち

本日は東谷 暁 氏の
世界史を変えた詐欺師たち
です。


本書はケインズ、ロスチャイルド、グリーンスパン、
ソロス、など、経済史に登場する人物の
生涯についてまとめたものです。

テーマは「詐欺師」です。


なんとも大胆な言葉ですが、
実際本書を読んでみると、
一国の経済政策であっても、
ほとんど詐欺ではないか、
というものが多いことに驚きます。

経済犯というものは、
傷害や窃盗のような罪悪感を
持ちにくいものなので、
けっこう大胆なことをしてしまうのです。

また、法律の整備が追いついてなくて、
詐欺的な行為であっても、
それが当時は裁けなかった
ということもあります。


本書を読んでみると、
そんな詐欺的な行為が、
一国の大臣や中央銀行の総裁など、
重要な人物によって行われていて、
それが歴史を動かしたことがわかります。

国家は紙幣を発行することができ、
権力を持っているので、堂々と
詐欺的な行為を行うことも
あったようです。

特に戦時中は、非常事態なので、
滅茶苦茶なことが行われていたのです。

世界史を経済面から見る、
という意味でも、興味深い一冊でした。


個人的には、
ニュートンの話が印象的でした。

ニュートンは科学に没頭した学者
というイメージを持っていたのですが、
実際は世俗やお金にまみれていたのですね。


経済について学び始めた人に
お勧めの一冊です。
経済を裏側から見ることにより、
経済学に対する興味が高まることでしょう。



国民の資産を紙くずにしても
犯罪として裁かれないのは、
そこに政府がからんでいるからだ。
あるいは、政府そのものが議会に法律を
つくってもらいながら威風堂々と遂行するからだ。
そして、そのときに使われるのが
経済学と言われる理屈なのである。


紙幣を発行できる国立銀行を設立することを
許可していただければ、
すべての政府の負債を紙幣に転換して、
銀行の利益はその四分の三を王室に提供いたします。
そうすればフランスにとって驚くべき有益な効果を
生み出すことができることと存じます


彼を詐欺師と呼ぶ人は必ずしも
敵対した貴族だけではないが、
彼が詐欺師であるなら、それ以後から現在に至るまで、
経済改革を担った人間たちのほとんどは詐欺師であろう。
なぜなら、経済改革をつかさどる人間のほどんどは
ジョン・ローのコピーだからである。


ニュートンのさまざまな行為を
見ていくときに大切なのは、彼を純粋で世間知らずな
自然科学者としてみてはならないということだ。
たしかに人づきあいが悪く、変わり者で
権威主義的な人間だが、子供のころから
さまざまなつらい経験をへて、
天文学や物理学の世界だけではなく、
多くの世俗的分野にクビを突っ込んだ
人物だったのである。


生身のニュートンとは、怪しげな錬金術に没入し、
知られれば地位を失いかねない神学研究に
浸ったかと思えば、大物政治家たちと交際して
経済的な情報に通じ、高級官僚となって
金融的な犯罪組織を摘発して業績を上げるといった、
とんでもないアクティブな人物なのである。


フランクリンはこの紙幣印刷によって大儲けをして、
さらに他の植民地の紙幣印刷の受注もしている。
ここらへんは、なかなか抜け目のない
商売人であることもたしかだろう。


少し遅れて助手としてフランスに渡った
フランクリン崇拝者のジョン・アダムスは、
娼婦と遊び歩くフランクリンを見て
自らの理想像の修正を余儀なくされた。


ロスチャイルド家がヨーロッパ世界に
金融を通じて支配力を確立したのは、
ナポレオンが最終的に敗北した
ワーテルローの戦いの情報を
操作したからだと言われている。


ネイサンとへリーズは示し合わせて
英国の王立造幣局に、本物と同じ金銀の含有量を持つ
フランスの通過を製造する依頼もしている。
さらには、ロシアの造幣局にも同じことを頼んで、
戦場に東西からフランス(偽)通貨を
供給させる仕組みをたちまちのうちに
作り上げてしまった。


イギリスによるフランス通貨供給業務の指名は、
ロスチャイルド兄弟たちにそれぞれの
通貨センターに常駐することを要求した。
そこで兄弟たちは、多くのマーチャント・バンクや
ヨーロッパ列強の財務担当者との密接な作業を行った。
こうした経験で生まれた関係こそが、
ロスチャイルド家の金融王朝を生みだす
基盤となったのである。


ナポレオン戦争という特異な状況のなかでの活動が、
ロスチャイルド家にとっては都合がよかった。
むしろ戦争が終わって平時になってからのほうが、
特権なしで市場競争しなくてはならなくなるので
骨がおれた。


ロスチャイルド家はヨーロッパ列強や
その他の国々に資金を提供するさいに、
それぞれの国の通貨ではなく、
イギリスの通貨であるスターリング(単位がポンド)
建てで債権を発行させた。


世界中のどこの都市でも、政府の発行した国債からの
利子をスターリングで受け取ることができた。
このネットワーク・システム導入こそ、
ロスチャイルドが世界金融を発展させた
最大の要因とされるものだが、同時に、
大英帝国を後ろ盾として世界金融をロスチャイルドが
仕切るという野望を現実化するための、
ネイサン最後の仕上げといって良かった。


それぞれの国の政府は自分たちの都合で
国債を発行するのに、それが同時に大英帝国の繁栄を支え、
ロスチャイルド家をさらに強化する金融システムに
連結させられるのである。
これこそロスチャイルド家が一世紀を超えて、
世界金融市場において支配者となった
メカニズムだったのである。


急速に所得が伸びたあとに、その伸びが停滞することで
投機に群がる傾向が生まれ、射幸的な気分が
これをさらに助長した。


シャハトはニューヨークの株式市場が暴落すれば、
ドイツも壊滅的な打撃を受けることを
はっきり認識していた。
彼の辞職は、そうしたことから身を遠ざけるための
作戦だったと見る向きもある。
シャハトがなんのためらいもなく困難な
状況から立ち去ったのだとしたら、それはおそらく、
こんな事態を招いた責任は自分にはないと
感じていたからであろう。


メフォ手形の発行は、ナチスドイツが秘密裏に
再軍備を行うことに貢献した。
財務省は会計検査院にメフォ手形のことを
全く報告せず、シャハトが1934-1937年まで
経済大臣だったにもかかわらず、
経済省の役人たちは1936年まで、
メフォ手形のことを知らなかったという。
メフォ手形は国家債務ではなく、
民間の会社の債務であり、それ故に、
メフォ手形には国の署名はなかったが、
国によって支払いを保証されていた


ヒトラーの野望が膨らむなかで、シャハトは
さらなる再軍備推進を阻止する
邪魔な存在に見え始めていた。
しかも、シャハトは講演会などで、
歯に衣着せずにナチスの粗暴なふるまいを批判し、
外国のユダヤ系銀行家たちとも親密に
付き合っていたので、ナチス党員にとっては
彼は獅子身中の虫以外の何物でもなかった。


1944年7月、ついにシャハトは
ヒトラー暗殺計画に関係しているとの疑いで、
警官に逮捕される。
すでにドイツ帝国銀行総裁を辞任した時点で、
彼に「魔術」を生み出す力はなかった。
魔術が効果をあげるためには、
魔術が存在すると信じる人たちの共同体が存在し、
魔術師とされる人間が構成員によって
畏怖されていることが条件なのだ。


シャハトが心ならずも断行して成功させた
「レンテンマルク」による超インフレの終息も、
また、「メフォ手形」による急速な再軍備の実現も、
すべては期間限定つきの「タネ」がちゃんとある
「手品」だった。


シャハトはナチスによって収容所に
送り込まれて屈辱的な生活を強いられ、
敗戦の日まで生き延びたものの、
今度はニュルンベルク裁判で
弁明する日々が待っていた。
この裁判で無罪が確定した後にも、
母国であるはずのドイツの司法当局によって、
ナチ関連裁判の法廷に引きずり出され、
最終的に無罪放免になったのは
1950年になってからだった。


フランス革命のさいの紙幣アッシリアでみたように、
それまでの通貨の制度を変更するという政策は、
もともとはほとんど価値のない紙切れを
通貨として通用させることであり、
その紙切れへの信頼の醸成が失敗すれば
惨憺たる結果を生み出す。


ヨーロッパ証券売買ビジネスが続けば、
当然、アメリカのドルはヨーロッパに流出してしまう。
これではアメリカの経常収支が悪化する。
そこでケネディ政権は、対外投資の利益にたいして
15%もの税金を課すことにした。


ソロスは、大学で学ぶ経済学は
市場が常に均衡に達する効率的なもの
(効率的市場仮説)だというが、
それは間違っていると指摘している。
市場はブームになれば過剰に膨らみ、
やがてバースト(破綻)を迎えて
今度は過剰に縮小するというわけである。


エンロンはあらゆる抜け穴と機会を利用して
電力事業で利益をあげるために、
さまざまな方策をつかった。
価格の高騰にたいしてカリフォルニアでは
2000年に上限価格が設定されたが、
それを回避するためにエンロンは
まず電力を州外の第三者に売り、
つぎにわずかな価格上乗せで買い戻して、
上限をはるかに超える価格で
カリフォルニアに売りつけた。
エンロンがそんな手をつかえた理由は、
上限価格制は州内で発電されて
購入される電気にしか適用されなかったためだ


規制緩和によって新しいビジネスを生みだすとか、
技術革新で経済を活性化するといえば聞こえはよいが、
結局は権益をもつ企業や産業を
取りかえることが中心になる。
新しい生産の伸びや消費の拡大は、
それまでの利権によって恩恵を得てきたもの達の
犠牲において産みだされることが多い。


統計論や確率論で武装された理論によれば、
たとえリスクの大きい負債でも、
ばらばらにして他の優良な負債と組み合わせれば、
投資に耐えられるレベルのリスクで成り立つ
新しい証券が作れることになっていた。
まるでジョン・ローの時代のミシシッピー会社の
証券を連想させる。


金融機関が自己利益を追求すれば、
株主を最大限に守ることになると考えていた。
私は過ちを犯した。


実際には地域も分散していない
劣悪な債権ばかりから切り取った証券を、
格付け会社と結託して安全な証券として
高い格付けをしてもらい、
お得意先には比較的リスクの低いものを売り、
他の客にはリスクの高いものを
売りつけていたのである。


金融取引に関係する仕組みは、
違法行為がつねに起こり得るという前提で、
チェック機能を含んだ技術と制度をセットにした
経済システム全体が構想されなければ
ならなかったはずである。


ビットコインを中心とする仮想通貨ブームには、
金融にまつわる詐欺師の手口と、
バブルの発生から崩壊にいたる要因の
すべてが含まれているといってよい。
あまりにも「証拠」が揃っているために、
逆に熱狂的参加者に「今度は違う」と
信じ込ませている。


貴金属だけが通貨として認められている時代に、
その貴金属が不足しているために
経済停滞が生まれていると考えれば、
紙切れを通貨として国民に強制するのは
有効かもしれない。
その結果、経済停滞を脱出させるのに
成功すれば、称賛されていいはずである。
しかし、その紙切れを乱発して
国民から貴金属を回収し、
やがて紙切れが急激なインフレを生み出して
国民の信頼を失ったときに、
特権的な人間だけが貴金属を
大量に保持しているならば、
それは「詐欺」と見なされるべきだろう。


中央銀行が制御できるお金
「マネタリーベース」を増やしても、
世の中をめぐるお金
「マネーストック」が増えないからだと
ちゃんと断っていた。


もうこのあたりで物価上昇予想と消費行動の間には
必ずしも因果関係が期待できない
と思うべきだったのに、
インフレターゲット論者たちは、
社会調査を軽蔑していることもあって無視した。





engineer_takafumi at 18:38│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ ビジネスその他

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