2020年05月08日

数の世界 自然数から実数、複素数、そして四元数へ

本日は松岡 学 氏の
数の世界 自然数から実数、複素数、そして四元数へ
です。


本書は自然数、整数、有理数、実数、
そして複素数から四元数、八元数と
数の拡張の過程について説明する一冊です。

実際は四元数について
多くのページが割かれています。

大学教養レベル程度の数学力で
無理なく理解できるように書かれており、
読みやすい一冊といえるでしょう。

複素数(2元)の本質を理解するためには、
少し遠回りのように感じますが、
四元数について多少は知っておいたほうが
良いと感じています。

また、四元数は交換法則が成り立たない、
八元数になると結合法則も成り立たない、
というような性質が現れます。

そのような制約の多い「数」を
学ぶことによって、
「数」の本質が見えてくることでしょう。


個人的には、
四元数がそれほど広まってない理由は、
「非可換」であることが大きい
という部分が特に印象的でした。

やはり人は交換法則を当たり前に感じていて、
それを満たさない「数」を
奇妙に感じるのでしょう。


四元数、八元数を学びたい人はもちろん、
複素数をより深く理解したい人にお勧めです。
「数」の本質を感じられる一冊です。



3世紀、プトレマイオス朝のエジプトの数学者
ディオファントスは、著書『算術』において、
4x+20=0 と等価な方程式について、
「この方程式はばかげている」と述べています。


有理数は完備性がいえません。
これが有理数隊Qと実数隊Rの
決定的な違いです。


極限操作の違いですから、
代数的というより解析的な違いといえます。
実数では微分積分学が構築されていますが、
有理数ではあまり微分積分学を
考えられない理由がここにあるのです。


四元数の場合の関数論(微分積分学)は
あまり研究されておらず、
これからどのように発展するのか
分かりません。


四元数が複素数の拡張である
本質的な数であるのにもかかわらず、
それほど広まってない理由は、
四元数が「非可換」であることが大きい



交換法則や結合法則は、
私たちにとって親しみやすく
馴染みのある性質ですから、
「数を拡張しても成り立つのでは?」
という思いがあるかもしれませんが、
どうやら数の世界の法則は、
そのようにできていないようです。


積が大きさを保つような
16次元の数は存在しないことが
証明されています。


八元数にもとづいて「数」の解釈を考えると、
結合法則より
「大きさや共役が定義され、積が大きさを保つ」
という性質のほうが、
「数」にとっては本質的なのかもしれません。





engineer_takafumi at 17:46│Comments(0) ★理系本の書評 |  ⇒ 数学

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