2020年09月24日

面白いって何なんすか!?問題

本日は井村光明 氏の
面白いって何なんすか!?問題
です。



本書は博報堂のクリエイティブディレクター、
CMディレクターで
「ファンタ」や「さけるグミ」を
ディレクションしてきた著者による、
「面白い」の作り方です。

この本の冒頭は、
コピーライター養成講座の
講師をしている著者が、
教え子に「面白いってなんですか!?」と
逆ギレされることから始まります。

しかし、著者はこの問いに
すぐにこたえることはできません。

そこから、「面白いって何だろう」と
著者が思索を始めることから始まります。

この手の本は、抽象的な話から
始まることも多いですが、
本書はとにかく具体的に語ります。

講座の生徒の話、
グループインタビューの話、
広告賞の選考の話、
自主プレ(持ち込み企画のようなもの)の話、
とにかく具体的な例が並びます。

その中で答えのようなもの、
「面白いことは似ていないこと」
「正直になること」
「散らす事」
などが浮かび上がっています。

普通のビジネス書に比べると、
構造的でなくボンヤリとしていますが、
それこそがクリエイティブの本質だという
著者からのメッセージなのだと感じました。


個人的には、
まとめることは楽。
みんなが出したアイデアを、
誰にでも書ける抽象的な言葉へ
グレードダウンしたに過ぎないことが多い
という部分が特に印象的でした。

抽象的なことを話すと、
頭が良さそうに感じますが、
それは「面白い」の対局にあること
であることが良く理解できました。


文章や動画、イラストなどの
クリエイターの方は一読してほしい一冊です。
「面白い」の本質を感じることができるでしょう。





応用できそうに思えても、応用するということは、
無駄のなかった状態からどこかをずらすことになるので、
面白くなる可能性が高いのです。


「共感」とは、「みんなが感じていること」、
と簡単に考えがちですが、その実体は、
「普段は誰も思い至らないけれど、言われると誰でも簡単に理解できること」、
というのが正確ではないでしょうか。


中高生は企画が面白いと思った時には
「面白い!」と言ってくれましたが、
そうでない時に返ってくる言葉は
「面白くない」ではなく、「よく分からない」。
「面白い」の対義語は、「よく分からない」だったのです。


「面白い」は「足せるもの」ではない。
「足す」と「よく分からない」となる。
「面白い」の対義語は「よく分からない」だったわけです。


外部の人にはその面白さは分からない。
グルインでも、全くそうは思っていなかった箇所で
「内輪」だったと気づかされることが多々ありました。


「どうせ俺の言葉なんて誰にも分ってもらえねーのさ」と、
良い意味で悲観的になることを
強くお勧めしちるわけです。


大事なことは、まず企画を見てもらって、
その後に、意図を話すことです。


クライアントさんにプレゼンする時は
企画意図から話してなるべく分かりやすさを
演出することも大事ですが、
社内打ち合わせでは弱点を見つける方に意味がある。
なるべく分かりにくい状態で
見てもらった方がいい。


普通に見えるもの同士は、なんだか似ている。
「普通」とは、「似ている」ということではないか。
一方で、面白くて目立っているもの同士を比べても、
それぞれ個性的で共通点はない。


「面白い」とは「似ていないこと」ではないか。


面白いものを作れないのは、
面白くないものを作っていたというよりも、
似ているものを作っていたから、
と言えはしないだろうか。


世の中の情報量が多くなり、多様性が増えると思いきや、
実際は「俺はこれを知ってるよ」と
流行っていることを語りたがる人が
増えた印象はないでしょうか。


詰まるところ、自分で選べない、選ぶ基準が分からない。
「選び方」が分からず困っている人が
多いのではないでしょうか。


生徒さんを見ていると
「うまく説明できないんですけど、なんか好きなんですよね」
と選ぶ人の方が、
その後良いコピーを書くことが多いです。


自分なりに考えたのに、世間の目を気にして選んだ、
という感じ。
結果、なんとなく見たことのある
言葉を選ぶことになり、似てしまうことになる。


みんなと似た「考え方」で小さな工夫をしても無駄で、
大元の「考え方」が違わないと印象は大きく変わらない。


そこで提案なんだけどさ。
今日君が出したコピーは、他の人とかぶっていたわけじゃん。
選び方を変えて、次回は絶対かぶらないことだけを
目標にしてみようよ。


考えることの本質って、いきなり閃くとかじゃなくて、
たくさん考えた中から違うものを
省いていくことじゃないかなあって思うんだよ。


「人と違う」と「似ていない」、
これはほぼ同じ意味なのですが、僕の中では、
取るべき行動が全く違ってくるので、
敢えて言葉を分けていました。


人と違うものを考えようとすると、
とにかく違いを出さなければいけないと
無理やりひねり出そうとしてしまうので、
この生徒さんのポスターのように、違うもの、ではなく、
変なもの、になってしまいがちなのです。


素直に考えたものの中から、
似ているものを省くだけでいい。
面白いことは違うこと、とは言わず、
面白いとは似ていないこと、としたのは、
そういう意図でした。


ファッションでもさ、
無理してる感じの人ってダサく見えるじゃん。
他人とは似ていないけど、その人には似合ってる、
ていうのがおしゃれな人だと思うわけ。


「ペットボトルはリサイクルへ」なら分かるけど、
「ペットボトルにアンコールを」としちゃったら
パッと見よく分かんねーだろ。
そうなっちゃっているわけよ


こうなっていればコピーとして成立している、
というルールがないから、
語呂合わせや反復・対句、倒置法などを使うと
工夫できたつもりで安心してしまう。


コピーに定型などないのに、逆に、
みすみす定型のようなものにはまろうとしている。


そのいらぬ工夫だけが目立ってしまい、
肝心の伝えたいことが分かりにくくなってしまう。
結果、コピーライターとして工夫しましたよ、
と自己主張しているようなコピーに
なってしまうのです。


コピーや文書を書く時には、
まずどんなに長くなってもいいから
伝えたいことやその気分を正確に全部書き出してみて、
そこから短くしていくと考えるのが良いと思います。


少しずつ削り、都度都度元の長文と比べることで、
削っても良い単語、削ってはいけない単語が分かってくる。
レトリックなどは、それを使うことが目的ではなく、
伝えたい気分を消さずに
全体を短くするたえに使うものなのです。


とにかく、分かりにくいものは
絶対に面白くならないから。
余計な小細工はするなよ。


広告に限らず企画のアイデアは、
その中心になる単語を見つけることと
ほぼイコールです。


クリエイティブとは自分らしく考えるものだとしたら、
文章における自分らしさとは、
文体その他いろいろあるのでしょうが、
まずは他の人が使わず自分しか使わない単語に出る、
と言えるのではないでしょうか。


ある程度頑張って考えたら、
ノートを埋めた言葉が現段階での
自分の実力だと思った方がいい。
ならば今までとは違う「選び方」をすることで、
違う頭が働き始め、自分が既に考えた中から
ヒントを見つけられればそれでいい。


ノートの中にひっそりと書いてある珍しい単語。
それがあなただけの「個性」なのだと思う。


自分ではエッセンスを抽出して
書いたつもりなのでしょうが、
エッセンスを抽出するとは
具体的でナマな単語を外すことだと思っている。
逆なのです。


書くほどのエピソードじゃないし、
と思って書かないのかもしれませんが、
それを書かないと誰にでも書けるものにしかなりません。
「自分らしく」そのまま書いてみましょうよ。


似ていない単語がノートの中に見つけられない人は、
書けない、のではなくて、書かない、だけなのです。


キレイ事のようですが、文章を書く時は、
自分に起こったことや自分の正直な
気持ちを書いた方がいい。


コピーの嘘は、バレやすい。
良いコピーは正直に見える。


「まとめてきました」と言うと、全体を俯瞰して
高度なことをしている風に聞こえますが、
その実、まとめることは楽。
みんなが出したアイデアを、
誰にでも書ける抽象的な言葉へ
グレードダウンしたに過ぎないことが多い。


「まとめる」は「散らして」を軽視させます。
そして僕らも、時間のない仕事が多い中、
つい「散らす」大切さを忘れがちだと思うのです。


あるテーマで直ぐに発想される単語から
二次的三次的に出てくる単語を精査すると、
そのテーマとも相性が良く、
意外にも世の中であまり使われていないものを
見つけられたりする。


経験上、子供向けだから大人は分からなくていいや、
女性向けだから男性はいいや、と
ターゲットを絞って考えると、
なぜかメインターゲットのウケも悪かった気がする。


CMは往々にして、誰もが知っていることを
説明してしまうことで退屈に見えてしまうものです。


日常会話でも話のつまらないオジサンは、
想像がつく話を一から説明したがるものですよね。


元々明らかに他と似ていない特徴があった商品に、
きちんと似ていないことが分かりやすい名前をつけたこと。
ネーミングが素晴らしい。


内輪ウケしているようで危ない、と思った。
経験上こんな雰囲気の時は、
どこかで判断を間違ってしまう気がしたのです。


何がメジャーかなんて分からない、
メジャーじゃない部分を省いていくしかない。
確実にメジャーになる保証はないが、
粛々とそうする以外にやれることはない


他と似ていない文章にするための
最も簡単な方法は、自分の経験を書くこと。


経験上こうすると失敗する可能性が高い、と思う。
すると具体的な対策を考えられるようになる。
そうして生まれたものがアイデアと呼ばれるのではないか。


誰でも経験を積めば、確実に、
失敗しそうなことは分かるようになる。
取り除くなり、書き換えるなり、
やるべきことが分からずグルグル回っていた頭は、
そこから具体的に考えられるようになる。
面白い、は、そこから生まれる。






engineer_takafumi at 00:26│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ クリエイティブ

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