2008年10月24日

量子力学が語る世界像

今回は和田純夫氏による
量子力学が語る世界像
です。


本書は量子力学についての理解を深めたくて
購入してみました。

量子力学はシュレディンガー方程式を
基礎とする理論で、原子レベルのミクロな世界、
さらに電子や陽子、クォークの世界までもを
記述することができます。

しかし、その意味するものが
あまりに人間の常識から離れているが故に
量子力学をどう解釈(理解)すれば良いのかという
奇妙な問題が生じてしまったのです。

この本はその解釈問題の一つである
「多世界解釈」について解説されています。


この本を読んで大きな気づきがありました。

科学では、ある思想は普通○○理論と呼びますが、
この本で扱っているものは多世界解釈で
「解釈」であって、「理論」でないのですね。

これは、多世界解釈が「科学」ではないことを表しています。

というのも、科学というのは反証可能性があって
初めて科学と呼ばれるべきなのです。

多世界解釈が正しいかどうか、
これは本質的に人間には確かめることができません。

ですから、これは科学でないのです。

むしろ、神は存在するのか?
人間は何から生まれてきたのか?
などという、哲学と同じレベルの問題です。


この本を通し、哲学と融合する最先端科学の一派に
触れることができます。

それほど難しい数学や物理の知識は必要ないので、
大学教養程度の知識で十分読み通せるでしょう。
興味のある人はぜひ一読下さい。



その結果でてきた一つの考え方が「多世界解釈」である。
この言葉が示すように、
「この世には無数の世界が共存している」という、
一見、摩訶不思議な理論である。


数式上ではこの奇妙な事実を説明することができた、
しかしこの解決策の物理的な、
つまり本質的な意味は明確にされなかった


この波は現実の何かに、対応しているはずである。
ではそれはいったい何なのかという疑問が、
量子力学(波動力学)の解釈問題の出発点である。


つまり、電子単独で状態を考えてはいけない。
世界中のすべてのものをひとまとめにした状態を考え、
それが一致しているときにのみ共存度を加えるという原理である。


人間という存在も精神の機能も、世の中の現象の一つである。
だから人間は、共存している複数の外側に立って、
全体を見通すことはできない。
人間も一つ一つの状態の中に存在し、
自分が存在している状態しか観測することができない。
それが人間による観測に対し、
量子力学が厳密な予言ができない理由である。
量子力学は自然を完全に記述しているが、
人間はその一側面しか見ることができないのである。


多世界解釈とは、量子力学といえども
「神様はサイコロをふらない」し、
自然界の変化を表す法則に、
偶然の入りこむ余地はないとする理論だ






engineer_takafumi at 23:00│Comments(0) ★理系本の書評 | ⇒ 物理・科学哲学

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