2010年05月19日

学力低下は錯覚である

本日は神永 正博氏の
学力低下は錯覚である
です。


本書は小飼弾氏のブログで取り上げられており
興味を持って購入しました。


教育をめぐる議論をするとき、
よくこんな発言が飛び出してきます。

・最近の学生の学力は「ゆとり教育」で低下している
・学生の理工系離れが進んでいる

もう、一般常識のようになってしまった
こんな認識は本当に正しいのでしょうか?

結論から言うと、かなり統計上の錯覚が混ざっています。


この本は、そんな教育にまつわる通説を検証し、
何がわかって、何がわからないかを明確に示します。

新聞や雑誌の記事でも、一応データは出ているのですが、
思った以上に、基本的な解釈を間違えています。

いつのまにか、間違った認識が入り込むということは
非常に危険なことです。

この本は自分でデータを見て、
検証する大切さをおしえてくれます。


数字を読む力をつけたい人にはおすすめですね。
さらに、大学や教育に興味があるのならば、
必読の一冊になるでしょう。




実は、「円周率=3」は事実無根ではないにしても、
極端に誇張されたものであった


これまでと高校生の学力レベルが全くかわらなかったとしても、
大学の入学定員を減らさなければ、大学志願者数が減るごとに
どの大学においても学生の学力は下がる。


傑出したグループに属する人間の間では、能力差は非常に大きいが、
凡人クラスでは団栗の背くらべでどれも似たり寄ったりということか。


昔の人を現代に連れてきて上位から同じ比率だけを
大学に入れたとすれば、落ちこぼれが大量に出るということだ。


高校までに習うことというのは、世間で了解されているよりも、
はるかに高度なのである。


国家の科学力、技術力を決めるのは、平均的な子供たちが
数学・理科を好きかどうかではないのだ。


日本では、経済への寄与がほとんど変わらないのにもかかわらず、
就業者数が減っている。
(中略)
実質GDPに占める製造業の割合に変化はないのであるから、
これは、製造業の効率が向上したことを示している。


昭和45年も平成17年も、男子の4人に1人は
工学系に進学しているのである。


理工系離れとよばれている現象は、
実は理工系全般の人気が下がったとうことではなく、
工学系の人気が下がったということなのだ。


工学系の卒業生は、文学部の卒業生よりも年収が高く、
文系が優遇されているようには見えない。


筆記試験を経由しないで入学した学生の多くは、
大学の講義についてこられないのである。


秋田県は、2005年から2035年までの30年間で
人口が約3分の2まで減ってしまう上、年少人口は、
現在の半分にも満たないという推計結果となる。


日本の大学で教えていると、勉強するのが自分のためだという
意識が希薄な学生が多いように感じる。






engineer_takafumi at 01:44│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ 勉強・教育・心理

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