2010年05月31日

粘菌 その驚くべき知性

本日は垣 俊之氏の
粘菌 その驚くべき知性
です。


当面PHPサイエンス・ワールドは全てチェックしようと思い、
本書を購入しました。

粘菌という言葉は聞きなれないかもしれませんが、
言葉の印象から与えられるとおり、
ある非常に原始的な生物です。

本書では、この原始的な生物が高等な問題
(迷路や危険度最小の経路問題)
などを解いてしまう、ということが紹介されています。

最も、原始的な生物が「知性」を持っているのです。

ちなみに、著者はこの研究で、
イグ・ノーベル賞を受賞されたそうです。


本の第一印象に反し、問題のモデル化など、
数学的な難しい話が長く続いて面くらいましたが、
最後に「知性とは何か?」という本質的な話題に戻り、
その部分には非常に興味が持てました。

「知性」の本質に興味を持っている方、
あとは、経路問題のアルゴリズムなどに興味がある方は
ぜひ一読しておいたほうが良い内容でしょう。



いま、あっさりと当たり前のように
「身体運動が情報処理を担う」と述べました。
じつは、これはたいへん大胆な見方です。
脳や神経ではなくて、体が脳的な活動をするといっているわけですから。
「体が考える!?」ということまで暗に主張しています。


進化の歴史を振り返れば、神経系が現れたのは
ずいぶんと後になってからのことで、
それまでの生きものはずっと神経なしに情報処理をしてきたのです。


ダイナミクスの記述は、状態そのものを記述するのではなく、
その背後にあって状態を作り出す作用のレベルで記述を試みるものです。
状態の時間変化率(つまり時間微分)を含んだ方程式になるのは、そのためです。


日本語で言う「知性(智性)」と、英語の「intelligence」では、
そもそも、その意味するところが食い違っていても不思議ではありません。
これは私の勝手な想像ですが、彼らは「intelligence」を、
神様が人間だけに与えたもの、と捉えているようです。


人間がどうすればよいか、はっきりとはわからないような状況でも、
うまく生存目的を実現できるのなら、
知的であるといってもよいのではないでしょうか?






engineer_takafumi at 02:28│Comments(0) ★理系本の書評 | ⇒ 生物・化学

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