2010年08月16日

土の科学

本日は久馬 一剛氏の
土の科学
です。


当面PHPサイエンス・ワールドは全てチェックしようと思い、
本書を購入しました。


タイトルだけを見たときは「土」というキーワードには
ピンときませんでした。

しかし、本を読み進めるに従い、ハッとさせられました。

植物とは土が作り出すものだと、
そしてそれを食べる動物、人間を含めて、
陸上の全ての生き物の根源が「土」なのです。

この本を通じて、植物や土の中の養分、微生物についての
基本的な知識を得ることができました。


また、水田についての話が詳細に述べられており、
なぜ開墾の労力が多いにも関わらず、
古代から水田による稲作が盛んだったかが
非常によく理解できました。


環境を語る上で「土」の知識は必須です。
環境問題を論ずる人はこの程度の「土」の知識は
必ず身につけておいたほうが良いでしょう。

環境問題が緊縛してきた現代に生きるものとして、
ぜひ一読をおすすめします。



普通の人が土とは考えていない空気と水とで全体の半分を占めており、
固体の砂や粘土などと有機物、それにわずかながら生物体などを含めても、
全体の半分以下になっていることが多い。


今日、畑作のための「土づくり」ということがよくいわれるが、
その中身は生物の餌になりやすい有機物を施すことで、
かれらに団粒構造を作ってもらうための手助けをすることに
尽きるといってもよい。


「土壌は一日にして成らず」である。


日本ではもう何十年も酸性雨が降り続いているが、
土のpHが明らかに低下したという話はまだ聞かない。


水田から大気中に出てくるメタンの90%以上が
イネのからだを通してのものとされている。
そして、それが地球温暖化ガスとして問題になっているのである。


水田に水を張って還元反応が進むと、そのpHは6.5から7くらいに上がる。
つまり中性に近づく。還元反応は水素イオンを消費する反応なので、
こういうことが起こるのである。


水田では、毎年毎年、同じ田んぼでイネを作るのは
当たり前であってだれも連作を気にしない。
(中略)
これはイネという作物に連作障害がないということではなくて、
イネを畑で連作すればやはり障害の起こることが知られている。


現在も、灌漑農業における塩害問題には深刻なものがある。
(中略)
この莫大な損失を前もって防ぐには、作物に利用されなかった水を
地下深くへ排除する手立てを講ずればよい。


マツタケの場合は樹木の根につく外生菌類といわれるもので、
菌糸が根の表面を覆うが、一部の菌糸はマツの根の中に進入している。
土の中へ伸びた菌糸はリン酸などの無機養分を
吸収して宿主であるアカマツに供給するが、
その代わりにマツは根から菌へ光合成産物を供給している。


近頃は人が手をかけなくなって土が肥えたために、
マツがもともとその地に適応していた広葉樹に席を譲って、
再び昔の自然の姿に還る過程にあるように思われる。
里山は人が手を加えることで維持されてきたという事実の、
もう1つの例証なのだろう。


重金属は土によって特異的に強く吸着されて
土壌中に集積する傾向があるため、
長期の運用によっても有害にならない基準値を見出す必要がある。


肥料資源の将来を展望するとき、最終的に制限因子となりそうなのは
エネルギーとリン酸であるが、エネルギーについてはすでに
いろいろな対応がとられつつあり、結局、最後に残るのは
リン酸資源の問題であると思われる。







engineer_takafumi at 22:41│Comments(0) ★理系本の書評 | ⇒ 地学・環境・宇宙

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