2010年08月08日

トレードオフ

本日はケビン・メイニーの
トレードオフ
です。


本書は表紙を見て、ジム・コリンズの著書かと思って購入しました。
しかし、良く見てみるとジム・コリンズは序文を書いただけでした。

だまされたような気もしましたが、内容はとても興味深かったです。


例えば、高級ブランドというわれるものが、敷居を下げて
値段を安くして顧客の裾野を広げてみたとします。

すると、一時的には売り上げが増加するでしょうが、
長い目でみればブランドの価値を下げてしまい、
いわゆるセレブと呼ばれる、上客を遠ざけてしまうでしょう。

つまり、ビジネスでは、
この本でいうことろの「上質」と「手軽」が存在しているのです。


このことは、みんな気づいていると思いますが、
この本が主張するのは「上質」と「手軽」はトレードオフであって、
両方をとるという選択肢は存在しない、ということなのです。

本書の中では、この2つを同時に追い求めて、
失敗してしまった例が多数紹介されています。

ですので、商品を「上質」と「手軽」軸で考えるときには、
中道でなく、どちらかに特化した戦略をとるべきなのです。


また、価格が低いということは「手軽」さの要件ですが、
価格が低いという単独の価値軸で存在しているわけではありません。

つまり、価格が低いけれど手間がかかってしまう(手軽でない)
というものは、一般には受け入れられづらいのです。


ジム・コリンズの著書ではありませんが、
読者層はコリンズのものと重なると思います。

ビジョナリーカンパニーに感銘を受けた人は
ぜひ一読されることをおすすめします。





手軽であるとは「必要とされる」ことであり、
上質であるとは「愛される」ことなのである。


ブルーレイやキンドルのような新世代のテクノロジーは、
生まれた時はほぼ例外なく不毛地帯にいる。


手軽さの本質が安さと便利さにあるなら、
そこに上質さを持ち込むのはすべてをぶち壊しにする行いである。


価格は手軽だったかもしれないが、
オーナーにとっては不便もいいところだった。


両社が失敗したのは、手軽さがいくつもの要素で成り立つことを
理解していなかったからだ。
入手や利用のしやすさを実現するためには、
必要な領域全てに秀でていなくてはいけないのである。


ニューヨークのマンハッタンでは、わずか数ブロックに
何百もの店がひしめき合っているため、
わざわざ中心部のウォルマートまでいくのは、
近くの店でお目当ての品を探すより不便かもしれない。


いつでもどこでも身近にあって、
しかもほかの店にはない心地よいよさがある店
愛されて、なおかつ必要とされる存在を目指したのだ。
これはまず不可能である。


iPhoneがなかったらどうなっていたかを想像してみるとよい。
その場合、アップルはコンピュータとiPodだけを製造していることになるが、
どちらももはや人々の心を躍らせる力を持たず、
新鮮味と輝きを失った企業という印象が広まっていたであろう。


上質かどうか、手軽かどうかの基準は、
テクノロジーの進歩によって絶えず引き上げられていく。


音楽のMP3に相当するものは、今の高等教育には存在しない。
簡単に安く手に入りながら、企業のマネジャーから
価値を認めてもらえるような学位はないのである。
上質と手軽のバランスがひどく崩れてしまっている。






engineer_takafumi at 08:07│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ 経営

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