2012年02月12日

細胞が自分を食べる オートファジーの謎

本日は水島昇氏の
細胞が自分を食べる オートファジーの謎
です。
細胞が自分を食べる オートファジーの謎 (PHPサイエンス・ワールド新書)

当面PHPサイエンス・ワールドは全てチェックしようと思い、
本書を購入しました。


この本のテーマであるオートファジーという現象は、
生物の細胞が自分自身の一部を分解する(食べてしまう)
という驚くべきものです。

ただ、その働きは決して自虐的なものではなく、
生命を維持するために必要不可欠なものなのです。

特に、飢餓に対する対応、細胞内の浄化という観点で
重要な役割を担っているようです。


また、この分野の研究は、まだまだ始まったばかりで、
本書はオートファジーを扱った始めての一般書であるそうです。

私は生物分野にはあまり詳しくないのですが、
ある程度知識のある人から見れば、
まだ研究の途上にある研究の混沌とした様子が
より感じられるのではないでしょうか?


学部教養〜専門初級の生物の知識がある人にお勧めです。
最先端の研究を垣間見ることができるでしょう。



炭水化物と脂肪の主な役割が自らが燃えてエネルギーを
作り出すことにあるのに対して、
タンパク質は私たち生命体の営みを直接司る機能分子に姿をかえるからである。


タンパク質の機能の多くは試験管内でも再現できるので、
それ自体が生命というわけではない。


私たちは一日になんと200g程度の自分のタンパク質を
アミノ酸に分解している。
これは食事の約三倍にあたる。


オートファジーの最も基本的な役割は飢餓に耐えることである。


オートファジーは細胞の中をきれいにする浄化作用ももっている。


多細胞生物になると個体の寿命も延び、細胞の使い捨てだけでは
生命の維持はこんなんとなった。
そこで、生物は巧妙にもそれまで飢餓応答システムとして用いていた
オートファジーを細胞内浄化システムとして
転用するようになったのではないかと考えられる。


現時点ではオートファジーと最も関連の深い病気は
パーキンソン病であるといって良いだろう。


オートファジーは腫瘍の発生を抑制する一方で、
発生してしまった腫瘍細胞にとってはむしろ
サポート役として機能していると考えられる。






engineer_takafumi at 15:49│Comments(0)TrackBack(0) ★理系本の書評 | ⇒ 生物・化学

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