2015年04月17日

シリコンバレーの交渉術

本日はオーレン・クラフ 氏の
シリコンバレーの交渉術
です。


本書は交渉術の名著と聞き、興味を持って購入しました。


著者は投資銀行に勤務し、シリコンバレーなどの
機関投資家などから巨額の資金を調達するスペシャリストです。

著者から見れば、投資家は「顧客」のため、
丁重に、下手に出るというのが一般的な感覚だと思います。

しかし、特にこのビジネスに関しては、
「買ってもらう」ではなく「売ってあげている」という
売り手が主導権を持った状態を作ることが重要なのです。

本書は交渉術と名付けられていますが、
ほとんどの内容は媚びがちな「売り込む人間」が
顧客の上位に立つか、ということに割かれています。

売り込むにあたって、アポ取りから面会に至るまで、
買い手の立場を高くする、数々の「罠」が仕掛けられています。

それに自覚的になれるだけでも、本書の価値は高いと思います。


訳書独特の言い回しと「フレーム」など独自用語が多いという
読みにくさはありますが、それを差し引いても良書です。


個人的にはレストランの敏腕ウェイター「ブノア」の話が
大変印象に残りました。
顧客に対しても、場の主導権を握る方法やその思想が
はっきりと浮き出ている例だったと思います。


人に売り込む仕事をしている人で「卑屈になってしまう」という
悩みを持っている人にお勧めの一冊です。
パワーを自分の方に引き込み、交渉の主導権を得るための
ヒントをつかむことができるでしょう。



世界のあらゆるものを潜在的に危険とみなすことで、
人間は数百万年の間、生き延びてきた。
(中略)
新しいものに出会うと、今でも人間は(無意識のうちに)
この態度をとる。
そして、何かを求めて売り込みを図る人が現れたときにも、
同じことが生じるのだ。


フレームとは、自分のパワーや権威、強み、情報、地位を
まとめるための道具だ。
1. 誰もが、自覚のあるなしにかかわらず、フレームを使っている。
2. 人が出会うとき、異なったフレームが持ち込まれる。
3. 異なったフレームが長時間、同じ場所で共存することはない。
衝突が生じ、いずれかのフレームが支配権を得る。
4. 生き残るフレームは1つだけ。ほかのフレームは壊れて吸収される。
常に強いフレームが弱いフレームを吸収する。
5. 勝ち残ったフレームがその場を牛耳る。
これがフレームコントロールをするということである。


時間的プレッシャーをかけてくるのは典型的なパワーフレームだ。


パワーフレームに立ち向かうときは、軽いショックを与えるような
行動をよると良いが、敵対的であってはならない。
果敢な抵抗と軽妙なユーモア。この方法で相手の注意を引き、
「ローカルスターパワー」を生み出して自分の地位を高めるのだ。


フレームコントロールを得るポイントは、拒絶し、
次の点を明確にすることだ。
「まだです。これは私の会議。私が決めた議題に沿って、
私が決めた時間配分通りに会議を進めます」


相手 よくおいでくださいました。
    ただ、午後はあいにく15分しか時間がないんです。
あなた 結構です。私は12分しかありませんから。
 こう言って"微笑む。でも、本気だ"。


フレームがあなたの手にあるとき、ほかの人は"あなた"に反応する。


相手があなたを価値あるものとして手に入れようとしているかのように、
フレームをつくり直すのだ。


物語的情報と分析的情報は共存しない


アナリストフレームの野放しにすると、あなたの売り込みは台無しになり、
最終的には砕け散ってしまう。
アナリストフレームはあなたの話をこんなフィルターにかける。
1. 事実のみに注目する。
2. 美的要素、創造的要素には何の価値もない。
3. 数字や統計を使ってすべて裏付けされなければならない。
4. アイデアや人間関係には何の価値もない。
人々をこのフレームに近づけてはならない


誰かを追いかけているとき、誰かを自分自身より高く評価しているとき、
私たちは自分を従属的で不利な立場に立たせている。


お金はどこでも得られるが、あなたは1人しかいない。
あなたと取引できるのは特別なことだ。


ベータトラップは儀式のように繰り返し行われている日常的な行為で、
それが発動されれば、はっきりそれをはわからないうちに
効果的にあなたのステータスを下げる。


自分でつかみとってコントロールできるのは状況的ステータスだけである。


人に対して抱く印象は、その人に関して持っている情報の平均値であり、
情報の総和ではないことが研究でわかっている。
だから、偉業を1つ話す方が、偉業とかなりの業績を1つずつ
話すよりいい印象を与えられる。


心の論理が機能していると、人の行動の裏にある考えや願望、
意図を理解することができる。
ある出来事を1つの視点だけで見ている人の心の論理は弱い。
心の論理が強いと、他者がさまざまな視点をもっていること―
そして、それに関してさまざまな知識があることや、
彼らの願望が必ずしもあなたと同じではないこと―を理解する。


人は中レベルの知的複雑さを好むのだ


相手の関心を引きつけておくには緊張
―低レベルの対立― がなければならない。


アイデアの実現に向けて売り込みをするとき何に焦点を絞るか。
私ならまず予算から始める。多くの人が予算でつまずくので、
ここで差をつけておくとよい。


あなたのアイデアの概要を語るのに10分以上費やしてはいけない。


私たちはほとんどの場合、評価や分析といった冷たい認知処理ではなく、
"温かい認知"に基づいて大きな決定を下している


売り込みでは、冷たい新皮質と関わっては"いけない"。


肝心なのは、苦境に立ったあなたがどうするかだ。
困難に突き当たってもそれを克服する人物、
それが物語を聞く人々の心に訴えるのだ。


拒絶に関して厄介なのは、決してそれに慣れないことだ。


典型的な承認欲求行動。必死になっているというサイン。
預金残高がゼロに近い起業家の経営する切羽詰った企業と
手を組みたい投資家などいるはずがない。


欲しいという気持ちは弱さである。


自分の得意なことに聞き手の関心を向けるフレームをつくり出す


何度も売り込みを経験してわかったことは、
人は言われた通りにはしないということだ。
自分で決定する自由意思を持っているかのように
感じなければ気が済まないのだ。


ユーモアを利かせるのは、確かに緊張しているが、自信があるので
ちょっとふざけるだけの余裕があるというところを見せるためである。







engineer_takafumi at 01:08│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ ビジネスその他

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