2015年10月15日

半導体工場のすべて

本日は菊地 正典氏の
半導体工場のすべて
です。


本書はちきりんさんのブログで取り上げられていて
興味を持って購入しました。


本書はNECの元半導体技術者による、
半導体工場のすべてを書いた本です。


私は半導体のエンジニアですので、知っている事ばかりと
思えば実はそうでもありませんでした。

リソグラフィやエッチングなど、主要工程に対する知識はあっても、
用力や建物、作業者のシフトなど、以外に知らずに
「ああそうだったんだ」と思えることが多かったです。

かなりの分量なので、半導体が専門で無い人は
一気に理解することはできないと思いますので、
パラパラめくってみて、興味のあるところから
読み始めたほうが良いかもしれません。


個人的には、不良サンプルの廃棄をいい加減にしたために、
ヤクザに脅されることになった話が一番印象的でした。


半導体業界を顧客にしている人が業界の研究をするのに
お勧めの一冊です。
これ一冊を手元においておけば、半導体業界の人と会話するのに
不自由を感じなくなることでしょう。




テレビなどで半導体工場の映像が流れることがありますが、
一般の人にも見栄えが良いせいか、
このボンディング工程が使われることが多いようです。


半導体産業が設備産業というのは的を射ています。
また減価償却の年限がいかにクリティカルであるかもわかるでしょう。
一時期、日本における人件費が高いことが問題で
あるようにいわれましたが、半導体製造に関する限り
それほど大きくないことがわかります。


ある時、その筋らしき人が会社に現れ、
廃棄したはずの会社のロゴ入りICの山を見せながら
「これをいくらで買って貰えまっか?」と持ちかけてきたというのです。
会社側が拒絶の姿勢を匂わすと、
「さよか、ほんなら然るべきルートから市場にだしてもえぇさかいに」
と脅したそうです。
これなどはズサンな廃棄処分の典型と言えるでしょう。


喫煙者がクリーンルームに入室する際には、
備え付けの給水機から水を一口飲まなければならない
というルールがある。


IC製造用のクリーンルームでは、清浄な環境を維持するために、
清浄な空気の層流(ラミナーフロー)が導電性の床面に向けて
ダウンフローで流れ続けいています。


最悪、爆発などの事態が生じた場合には、そのエネルギーを
天井方向へ逃がしてやることで横方向への影響を抑えるための
天井の耐圧強度を周辺の壁より弱く設計しておくなどの
「防爆システム」上のさまざまな工夫も施されています。


超純水(UPW:Ultra pure Water)は10MΩ・cmもの
高い電気抵抗を持っていて絶縁物と言えます。
(中略)
二酸化炭素(CO2)を超純水に溶け込ませることで電気導電度を上げて
帯電を防止する工夫がされています。


クリーンルームの中を歩いて行くと、
他の場所に比べて寒く感じる場所があるはずです。
そこはリソグラフィの領域で、特に高いクリーン度が要求されるため、
ダウンフローの速度を他の場所より上げることによって
よりクリーン度を上げているのです。


「横方向の空気の流れ」がある場所にも注意して下さい。
特に出入りのできる区切られた場所では、
片側が陽圧に、他方が陰圧になりますが、陽圧部の方が
よりクリーン度が高くなるように設計されています。









engineer_takafumi at 00:06│Comments(0) ★理系本の書評 | ⇒ 電子・電気

コメントする

名前
 
  絵文字