2016年12月04日

現象を解き明かす微分方程式の定式化と解法

本日は小中 英嗣氏の
現象を解き明かす微分方程式の定式化と解法
です。


本書は担当編集者の方よりご献本頂きました。
太田様、ありがとうございました。


本書は大学で教鞭をとっておられる著者が、
「数学や物理の知識はどうやって使われるのか」
ということをしつこくしつこく書いたという一冊です。

私も、「高校数学の使い方」の本を書きましたが、
実際、大学院や企業の研究レベルで使われている数学
といっても、高校数学レベルかそれに少し毛のはえた程度
というものが多いです。

本書は数学を使うことにフォーカスされており、
高校数学程度の最小限の数学力で、
数学の使われ方が理解できるように配慮されています。


また、演習問題も興味深かったです。
典型的な力学や電気工学の問題はもちろん
貯蓄の金利の問題や生物の個体数の問題など、
なるべく、広範囲の現象を対象にしています。

さらに、単に答えを求める問題だけでなく、
わざと計算を間違えて得た解の検証をする問題、
物体の落下についてアリストテレスとガリレオの主張
をそれぞれ定式化する問題など、
様々な方面から微分方程式を使う訓練を行って
理解を深められるようにできています。

個人的には最後の(半ば哲学的な?)演習問題が印象的で、
自分が学生だったら、こんな先生の授業を受けてみたい
と思わせられました。


高校の物理の授業に物足りない高校生、
理工学部の学部生にお勧めの一冊です。
数学の使われ方のイメージをつかめることでしょう。



定式化(formulation)とは、
「現象や問題を数式の形で表現すること」です。


インピーダンスとラプラス変換はその結果が驚くほど似ていますから、
電気回路のインピーダンスについて知っておくと、
電気回路もラプラス変換もどちらも理解できてお得です。


微分方程式を解くことは、微分方程式に含まれている
微分を積分を使って取り除くことでもある。


自然界でのすべての炭素中に占めるC-14の割合はほぼ一定であり、
生きている動植物は呼吸や食事から外界の炭素を
常に取り込んでいるため、体内のC-14の比率もほぼ一定である。
しかし、動植物が死ぬと新しいC-14が体内に入らず、
C-14は一定の割合で崩壊してN-14になるため、
死後の動物や伐採後の植物内のC-14の濃度は、
時間の経過とともに現象する。
しかも、C-14の濃度の変化は、非常に規則的に起こるため、
これを利用して考古学的資料の年代を推定できる。


微分方程式を用いて生物の増加・減少の規則を定式化することは、
未来の動向を予測することに活用されている。


閾値にSが含まれていることに注意しよう。
Sは人口密度に関わる定数である。
つまり、同じ病気であっても人口密度が一定以下であれば大流行はなく、
一定を超えると爆発的に(指数関数的に)流行しうる。


感染症の拡大を防ぐことは「疫学的閾値をいかに小さくすること」
と言い換えることができる。
今回のモデルの場合は、β、Sを小さく、γを大きくすればよいことになる


見た目や分野が異なると思われる系の間にも、
数学的な類似(アナロジー)があることがよくある。
力学の問題がわかれば電気の問題もわかるし、
その逆もいえるのである。
このことは、物事の振る舞いを数学的に抽象化して
取り扱うことの大きな利点の一つである。


大規模な建造物(高層ビル、橋など)にはさまざまな要因
(風、地震、自動車の走行など)でいろいろな周波数の振動が加わるので、
構造のそれぞれの部分での固有振動数が異なるように設計し、
強制発振を防いでいる。


物体の運動を客観的に表すことが力学の目的であった。
力学がなぜ微分方程式との結びつきが深いのか述べよ。


「現象を微分方程式で表す」とは、その現象のどのような側面を
数式として抽出することだろうか。
それに対し「微分方程式を解く」とは、その現象のどのような側面を
数式として抽出することだろうか。


高校の数学では定義や導出を重視せず
計算方法の訓練を重点的に行う。
このことに関してあなた自身の意見を述べよ。
長所・短所ともに述べること。


高校の物理ではなぜ空気抵抗を教えないのだろうか?






engineer_takafumi at 23:48│Comments(1) ★理系本の書評 |  ⇒ 数学

この記事へのコメント

1. Posted by あ   2017年09月27日 12:46
小中先生が名城大学理工学部情報工学科「応用解析」の講義で使っている自費出版教科書を書籍化したものです(現在はこちらが教科書とされています)
ざっくりいってしまえば一大学の一講義用の教科書を書籍化したのと同義です

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