2017年12月12日

電車をデザインする仕事

本日は水戸岡 鋭治氏の
電車をデザインする仕事
です。
電車をデザインする仕事: ななつ星、九州新幹線はこうして生まれた! (新潮文庫)

本書はななつ星や九州新幹線をデザインした
水戸岡さんによる一冊です。

水戸岡さんは電車をはじめとする、
公共デザインの仕事をされています。

公共のものですから、一部の人をターゲットとしたもの、
ましてやデザイナー個人の趣味ではいけません。

大勢の人間の望んでいることを翻訳し、
受け入れられるものを作らなければならないのです。

著者のデザインした電車は、
たしかに今までのものと大きく異なります。

でも、それは奇をてらったものではなく、
利用者が真に望んでいることを、
くみ出した結果なのです。

著者の公共デザインに対する哲学が学べ、
世界を広げてくれる一冊でした。

公共デザインという観点から見ると、
日本はヨーロッパに大きく遅れていますが、
水戸岡さんに続く方がたくさん出てきて、
状況を変えてくれると良いな、と思いました。


建築や都市計画など、公共デザインに関わる
仕事に就いている方にお勧めの一冊です。
自分の仕事の意義が再認識できるでしょう。





つまり、その場に合った立ち居振る舞いをしようとします。
心地良い緊張感のなか、
まるで舞台の上の役者であるかのように
みんながその場にふさわしい姿を演じられる―。
こうしたステージを皆さんにご用意するのが
私たちデザイナーの仕事なのです。


ヨーロッパでは政治によって文化や都市が
デザインされるといわれているのですが、
それに比べると日本のデザインは
非常に表面的で狭いものに限定されます。


素晴らしいデザインは素晴らしいビジネスを生み、
素晴らしいビジネスを生むことで
素晴らしい暮らしを生み出す


私がデザインした車両は私の「作品」ではありません。
作業に関わった人みんなの作品だということです。


「経済は文化の僕である」
という考え方は正しいと思っています。
これは豊かな生活をするために経済活動があり、
経済活動のために公共を犠牲にしてはいけない
ということです。


私たちが手掛けている公共デザインの答えというものは、
社会の意識レベルと個人の意識レベル、
そして環境の意識レベルによって決まっています。


私の手掛けた車両デザインというのは、
個人的な好みや趣味で表現しているわけではありません。
そこでは多くの人が望んでいることを翻訳し、
さらには通訳して色や形、素材や使い勝手に置き換えて
表現しなければならないのです。
つまり、公共デザインは自分好みでつくるアートではない
ということを肝に銘じなければいけません。


公共デザインにおいて、米仕事(経済性)と花仕事(文化性)
のバランスを保つようにしていくと、
利用者が好むものができあがっていきます。


人間は自分が生きている空間にある
道具や素材を目の前にすると、
そのモノに対する本気度を動物的な感覚を以って
知ることになります。


つまり、本気でつくられたものを汚したり、
壊したりすることができなくなるのです。
これは子どもだけではなく大人も同じです。


可能なかぎり難しい仕事を選んでいくことが
あなたの能力を向上させ、
誰もやったことがない仕事へとあなたを導き、
認められる確率が高くなります。


上手く話せなかったり、間違ってもいいじゃないか。
重要なのはライブで自分の心をさらけ出すこと。
それができなければお客様を喜ばせる仕事はできない


デザイナーというのは経験を積み重ねるほど
そのデザインがシンプルになっていく
ということがいえると思います。





engineer_takafumi at 22:49│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ クリエイティブ

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