2020年01月11日

日本の品種はすごい

本日は竹下 大学氏の
日本の品種はすごい
です。


本書は大学の園芸学部を卒業後、
キリンビールに入社し、
鑑賞用の花のブリーダーとして、
長年活動してきた著者による一冊です。

ブリーダーとは育種家とも呼ばれ、
色々な植物を掛け合わせて、
新しい品種を創り出す、
植物のプロフェッショナルです。

そんな著者が本書で語るのは、
ジャガイモ、ナシ、リンゴ、ダイズ、
カブ、ダイコン、ワサビといった、
日本人にとってなじみ深い食べ物の
品種の歴史です。


品種の物語は、
生産地の競争や農業、経済の歴史です。

品種という観点で、世の中の歴史を知る、
という意味で、知的好奇心を満たしてくれる
良い一冊だったと思います。


個人的には、
ナシが自家不和合性を持っている
という部分が特に印象的でした。

つまり、同じ品種間では授粉できない
ということなのですが、
私はそんな植物が存在することを
知らなかったので、驚きでした。


レストランを経営されていたり、
野菜の小売りをされている方にお勧めの一冊です。
商品知識を拡充して、お客様に「さすが」と
思わせられる知識を学べることでしょう。




マクドナルドは世界中で販売するフレンチフライ用に、
毎年150トンものジャガイモを購入している。


カラフルジャガイモの育種では、
いまや日本が世界をリードしているのである。


カキがもともと中国から伝わった果樹なのに対し、
日本のナシは栽培種の起源である野生種
ニホンヤマナシが国内に自生していることから、
日本固有の種だといえる。


ナシは基本的に、同じ品種の花粉が
めしべに受粉しても実をつけない
自家不和合性と呼ばれる性質を有する。
そこで生産者は、生産したい品種の他に、
人工授粉用の花粉を集めるための別の品種も、
園内に植えておくものなのだ。


「サンふじ」、「サンつがる」、「サン陸奥」
と呼ばれる商品がそうだ。
頭についている「サン」は、あくまでも
降りそそぐ陽の光を十分に浴びた
無袋栽培のリンゴという意味であって、
品種自体は「ふじ」、「つがる」、「陸奥」と
まったく同じである。


枝豆は豆ではない。
驚くことに、農林水産統計において枝豆は、
穀類の大豆とは切り離されて野菜に分類されるのである。


枝豆は収穫後に常温に置いたままにすると、
二十四時間で糖含量が半減する。
「枝豆は鍋を火にかけてから収穫に行け」というのは、
あながちオーバーな表現ではない。


中国、朝鮮半島、シベリア経由で
日本に入ってきたカブだが、
なぜか中国では根菜としての改良は進まず、
作物としての地位も高まらなかった。
一方で、葉を食べる作物としては目覚ましい進化を遂げた。
この作物こそハクサイである。


母親と父親がそれぞれ持つ望ましい形質を併せ持ち、
親よりも強く発揮する。
これこそがF1品種ならではの提供価値。


本わさびはワサビをさし、本わさび以外の原材料は
ワサビダイコンだと考えてかまわない。
逆に本わさびの表記がなければ、
ワサビは一切使われていないという意味だ。








engineer_takafumi at 20:32│Comments(0) ★理系本の書評 | ⇒ 生物・化学

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