2020年05月13日

本を売る技術

本日は矢部 潤子 氏の
本を売る技術
です。


本書は1980年に芳林堂書店に入社、
パルコ、リブロと書店に勤務、
2015年まで36年間本を売り続けたという
著者による一冊です。


書店員さんの仕事は
素人にはわかりにくいものだと感じます。

お客として行くと、本を並べるか
レジを打っている姿しか
みることはできませんから。

確かに本を積むのは書店員さんの
大事な仕事なのですが、
この本を読んで、ここまで考えて
本を並べているのだ、と驚きでした。

ほかの業界と比べて極端に多品種の
書籍業界ならではのノウハウは
とても面白かったです。

そして書店には他のお店にはない、
大事な仕事があります。

それは「返品」です。

本は委託販売の形態をとっているので、
返品が必要になるわけです。

その返品のノウハウや哲学にも
興味をひかれました。


個人的には、
プロなら「売り切れ」「品切れ」「置いてない」を
区別して正確に返事しろ
という部分が特に印象に残りました。


書籍業界に携わる方はもちろん、
小売り業に関わる方にはお勧めです。
書店は特殊な環境の小売りですので、
普段と違う刺激が得られると思います。




もし中巻を抜いて上下の巻が棚に差さっていると
お客様が上下巻の本だと間違えて
買っていかれてしまうかもしれないでしょう。


書店員の仕事ってすっかり変わっちゃいましたよね。
今は兼イベント屋さんだよね。
売場を作るより、何かを企画することが
仕事になったのかも。
その分、売場作りは
疎かになってしまっていると思います。


仕組みが頭に入っていないと、
それこそ入ってきた本をただ置いているだけの
機械になっちゃう。
なにもしなくてもある程度本が来るんだから、
それを並べることが仕事で、
並べちゃったら仕事が終わりって。
そういう目に見えるだけのことが
仕事ってことになっちゃうと困る。
その本をなぜそこに置くかを考えないと。


ストックにみっちり入れてた子がいたの。
棚にある商品と同じものじゃなく、
違う本がみっちり。
(中略)
毎日、新刊も入ってくるわけで、
こんなに何十冊ものナンバー2を
棚下にみっちりストックしておく意味なんかない。
要するにどの本を返すかジャッジが
できないんだと思いました。
判断するっていう仕事をサボっていると。


棚に40冊入るんだったら、
41番目に売れる本は不要なんだ。


ワゴンは、今度この消費を売るぞ! って
決め打ちするときにはいいかも知れないけど、
いったん使い出すと、
いつも何かを載せちゃいがちなのよね。
常設になっちゃう。
常設より目立たせたかったのに。


売れ数が一目でわかるよう
積む冊数に応じて互い違いにする割合を変える。


本が傾かないように
互い違いに積んだほうがいいとは思ってましたが、
まさかこんな法則を考えていたなんて……。


本屋っていうのは、
毎日来る人向けだと思ってるからね。
とすると、同じ場所にずっと同じ本はつまらないでしょ。


売場作りがきちんとできていたら
POPは正直書かなくたっていいんだから。


極端なこと言えば、仕掛けて売るって
今日入った子でもできると思います。
「何年も前から名著だと思っている」とか
「困ったときに力づけられた」とか、
熱いPOPを書いて大量に積めば、
そうかなって思われて、
場所さえ良ければちゃんと売れる。


少ない本を外すんじゃなくて、
売れてない本を外さないと。


せっかく100冊売れると思って100冊取ってるんだから
100冊全部を売場に出しなさい


文芸書などは売れる売れないという基準で
いいかもしれないけれど、専門書はまたちょっと違う。
その本が積んであることの安心感みたいなものとか。
そういう本は、短期的な売上で判断するのではない
目のかけかたをして、積み続けないとね。


季節は先取りしてやるべきだと思いますよ。
実用書売場としては。


エンド台の役割は、この平台の両奥には
書棚がずっと連なっていて、
ここにある本はその本の一部であって、
奥に行けばまだまだ面白そうな本があるんですって
思ってもらうことでもあるわけでしょ。


プロなら「売り切れ」「品切れ」「置いてない」を
区別して正確に返事しろ


すぐ返品してる本て、
置き場所が判断しにくい本だったりするんだよね。


だんだん出張していくにしても、
本籍地は決めなきゃいけない。
それはその人が何を生業にしてるかで
決めるしかないんじゃないかと。
同じ脳の本を書いている人でも医学畑の人なのか、
実はスピリチュアルの方から来ている人、
エッセイリスト、それぞれ棚の本籍地は違うよね。


矢部さんが面陳を嫌うのは、
やっぱり本が傷むのが嫌だというのがあるんですか。
そう、それだけ。傷まなければやります。


棚の本が売れないから棚の商品量を減らして
その分面陳しようみたいな感じもあるんじゃないかな。
今はとくに。
面陳だったら在庫一冊でもできるけど
平積みはそうもいかないものね。


面陳スタンドも90度にならないものは
使ってはいけません。


返品すると決めたら、中途半端に残さないということです。


ないものはないんだ、でも本屋はそこはら始まるんだ





engineer_takafumi at 13:55│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ ビジネスその他

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