2023年03月30日

国破れて著作権法あり 誰がWinnyと日本の未来を葬ったのか

本日は城所 岩生 氏の
国破れて著作権法あり 誰がWinnyと日本の未来を葬ったのか
です。


本書の著者は米国弁護士として
著作権法に精通した国際IT弁護士として
活躍しています。

そんな著者が本書で
金子勇氏のWinnyと著作権法について説きます。

著者が米国の事情に精通しているので、
米国と日本を比較しながら問題の本質が
浮彫りになってきます。

また、専門家の方ですので、
文献引用や発言内容が信頼できます。

様々な事例も多いので、
Winny問題だけではなく、
著作権の仕組みや狙いが
スムーズに理解することができました。


個人的には
米国のフェアユースの考え方を
知れたことが収穫でした。

米国というと、著作権保護が
非常に厳しいというイメージがありますが、
全体を利するものであれば、
著作物の利用が認められるのですね。

日本の方が社会主義だと思っていましたが、
この視点では米国の方が全体優先に
考えられていることが意外でした。


日本の産業競争力を高めよう
と考えている人にお勧めの一冊です。
日本が競争力を失ったのは
こんな背景もあったのです。




欧米はボロウィニー開発者を億万長者にしたのに対し、
日本は本物のウィニー開発者を逮捕・起訴し、
無罪を勝ち取るのに42年の短い生涯の7年半も奪ってしまった。


裁判所は、
1,ファイル共有ソフトの92%が著作権侵害に使われている
2,Winnyもファイル共有ソフトである
3,だからWinnyも著作権侵害を幇助している
という三段論法で著作権侵害を認めた。


その理屈だったら、
日本にインターネット引いてきた俺が幇助じゃん


インターネットというたった一つの技術革新に
うまく対応できないことが日本の停滞を招いているが、
その元凶が複製を前提とするインターネットで、
複製禁止の原則を貫き通そうとしている
著作権法にあるとの指摘である。


私は彼に無辜の技術者としての最後を
迎えさせてあげることができたという自分への慰めと、
金子から人生の重要な時間を刑事事件で
奪ってしまったことへの慚愧の念の入り混じった
複雑な思いで、揺れ動いている……今日も。


開発者の逮捕、
起訴が技術開発に与えた委縮効果は抜群だった。
当時、若手研究者に論文は海外で発表するように
アドバイスした指導教授もいた。


欧米の技術者は金儲けをしようとしたのに対し、
金子氏はソフトを開発しただけだった。
にもかかわらず刑事訴追され、一審では有罪とされた。


英BBCの記事は、有罪率が99%の日本では、
自供が「絶対的な証拠」になっていると指摘している。
さらに容疑者は可視化されていない小さな取調室で
自供するまで追い詰められるとも書いている。


金子氏は
「いやー、天下の警察・検察が署名しろって言ったから、まぁ、そういうものかなと思ったんですよ。ちょっと協力的すぎましたね。ハハハ」


音楽配信で、強いDRM(コピー防止技術)をかけた
日本の配信事業が伸び悩み、
DRMを弱めたiTunesなどの配信事業が伸びているのも、
強すぎる保護が創作者の便益をかえって失わせた


音楽教室に通う子どもの場合、
今流行っている曲が弾けないようでは
音楽に対する興味を失って、教室に通うのをやめないだけに
料率の決定にあたってはJRSRACの柔軟な対応が望まれる。


著作権は、お金に関係する「著作権(財産権)」と
名誉に関係する「著作権人格権」に大別される。
著作権を制限する一般条項の代表例は、
公正な利用であれば著作権者の許可なしの
利用を認めるフェアユースだが、
日本の著作権法にはこの規定はない。


その報告を聞いて慌てたのは著作権侵害目的で
「自白を取れた!」と思い込んでいた検察官である。
その日の夜に警察まで行って、
「裁判所での発言は嘘です、弁護士に入れ知恵されたのでそう言ったのです」
という調書を作文して、署名を追って金子に署名させたのである。


極東の諸国では、韓国、台湾は既にこれを認めている中で、
中国と北朝鮮と日本はそれを認めていません。
(「これ、それ」とは取り調べの弁護人立ち合い)


アメリカではどの事例にも使える権利制限の一般規定として
フェアユース規定を採用している。
利用目的が公正(フェア)であれば、
著作者の許可がなくても著作物を利用できる規定で、
フェアな利用であるかどうかは、「利用目的」
「利用される著作物の市場に与える影響(市場を奪わないか)」
などの4要素を総合的に見た上で、判断する。


フェアユースのような包括的権利制限規定があれば、
フェアユースが認められると判断すれば、
見切り発車でサービスを開始できる
(中略)
このため、米国の先行企業は
フェアユース判決が確定する約10年前には
サービスを開始している。


フェアユースを武器に先行する米国勢に
日本勢まで草刈り場にされてしまうサービスの実例は、
図表5・2のとおり枚挙に暇がなく、
最近でも論文剽窃検証サービスで
小保方事件発生時に日本の大学や研究機関は、
一斉に米社のサービスの利用に走った。


著作権を侵害する録画行為を行うのはユーザーだが、
ユニバーサルスタジオは違法録画を可能にする
機械を開発・販売したソニーを著作権侵害に
加担したと主張した。


赤字が続く理由の一つに、二次創作が著作権法のため
商業的に発展していないことがある。
フェアユースのない日本では、こうした二次創作は
著作権者の許諾を得ないと著作権侵害になる。


パロディも、日本ではまだ合法化されていない。
しかし、クールジャパン戦略を推進する日本にとって
パロディのもたらす経済効果は注目に値する。


フランスのマクロン大統領がオリンピックで
来日した時に会いたかったのは誰だと思います?
『鬼滅の刃』の吾峠呼世晴先生と『進撃の巨人』諫山創先生です。


今、アマゾンプライムでどれだけ映画が助かっているか。
DVDの販売も終わった作品がアマゾンプライムに出て、
それでもずっとロングテールで
収益が上がる状況になっているので、
日本の映画業界も軍門に下った感じです。


裁判所は自白が大好きですからね。
裁判所にとっては、ごちそうみたいで、
自白があったら取りあえず有罪にしちゃう。


警察は、ウィニー事件では、
逮捕したときは自分達の手柄みたいに宣伝して、
無罪になっても、金子さんの人生を奪ったこと、
日本のイノベーションを奪ったことの
責任を負わないんですよ。
ごめんなさいのひと言もない。





engineer_takafumi at 21:31│Comments(1) ★一般書の書評 | ⇒ その他の本

この記事へのコメント

1. Posted by 富山佳奈利   2023年03月31日 09:51
4 映画は観たのですが、こちらは未読でした。映画の方が(私には)何ともわかりにくい部分がってブックレットを買っていました。そちらと合わせて読んでみたいと思います。

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