2023年02月26日

YOUR TIME ユア・タイム

本日は鈴木祐 氏の
YOUR TIME ユア・タイム
です。


本書の著者は10万本の科学論文を読破し、
600人を超える海外の学者や専門医への
インタビューを重ねたという
サイエンスライターです。

そんな著者が本書で語るのは
「時間」不足の解決です。

ツールを使ったスケジューリングなど、
現代には時間を管理する方法が無数にあります。

それだけ、人々が関心を持っているわけですが、
本書では「時間不足」の問題は
そもそも人の時間の認知だと説きます。

この問題を解決しないかぎり、
どれだけ作業効率を上げても、
あらたなタスクがどんどん舞い込み、
時間に追われ続けることになるのです。

本書ではそんな状況から抜け出るための
テクニックが多数紹介されています。

それらの全てが研究実績のある方法で
多くの人に効果があることが保証されています。

この本には、
「あなたの人生を変える最後の時間術」
とのコピーがありますが、
本書に書かれている境地にたどり着ければ、
それ以降、時間術は必要なくなるでしょう。


個人的には、
「時間をうまく使いたい」といった欲望そのものが、
最後には幸福と生産性を下がる方法に働く、
という部分が特に印象的でした。

スローライフなどという言葉もありますが、
今の効率重視の社会からは少し距離を取ることが
幸せに生きるためには大事なようです。


「時間が足りない」と効率化をどんどん
進めている人にお勧めです。
より良く生きるためには何が必要か
その方向性が理解できるでしょう。





万人に効果がある時間術は、いまだひとつも見つかっていない


1,私たちが本当に気にすべきは、時間ではなく"時間感覚"である
2,時間は平等だが、"時間感覚"には個体差がある
3,個体差に合わせて"時間感覚"さえ書き換えれば、あなたは時間を有効に使えるようになる


真実1,時間術を駆使しても仕事のパフォーマンスはさほど上がらない
真実2,時間の効率を気にするほど作業の効率は下がってしまう
真実3,「時間をマネジメントする」という発想の根本に無理がある


どの時間術を使っても仕事の質と量はさほど改善されず、
プロジェクトの締め切りを守る確率も上がらずじまい。
効果が認められたのは、被験者が感じた仕事の満足度だけでした。


現代人が時間術への信頼を失わないのは、
これらのテクニックが私たちのメンタルを
改善してくれるからなのでしょう。


短い時間に効率よく複数のタスクを詰め込んだ結果、
大事なことに手をつけ忘れてしまったり、
無理な依頼を引き受けてしまったりといった
問題が起きるケースは珍しくありません。


効率を目指して時間を意識すればするほど、
私たちは良いアイデアを思いつきにくくなり、
問題解決の能力も下がる傾向があります。


残念ながら、人間の脳は拡散と収束を
同時に使えるようにはできておらず、
集中力を高めようと思ったら創造性はあきらめるしかありません。


この現象を「単純緊急性効果」と呼んでいます。
時間制限があるだけで「このタスクは重要に違いない」
と判断してしまう心理のことで、
「もっと大事なことがある」と頭ではわかっていても、
私たちの意識はつい緊急のタスクに
向かってしまうものなのです。


「25ドルで子供にプレゼントを買える」や
「25ドルで参考書を買える」といったように、
報酬を自分の人生に結びつけることができた人は、
単純緊急性効果の罠にはまらず、
理性的な判断ができる傾向にありました。


時間の経過を意識するほど、心に大きな焦りが発生。
そのせいで認知機能の低下が起き、
時の流れを実際よりも短く感じやすくなり、
客観的な残り時間の見積もりにも誤差が生じやすくなります。


人間は「時間の流れ」など実感できておらず、
世界の変化率を「時間」と呼んでいる


人間の脳は、過去と未来の変化率を高速で計算し続けており、
そのプロセスを、私たちは時間が流れる感覚として体験します。


私たちは、世界のあらゆる変化を
「予期と想起」の2軸で受け止め、
それを主観的な時間の流れとして解釈しています。


未完成のタスクをすべて書き出したことで、
脳が「このタスクはすでに処理されたから安心だ」
と思い込み、目の前の作業へリソースを解放し始めるのです。


ToDoリストがうまく機能するのは、
やり残したことを外部にすべて吐き出したことで脳が安心し、
持てる力をすべて発揮できるようになったからです。


1、予期にずれがある=以降に起きることへの確率の見積もりが甘い
2,想起にずれがある=以前に起きたことへの確率の見積もりが甘い


予期の現実感が濃い人ほど資産額が多いのは、
10年後の自分を「わたくしごと」として
とらえることが可能だからです。


テストの本番を迎えた自分や、
資料を作った達成感にひたる自分、
すっきりした頭で会議に臨む自分などの
予期イメージを他人ごととしか思えないなら、
「明日もがんばろう」などと思えるはずもないでしょう。


仕事の量は、与えられた時間を満たすように拡大する


長い締め切りを設定したせいで
将来の自分がより遠くに感じられ、
時間の見積もりにゆがみが生じた結果として
「パーキンソンの法則」が発動するのです。


この問題に立ち向かうためには、
「タイムボクシング」が最適です。
情報工学者のジェームズ・マーティンがソフトウェア開発
のために提唱した技法で、
あらかじめ特定のタスクに一定の時間を割り当て、
その枠内で作業を終わらせるシンプルな技法です。


シンプルながらも予期の薄さを正す効果が高いため、
計画を立てる直前などに、ゴールまでの時間を
「日単位」でイメージしてみるといいでしょう。


予期が薄すぎるのは問題ですが、
予期が濃すぎる場合もまたトラブルの種になります。
このタイプは脳内に浮かぶ予期へのこだわりが強く、
「将来の目標から外れる行為は無駄で無責任だ」
と考えやすい傾向があります。


予期が濃すぎる人は、少し長期目標から外れた
行動をしただけでも罪悪感がわき、
せっかくの体験をだいなしにします。
この問題を放っておくと、
最後には燃え尽き症候群を起こしたすえに、
本来の目標すら達成できないケースが少なくありません。


予期の現実感が濃すぎる人にはワーカーホリックが多く、
運動不足、不健康な食事、人間関係の問題が
起きやすいとも報告されています。
このタイプの人たちは、
「生産性を高めたい」や「将来のメリットを得たい」
という気持ちが強すぎるあまり、
長期的に人生を狂わせてしまうわけです。


実行すべきタスクが多いビジネスパーソンほど
最終的な成果が出せない傾向があり、
全体の時間の40%以上をどうでもいい作業に
つかう人もすくなくない


私たちの時間の見積もりは、つねに「想起」の影響を受ける


有能な者ほど自分の時間がどこに行くのかを
探すことから始める


私たちは自分のタスクだと想起を誤りやすいものの、
他人の作業においては急に客観的な視点を
取りもどす生き物のようです。


いつも過去の自分をネガティブに解釈していたら、
「どうせうまく進まない」や
「あの計画は時間がかかるだろう」
という気持ちが強くなり、
作業のモチベーションは下がるはずです。


他人のアドバイスに効果があるのは、
誰かに助言をすることで
「私は他者を助けている」といった感覚が脳に刷り込まれ、
これが自己効力感の改善につながるからです。


いま私は作業の難易度を甘くみているせいでやる気がないのか?
それとも作業への不安でやる気がでないのか?


みんなが「時間がない」と口をそろえる一方で、
実際は、私たちが持つ自由な時間は増えも減りもしていない点です。


短い時間で最高の成果を残そうとしたり、
無駄なタスクをすべて消そうとしたり、
作業スピードの最適化を試みたりと、
生産性にこだわる態度こそが問題の根源なのだ


現代では「やるかやらないかだ」に代表される
行動規範のプレッシャーが強く、
メンタルを病んでしまう若者が多く見られます。


高い目標や生産性を重んじる上司のもとで
働く者ほどストレスが多く、仕事のモチベーションは低く、
病欠の確率が高く、生産性が下がる傾向が認められました。


いかに生産性を上げようが、
そのぶんだけやるべき作業の量も増えていき
あなたの忙しさは一向に改善しない


時間を"うまく使う"といった考え方には根本的な問題があり、
「時間をうまく使いたい」や「仕事の効率を上げたい」
といった欲望そのものが、
最後にはあなたの幸福と生産性を下がる方法に働きます。


何もかもが速すぎて多すぎる世界では、
些細なことと重要なことの区別が難しくなる


技術が発達したおかげで作業の効率と生産性が上がったのはいいが、
そのせいで現代人から忍耐力が失われ、
私たちは少しの遅れにも耐えられない体になってしまった


認知の耐性とは、明確な答えをすぐ求めずに、
あいまいさを放置できる能力のことです。


他人のために活動したグループは、
自分のために活動したグループよりも、
"体感される時間"が2倍も長くなり、
「今日はいつもより時間がある」と
答える確率が大きく増えたのです。


「時間は未来へ一直線に進む」という
認識があなたにプレッシャーを与え、
つねに何かに急かされるような感覚の源になるのです。


サン人たちは、"必要なときに必要なものを得られる"
という絶対的な自信を持ち、
それゆえに時間の不足に悩むこともない


それ以前の世界においては、
"時間"は終わりと始まりがつながった円環構造をなし、
ゆえに当時の人々は「何かに追われる感覚」や
「なぜかいつも忙しい感覚」に苦しむこともありませんでした。
要するに、時間不足の根本治療を目指すには
「時の流れ」の認識にも取り組まなければならないわけです。


毎日いつも同じようなタスクをこなしている場合は、
いつまでの印象的な想起が脳内に溜まっていきません。
その結果、脳は「たいした時間は使っていないだろう」
と判断し、時間が速く過ぎたかのような感覚をあなたに与えます。


情報にあふれた現代では、私たちは
「どれだけ大量のデータにアクセスするか?」
にばかり意識を向けがちで、コンテンツの表面を
軽くなでただけに終わることが珍しくありません。


この問題をクリアするには、
手軽な情報処理をやめて戦略的にスピードを落とし、
退屈な時間にあえて身をさらすしかないのです。


クロックタイム
効率を追求する際はクロックタイムの方が有利です。
たとえば、簡単なメールを書くのを先延ばしにしているなら、
「10分で送信する」という締め切りを作ったほうが、
より早く終わらせることができます。


イベントタイム
効果を優先する際はイベントタイムのほうが有利です。
例えば親友の誕生日を祝うような状況では、
買い物を早く済ませるよりも、
相手が喜ぶプレゼントを探すのを重視したほうが
良い結果が出やすいでしょう。






engineer_takafumi at 18:35│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ 仕事術、思考法・ツール

コメントする

名前
 
  絵文字