2023年04月27日

Deep Skill ディープ・スキル

本日は石川 明 氏の
Deep Skill ディープ・スキル 
組織と人を巧みに動かす 深くてさりげない「21の技術」
です。


本書の著者は大学卒業後に、リクルートに入社します。
そこで営業職や企画職を経て、
リクルート社の企業風土の象徴である、
新規事業提案制度「New RING」の事務局長を務めます。

そして2000年にリクルート社の社員として、
創業情報サイト「オールアバウト」社の創業に携わり、
事業部長、編集長などを務めます。

その後、企業における社内起業を
サポートすることに特化したコンサルタントとして
独立して、活動されています。


そんな著者が本書で語るのは、
人と組織を巧みに動かす方法です。

こういうと社内政治のような
ネガティブなものを想像するかもしれません。

確かにそんな一面もありますが、
このスキルは組織の中で成果を上げるためには
必要不可欠です。

著者が専門としている、大企業内の新規事業は
人に動いてもらうのは難しい立場にあります。

目前の利益には関係しないので、
組織の力学や交渉を駆使して、
協力を得る必要があるのです。

「なんで動いてくれないのだ」
とイライラすることもあるでしょう。

しかし、組織には力があります。
その力を借りることで、一人では成し得ない、
成果を実現できるのです。


個人的には、
正論の扱い方の部分が印象的でした。

正論は危険とは感じてはいましたが、
それがうまく言語化されていて、
ハッとさせられました。

正論を訴えることは、
相手の反発を招くことが多いです。

だから、正論を訴えることより、
現実を直視することが大事なのですね。


企業で管理職の立場にある人には
お勧めの一冊です。
組織を動かすために必要な技術を
学ぶことができるでしょう。



相手は常に「誰が言うか」で判断します。
相手に「信頼できない人間」と思われている限り、
どんなに正しいことを言っても受け入れてはもらえないのです。


上役の「道徳観」に期待するのではなく、
「上役は"はしご"を外す存在である」という
身も蓋もない現実を認めたうえで、
A取締役が「逃げる」のが難しい状況を
つくり出す工夫をすべきだったのです。


一見、「上役を立てる」かのような言動が、
実は「上役を当事者として逃げられないようにする」
ことにつながるのです。


「正論」とは、「道理にかなった議論」という意味。
そういう議論ができない人(道理の通らない人)が、
社会の中で価値のある仕事ができるはずがありません。
しかし、この「正論」は自分を律するために
用いられるべきものであって、
これを他者に押し付けようとしても反発されるだけです。


無意識的に、相手を責め立てる"武器"として
「正論」を持ち出している人のほうが多い


「正論」は、正しいからこそ怖い。
「自分は正しい」と思うからこそ、
一方的に相手を責めるスタンスに立ちやすい。
それゆえに相手の反発を招き、状況をさらに悪化させる


「正論」は脇に置いて、まずは「現実」を
直視するところから始めたほうがいい。


「波風」を立てるべきときに、しっかりと立てておかないと
後々に禍根を残すことがある


「9回裏ツーアウト」の
絶対絶命のピンチなどと思い込んだまま、
追い詰められた精神状態で拙速に何かをすると、
必ず墓穴を掘ります。
精神状態が歪んでいると、思考も歪んでしまうからです。


「本当に仕事ができる人」の多くは、
「仕事はRPG」という考えを持っている


組織の中で希少価値のあるスキルを
「武器」にすることができれば、
「自分の価値」を劇的に高めることができる


「ポジショニング」をするうえで大切なのは、
「組織にとって重要であるのにもかかわらず、まだ誰もいない領域」
を見定めて、そこにいち早く飛び込んでトップランナーになること。


「専門性」を高めれば高めるほど、
ビジネスの本質から遠ざかるリスクも高まってしまう。


全社の文化に表面的に適応することは必要ですが、
私たちの内心で湧き上がる「感情」を
押し殺すようなことは絶対にしてはいけない


片手に「専門性」、片手に「感情」。


「壁打ち」こそが、最も強力な「根回し」なのです。


私が営業マンとして意識していた「話し方」とは何だったか?
一言でいえば、「しゃべりすぎない」ことでした。


これが組織のよいところで、手助けをした相手ではなく、
それを見ていた周りの人が、
あなたを助けてくれるようになるのです。


「相手を助けよう」「相手の役に立とう」という行為によって、
相手との関係性を損なうことすらありうることは、
十分に認識しておく必要があります。
「他者貢献」をするときには、慎重さが不可欠なのです。


相手が困っているときに、「私が助けてあげよう」などと、
「自分」を主語にして考えてはならない


マネージャーとして「求心力」を発揮するためには、
なにはさておき「機嫌よく」いることが大切


部下のトラブルは、
マネージャーにとって「腕の見せどころ」であり、
内心で「よし、自分の出番だ」くらいに
考えるべきことだと言えます。


「従来の枠組みに捉われず、自由な発想で考えてほしい」
という言葉とは裏腹に、指示を出した上役の中には、
本人も明確には自覚できていない、ぼんやりとした
「思い」や「考え」が存在する


対話を重ねることで、相手が無意識にイメージしていた
「思い」や「考え」を「言語化」してあげるのです。


誰も「最高権力者」である社長との
直接的なパイプを築こうなどと考えないからこそ、
それを試みる"奇特"な人間に「希少価値」が生まれ、
社長が特別な感情を抱く可能性が高まる


組織は、生々しい「感情」をもつ人間の集まりです。
その「感情」の機微を深く理解したうえで、
賢明な言動に徹する。
これは、「権力」のパワーを活かすうえで、
欠かすことのできない「ディープ・スキル」なのです。


合理的に考えれば考えるほど、新規事業への投資よりも、
既存事業への投資を優先すべきであり、
新規事業には投資すべきではないという結論に
いたりがちだからです。
いわゆる"賢い人"が多い企業ほど、
そいうなる傾向が強いように感じます。


合理的な議論だけで結論が出ないときには、
そもそもの出発点である「意思」に
立ち止まる必要があるのです。


我々は情報誌のナンバーワン企業で
ありたいわけではありませんよね。
創業以来、一貫してマッチング・ビジネスの
ナンバーワン企業を目指してきました。
その意思を実現するためには、
いま新たに誕生しようとしている、
インターネットというメディアにも果敢に挑戦していくのが、
我々リクルートの進むべき道ではないでしょうか


決して「効率性」を軽視すべきだと言いたいわけではありません。
問題なのは、「効率性」を追求すること自体を
仕事の目的にすることです。


対立関係にある両者がお互いに「譲歩」することで
交渉がまとまるケースはほとんどなく、
相手の利益・関心を引き出して、
「共通の利害」を探り当てることこそが
交渉を成功させる秘訣なのだそうです。


人間はそう簡単には変わらない。
特に、すでに50歳を超えたB部長が変わる可能性は
ほとんどないでしょう。
であれば、彼の変化を期待するよりも、
それを許容したほうがいい。
B部長がそういう人であることを許容して、
それを前提に職場が機能するように働きかけるのが
自分の役割なんだ、と。


結論を急げば、厳格な「撤退基準」を設定することによって、
事業の成功確率が上がるという効果が生み出されるのです。


本物の「使命感」の根っこには、
「怒り」や「哀しみ」などのネガティブな感情が
あると思うのです。






engineer_takafumi at 12:43│Comments(0) ★一般書の書評 | ⇒ 仕事術、思考法・ツール

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