⇒ 物理・科学哲学

2010年10月29日

相対性理論から100年でわかったこと

本日は佐藤勝彦氏の
相対性理論から100年でわかったこと
です。


当面PHPサイエンス・ワールドは全てチェックしようと思い、
本書を購入しました。

先端物理がわかる、がコンセプトのこの本ですが、
今まで何回も挫折してきたので、
あまり期待しないで読み始めました。

ところが、すごいことに、少し理解できてしまいました。

この本の良いところは理論そのものでなく、
理論が登場した背景やその意義について、
言葉で明確に説明してくれることです。

普通の入門書を読んでも(専門書は問題外)、
目の前の事象について理解しようとするのが精一杯で
とても理論と理論の関係までケアできません。

ところがこの本だと、常に現代物理の思考の流れにそって、
話している事柄の意義を明確にしてくれます。

逆に意義がわかるので、詳細が全くわかっていなくても、
わかった気にさせられるのかもしれません。


今まで、先端物理に挫折してきた人ほどおすすめです。
この本からだと、必ず何かしらは得られるでしょう。

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engineer_takafumi at 00:12|PermalinkComments(0)

2010年10月20日

エントロピーがわかる

本日はアリー・ベン−ナイム氏の
エントロピーがわかる
です。


本書はエントロピーをもっと理解したくて購入しました。


熱力学で登場する物理量であるエントロピーは、
我々がなじんでいる保存量ではなく、
増大する一方というとても奇妙な物理量です。

一般的には、統計力学を勉強すれば、
その本質が理解できると言われています。

ですが、統計力学を学んでも、数学的な定義はわかるものの
本質的な意味は未だにつかみきれないという人も
多いのではないかと思います。

エネルギーなどと違って、イメージが沸きにくいのですね。


本書では、さいころのゲームを使って、
その本質を的確に説明しています。

このイメージは、エントロピーを理解するのに、
非常に役立つと思います。


ただし、残念なのが、訳が非常にわかりにくいことです。

さいころゲームの説明が書かれた日本語を理解するのに、
かなりのエネルギーを必要とします。

少し英語力のある人でしたら、原書に当たったほうが
良いのではないかと思います。


大学で統計力学を学んでいる方の副読書としてお勧めです。
確実にエントロピーに対する理解が深まることでしょう。

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engineer_takafumi at 05:52|PermalinkComments(0)

2010年09月28日

量子力学はミステリー

本日は山田克哉氏の
量子力学はミステリー
です。


当面PHPサイエンス・ワールドは全てチェックしようと思い、
本書を購入しました。


文系にもわかる量子力学がコンセプトのこの本です。

確かに、量子力学の本としては、
非常に読みやすく、わかりやすく書かれていますが
それも「量子力学の本としては」の話。

実際、数学や古典物理の素養がなければ
読みこなすのはかなり難しいでしょう。

数式はほとんど出てきませんが、
概念を理解するのに数学の素養が必要なのです。


一方、この本の良いところは、
量子力学における「波」の概念が
しつこく説明されているところです。

高校の数学、物理がある程度に身についていれば、
この本を読むことにより、量子力学における
確率波の概念をつかむことができるでしょう。

「シュレディンガーの波動方程式」という言葉は
聞いたことがあるけれども、
波動の意味がよくわからない、という人には
絶対おすすめの一冊です。

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engineer_takafumi at 06:18|PermalinkComments(0)

2010年08月02日

ビックリするほど素粒子がわかる本

本日は江尻 宏泰氏の
ビックリするほど素粒子がわかる本
です。


本書は編集者の方から頂きました。
ソフトバンククリエイティブ様、ありがとうございました。

素粒子というのは、興味はあるのですがとにかく難しい。

原子の説明だと、電子、陽子、中性子くらいで終わりなのですが、
素粒子はクォーク、中間子、ニュートリノ、
また、その中で世代や反粒子などあって、ひじょうにややこしいです。

しかも、素粒子の本はかなり高度な量子力学の知識も必要としていて、
とても物理学科の学部卒レベルでは理解できるものではありません。

しかし、この本はやさしく素粒子を解説してくれていて、
少なくとも数学的な知識は全くなくても読むことができます。

私はこの本で初めて「強い力」と「弱い力」が何なのかを
理解することができました。


素粒子に興味があるけれども、
本を読んでも難しすぎて理解できななった、
という人には特におすすめです。

素粒子の理解への第一歩を踏み出すことができるでしょう。

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engineer_takafumi at 01:40|PermalinkComments(0)

2010年06月04日

物理を知れば世の中がわかる

本日は氏の
物理を知れば世の中がわかる
です。


当面PHPサイエンス・ワールドは全てチェックしようと思い、
本書を購入しました。


帯には「日本のサッカーはなぜ弱いのか?」
そして、第一章のタイトルは、
「日本のサッカー・ラグビーは世界に通用するか?」

興味をそそられる内容ですが、中身は……。
ウケを狙いすぎるのも良くないような気がします。

元々、読者はある程度限定されるタイトルなので、
もっと正攻法で入った方が良かったような気がします。

でも、2章以降は物理の初学者向けの本としてよくできていて、
読みやすく、色々な知識を得ることができました。

ベストセラーの99.9%は仮説で「飛行機が飛ぶ理由はわかっていない」
という衝撃的なことが書かれていましたが、
この本では、飛行機が飛ぶ理由を
物理的にきちんと説明してくれています。

それも、高校卒業程度の知識があれば十分理解できるでしょう。

物理に興味のある学生には、読んでもらいたい本です。
物理と科学技術の接点を学ぶことができるでしょう。


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engineer_takafumi at 00:42|PermalinkComments(0)

2010年02月06日

時間はなぜ取り戻せないのか

本日は橋元淳一郎氏の
時間はなぜ取り戻せないのか
です。


当面PHPサイエンス・ワールドは全てチェックしようと思い、
本書を購入しました。


時間の流れというものは、
生活の中でごく身近な現象なのですが、
実は物理的にみると結構難しいものなのですね。

光の速度に近くなると時間の流れが遅くなるとか、
ものの長さが短くなるとか、
我々の常識では理解できないような現象が起きます。

時間というものは、我々が考えるように
絶対的なものでなく、遅い世界もあれば早い世界もある、
という相対的なものなのです。


この本では、結局人間にとって時間とは何なのか。
科学的、時には哲学的に問題の核心に迫ります。

内容は決して簡単ではありませんが、
それでも相対論の本としては
相当やさしい本だと思います。

わかりやすいのは、数学的、物理的表現だけでなく、
人間の主観や生命についての
考察があるからでしょうか。

時間の流れに興味がある人、
哲学的な科学に興味がある人
などには、特におすすめの一冊です。

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engineer_takafumi at 19:39|PermalinkComments(0)

2010年01月13日

われ思うゆえに思考実験あり

本日は橋元淳一郎氏の
われ思うゆえに思考実験あり
です。


本書は思考実験というキーワードにひかれて
購入しました。

この本は科学と哲学の中間より少し科学に近い
という領域の本です。

例えば、「人工生命は意識を持てるか」とか
「時間はなぜ過去から未来に流れるのか」といった
問題に真正面から科学で立ち向かいます。

大学レベルの物理には抽象的なものも多いのですが、
この本では数式でごまかされることがないので、
本質的な「意味」を追求することができます。

特に、エントロピーにページが多く割かれており、
この本を読むとイメージがわくようになり、
理解が非常にふかまりました。

ちなみに、私はこの本で、長年わからなかった
「マックスウェルの小悪魔」
のパラドックスを解くことができました。


数式ばかりの本を読んでわからないといってる大学生。
たまには、こんな角度からアプローチしてみると
目からウロコが落ちる体験ができるかもしれませんよ。

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engineer_takafumi at 23:54|PermalinkComments(0)

2009年12月11日

破られた対称性

本日は佐藤文隆氏による
破られた対称性
です。


当面PHPサイエンス・ワールドは全てチェックしようと思い、
本書を購入しました。

この本は素粒子物理のお話です。
しかし、どうにも難解、本当に難しい。

私は一応理学部の物理学科を出ているのですが…。
正直3割も理解できませんでした。

この本を本として読むためには、
理学部の理論物理専攻の大学院程度の知識がないと
難しいのではないのでしょうか。


素粒子物理で難しいのは、
われわれの住む巨視的な世界の常識が
まったく通用しないことです。

例えば、「物体は波と粒子の両方の性質を持つ」とか、
「エネルギーが連続でなくて離散的である」とか、
日常の常識では考えられないような世界が広がります。

しかも、その振る舞いを記述する数学が
また非常に難関です。


ただし、自分に理解できないのがわかっていても、
つい手にとってしまうこの手の本です。

やっぱり、理論物理学の最先端としての憧れがあるのですね。

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engineer_takafumi at 23:21|PermalinkComments(0)

2009年10月25日

もしもあなたが猫だったら?

本日は竹内薫氏の
もしもあなたが猫だったら?
です。


本書は「思考実験」というキーワードにひかれて購入しました。


科学関連の本を多数書かれている竹内薫さんですが、
彼の専門は科学哲学で科学や技術そのものではありません。

その意味では、この本は著者の専門に近く
竹内氏の本来の姿を色濃く現したものなのでしょう。

「思考実験」とは、科学と哲学を結びつける概念です。
ある事項について、思考実験を通し、時には科学的に
時には哲学的にアプローチします。

この本は、どちらかというと、哲学性が強いみたいで、
途中プラトンの話が出てきたりもしますが、著者の筆力で
僕のような人間でも、興味深く読み通すことができました。


科学技術に携わるもの、ある種の哲学が必要ということは、
否定することはできないでしょう。

しかし、科学哲学というと難しそうで、
(私も本格的な本は読んだことはありませんが)
実際とっつきにくいものなのだと思います。

しかし、この本なら、すっと読めてしまいますし、
科学に哲学が必要な理由がなんとなくわかると思います。

そういう意味でとてもオススメの一冊です。



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engineer_takafumi at 22:53|PermalinkComments(0)

2009年10月17日

あなたにもわかる相対性理論

本日は茂木健一郎氏の
あなたにもわかる相対性理論
です。


本書はPHPにてサイエンスの新シリーズが創刊されて、
興味をもちましたので購入しました。


最初、脳の茂木さんが相対性理論?
と感じましたが、茂木さんはアインシュタインに
思い入れがあるらしく、中身はなかなか良かったです。

相対性理論やアインシュタインの本としては
ベーシックな内容になるかもしれませんが、
その中でもアインシュタインは何がすごいのか?
ということについて、茂木さんなりの
考察が加えられています。


この本だけで、アインシュタインや相対性理論を完全に
理解することができるわけではありませんが、
茂木さんから見たアインシュタインという視点が
面白い一冊でした。

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engineer_takafumi at 23:53|PermalinkComments(0)

2009年08月29日

高校数学でわかるボルツマンの原理

本日は竹内淳氏による
高校数学でわかるボルツマンの原理
です。


この本は、久しぶりに熱力学を復習したいな、
と思って購入しました。

熱力学は自由エネルギーのところからわかりにくくなってきましたが、
今回、この本を読んでフェルミエネルギーと化学ポテンシャルが
同じものと確認して、あらたな理解を得ました。

久しぶりに、基礎的なことを復習してみるものいいですね。
学生の時とはまた違ったひらめきがあります。


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engineer_takafumi at 08:47|PermalinkComments(0)

2008年11月01日

物理のABC

本日は福島肇氏による
物理のABC
です。


この本は物理の主要事項の復習をしようと思い購入しました。

この本は初版1985年で、
それから版を重ねて2007年に新装版が出されたという、
ブルーバックスのベストセラーです。

読んでみて、その理由がわかりました。

扱っているのは、理学系の教養程度の物理学なのですが、
(光学、宇宙、熱、電磁気、量子力学、特殊相対論など)
すごいのがほとんど数式を使っていないこと!

内容もイラストを用いてわかりやすく書いているので
意欲的であれば高校生程度の知識でも読めてしまうでしょう。

さすが、20年以上もの間読まれ続けてきただけのことはあります。

現代物理を学ぼうとする全ての人に
最初に読んでもらいたい本だと思います。


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engineer_takafumi at 23:10|PermalinkComments(0)

2008年10月24日

量子力学が語る世界像

今回は和田純夫氏による
量子力学が語る世界像
です。


本書は量子力学についての理解を深めたくて
購入してみました。

量子力学はシュレディンガー方程式を
基礎とする理論で、原子レベルのミクロな世界、
さらに電子や陽子、クォークの世界までもを
記述することができます。

しかし、その意味するものが
あまりに人間の常識から離れているが故に
量子力学をどう解釈(理解)すれば良いのかという
奇妙な問題が生じてしまったのです。

この本はその解釈問題の一つである
「多世界解釈」について解説されています。


この本を読んで大きな気づきがありました。

科学では、ある思想は普通○○理論と呼びますが、
この本で扱っているものは多世界解釈で
「解釈」であって、「理論」でないのですね。

これは、多世界解釈が「科学」ではないことを表しています。

というのも、科学というのは反証可能性があって
初めて科学と呼ばれるべきなのです。

多世界解釈が正しいかどうか、
これは本質的に人間には確かめることができません。

ですから、これは科学でないのです。

むしろ、神は存在するのか?
人間は何から生まれてきたのか?
などという、哲学と同じレベルの問題です。


この本を通し、哲学と融合する最先端科学の一派に
触れることができます。

それほど難しい数学や物理の知識は必要ないので、
大学教養程度の知識で十分読み通せるでしょう。
興味のある人はぜひ一読下さい。

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engineer_takafumi at 23:00|PermalinkComments(0)

2008年01月29日

99.9%は仮説

今日紹介する本は、竹内薫さんの
「99.9%は仮説」です。


現代社会は科学の社会と言われています。
そして、科学は万能という風潮があるのですが
意外にその基盤は弱いものかもしれません。

というのも、科学というものは
出発点が思い込みに近い「仮説」
で成り立っていることもあるからです。

例えばガリレオの時代には太陽が地球の周り
を回っているのが「科学的」であったわけで、
現在の科学の基盤にも、そんな「仮説」が
隠れているかもしれません。

本書では、色々な例を引きながら、
科学がいかに「仮説」に依存しているかを説き
それを通じて、仮説を疑ってみる観点を
持つことを勧めています。
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engineer_takafumi at 01:37|PermalinkComments(0)